おじいちゃん部|#完成された物語
最近、公民館の予約表に『おじいちゃん部』がよく登場する。
「何かしら、おじいちゃん部って。老人会の男性版?」
私は気になって部屋をそっと覗いてみることにした。
すると、当然というべきかおじいちゃんたちが居座っており、映画を見ながらガヤガヤとしていた。
「映画好きの集まりだったのね」
そう納得して立ち去ろうとすると聞き覚えのある声が耳に入る。夫の声だ。
そして視線を戻すと夫がタバコを咥えている。
「あんた!医者から止められてるでしょ!」
「お、お前……これは違うんだ」
*
その後に夫から聞いた話によると、どうやらこの会は映画の老人役に憧れる人達の集まりで、いわゆる俳優の真似事をしていたらしい。
タバコも臨場感を出すために口に咥えていただけとのこと。
*
「おじいちゃん部、名前の割に若々しいわねぇ」
「今度の休みは二人で久しぶりに映画を見に行くのもいいかしら」
そんなことを考えつつ、私はいつものように夕飯を作りながら夫の帰りを待つのだった。
あとがき
限界にせまる409字でした。
他の方のお題に取り組んでみて初めて分かりましたが、これ冒頭文が限定されるだけでとんでもなく難しいですね(笑)
しかし、この難しいパズルを解くような感覚が心地よくも感じます。
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