観光パンフレットから見る”おもてなし”【エッセイ】
「若狭瓜割名水公園」
唐突だが、これの読み方が初見で分かる方はどれくらい居るだろうか。
正解は「わかさうりわりめいすいこうえん」だそうだ。
「わかはざま」や「じゃっきょう」とも読めそうだし、案外「うりかつめい」と読むのが正しそうにも感じてしまうがそうではない。
日本の地名というのは漢字を使いこなす日本人であっても正しい読み方がわからないケースが多い。お酒を嗜む人にとっては日本酒についても同様に感じる方も多いかもしれない。
そこで表題の話になる。
観光パンフレットを見比べると、よみがなが「ひらがな」や「アルファベット」で振られているものと、そうでもないものがある。実際、私の手元にある福井県の ―福井県または福井市が発行したであろう― パンフレットを読んでいるが、よみがなが振られているかどうかはマチマチだ。
読み方が分からなかった場合、読み方を知りたいというのが人の性であろう。読み方が分かれば人にも気軽に訪ねやすいし、インターネットで情報を検索するのも気軽にできる(今は「よみがな」さえ分かれば検索できる時代なのだ)。
しかし、インターネットが発達した昨今においてもそれは面倒な作業だ。なにせ1文字ずつ漢字の読み方から考えて入力していく必要があるのだ。
その漢字の読み方が分かればそれでなんとかなるが、その漢字の読み方自体がわからなかった場合は手書きの文字入力を試すほかなくなる。例えば、「狭」や「瓜」はそれほど難しい漢字ではないとはいえ、さっと読めない人も意外と多いのではなかろうか。
結局、読み方が分からなければ観光案内所などで尋ねるか、あるいは「ここに行きたいんですけど…」とパンフレットを指差して尋ねるしかなくなる。QRコードなどが載っていればそれに救われることもあるだろうが、それですぐに読み方が分かるかは運しだいだ。
このように読み手、すなわち利用者からすれば一目瞭然の事実であっても、提供者が見落としてしまうことは多い。パンフレットであれば作成する側は地名を知っているケースが殆どだろうから、読み方が分からない人を想定しづらいのだ。
実際のところ利用者は多種多様であるため、すべてのケースを想定することは難しい。だからこそ、多くのサービス業ではアンケートなどで利用者の声をフィードバックとしてサービス改善に役立てているわけだ。
しかし、最初の段階で利用者の目線になって、どのようにしたら利用者がもっとも快適に利用できるかを考えることが大切であろうと思う。
それこそが”おもてなし”のスタートなのだと私は考える。
あとがき
小説家というものはエッセイを書くそうで。
正直なところ私は”エッセイ”なるものが果たしてどういう色・姿・形を取っているのかまるで把握していないのですが、せっかくだしエッセイっぽいものを書いてみようと思い気軽に筆を取ってみたわけでございます。
なお、これと似た話でスマートフォンのアプリにも同様の考え方が適用できると思います。
例えば観光案内アプリがあったとして、観光名所などの主要なテキストはコピーできるようにするか、せめてこのエッセイに書いたように「よみがな」を振って欲しいと私は考えます。
え、そういうあなたも記事中で”嗜む”みたいな難しい漢字を使ってるではないですかって?
これは一本取られましたね、はい。