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何度でも立ち返るべき組織開発のベース『氷山モデル』

組織開発や人材開発に携わっていると、必ずと言っていいほど出てくる考え方が「氷山モデル」です。私は組織開発をする上で、とても大切な考え方だなと思っています。

氷山モデルとは組織システムの全体像を捉える際のベースとなるフレームワーク

「氷山モデル」という言葉を初めて聞いたという方に向けて、簡単に解説すると、氷山モデルとは組織や場の全体を見立てるときに使われるフレームワークです。
コンテントとは、話している内容や取り組んでいる仕事など「事柄」のことを指します。

図のように氷山の上、海面に出ているところなので見えやすく、普段意識しているのもコンテントであることが多いです。

一方、プロセスとは、コンテントの背後にある個人の思いや経験、組織の風土や価値観、人と人との関係性などを指します。ここは氷山でいうと海面に隠れている部分なので見えにくく、意識して見ようとしなければ見逃してしまうことが多いところです。

例えば、ある会議の場面を想像してみましょう。
A部長が「今月の売上目標が達成できてないぞ!何をやっているんだ」と言ったとします。
コンテントに意識が向いていると、「誰のせいで売上が上がらないのか」という犯人探しや「どうすれば売上が上がるのか」といった施策の話になりがちです。
あるいは「こんなに頑張っているのにA部長はいつも文句しか言わない」「そもそもこんな売上目標なんて達成できるわけがない」とA部長の「言葉」に憤るかもしれません。

一方でプロセスにも意識を向けると、「A部長がここまで売上にこだわる背景には何があるのだろう?」とか「売上が上がらない人を責める雰囲気があるけれど、もしかしたらそれが影響しているかもしれない」と違う側面が見えてくるのです。
多くの場合、目に見えやすいコンテントに意識が向きがちですが、実はコンテント以上に影響力が大きく大切なのがプロセスなのです。

プロセスには、原因となった痛みや恐れ、相手の本当の願いが潜んでいる


私たちがなぜ、プロセスが大事だといっているのかというと、コンテントだけ見て施策を講じると、短期的にはうまくいっても必ずといっていいほどその副作用が起こるからです。

表面に出てくる課題や不満の背景を丁寧に紐解いていくと、その課題や不満の原因となった痛みや恐れがあり、さらにその奥には忘れかけている本人の願いや夢があります。

組織が本当に変容するためには「変える人と変えられる人」という分断から、現場が主体的になって皆で変容していくことが大切です。そのためには、「私は本当はこうしたい」という心からの願いが出てくることが必要なのです。

例えば先ほどの営業会議の例でも、売上が達成できないのは、営業は、それぞれが皆ライバルで個人戦である。チームの誰よりも成績を挙げてこそ評価されるという過去の経験があり、そのため誰も自分以外の人に相談したり、助けたりする文化がないからかもしれません。

その状態で、「売上目標を達成するためにチームで動け」と言ったところで、うまくはいきません。仮に「チーム目標を達成したら、インセンティブを出す」と言ったとしても、短期的には皆で頑張るかもしれませんが、気づけば、個人成績が優秀な人だけが頑張る状態に逆戻りするという状況になります。

もちろん、状況によっては応急処置として短期施策が有効な場合もたくさんあります。でも、組織が本当の意味で変容していくためには、表面に見える課題・不満の奥にある、痛みや恐れ、本当の願いに焦点を当てる必要があるのです。

言うは易く行うは難し

プロセスに目を向けるのが大切…と口で言うのは簡単ですが、実際にはとても難しいなと感じます。組織の中にいる方、課題の渦中にいる方は特に難しいと思います。

なぜなら自分自身もその組織の一員であり、自分自身もその雰囲気や風土、パターンを作っている一人だからです。

お客様のプロジェクトにコンサルタントとして入る際、私自身「プロセス」を見ること、客観的に俯瞰視点を持つことを意識していますが、プロジェクトが進行してお客様を知れば知るほど、「コンテント」に意識を持っていかれてしまう事があります。
それは私自身がお客様が持っている雰囲気、風土、パターンにハマってしまっているからだと思っています。

だからこそ、それに気づいたときには「プロセス」に意識を向けることを改めて自分に言い聞かせますし、他のコンサルタントからフィードバックをもらったりもします。「知っていること」と「できる」ことの間には大きな差があります。
「氷山モデルなんて今さら」と思っている方ほど、本当にプロセスに目と意識を向けられているか?立ち返ってみる必要があるのではと思います。


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