普段2DのUIデザインをやっている私が3D空間のデザインをやって得たアレコレ
昨今メタバースがバズワードになるなど、従来のWebやアプリケーションでは無かった「空間のある表現」が徐々に市民権を得てきています。
この領域は今までゲームや建築方面に利があり、色々な制約からなかなかそれ以外のサービスには波及してこなかったのですが、これからはもしかしたら関わる時が来る!
......かも、しれないので、私が以前関わった3Dモデルを利用したサービスでの学びをここに示しておきます。
なおこの記事は主戦場が3Dバリバリ使っていらっしゃる分野の方々からしたら当たり前だろ!ということも多いと思うので……
あくまでも今まで私のような非ゲーム系サービスのデザイナー向けの読み物だということを、最初にお断りしておきます。ぺこり。
この記事はGoodpatch Design Advent Calendar 2021の20日目の記事です。
3D表現を利用するメリット・デメリット
3D表現を利用するメリット
メリットはなんと言っても「空間」を手に入れられることでしょう。
実際にはモニターなどを通しての体験にはなりますが、奥行きをいかした表現が使えるようになるので、製品を360度回してじっくり見たり、複雑なダンスを色々な方向から眺め真似してみたり、お家の中にいながら遠い国の街の中を自由に歩き回ってみたり……といったことが3D空間であれば可能になります。このことによってユーザーに新たな体験を提供することができるようになります。
また、部分的に3Dグラフィックを取り入れた表現は近年のデザイントレンドでもあります。特に海外の新興サービスサイトなどを回っていると3Dスタイルを取り入れてるところは本当に多い!このトレンドはしばらく続きそうな気がしています。
3D表現を利用するデメリット
3Dにすると表現はリッチになりますが、その分単純にコスト(お金、時間)がかかります。
中でも、3Dをグラフィックとして取り入れるだけでなくちゃんと空間を持たせようとすると一番問題になるのは「操作」です。普段からPCでFPSなどを嗜んでいる人にとっては大した問題ではないと思いますが、コンソールとはいえそれなりにゲームをする方の私でさえ、スマートフォンやPCでの3D空間での操作は慣れないとちょっと難しいかな、と思ってしまいます(コントローラー欲しい!となってしまう……)。
スマートフォンゲームはいまだにポチポチ系が人気なことをみても、3D表現だからといってリッチな操作を大多数のユーザーが望んでいるか/理解できるかというと違うかもしれません。
表現は3Dでもあえて2D的な動きにすることで操作体系を簡単にしたり、UIに落とし込みやすくなったりすることはできそうですね。
そもそも3Dにした方がいいものって何?
最終的に表現したいものに「空間」が必要なもの
例えば『引越し先の部屋の内覧ができる』と言った「空間である」必要性があるものは3Dにする意味があると言えるでしょう。
ただし「従来ホールなどの建物で行われていたから空間が必要である」という考えではダメで、最終的にユーザーは何を見にやってきて、何を手に入れたいのかが3Dである必要があると思っています。手に入るのが「テキスト」や「3Dにならない映像」といった3D空間である必要性がないものの場合、それまでの体験をいくら凝ったものにしても、ただただ虚しさが残ってしまうものになる恐れがあります。
奥行きを利用した体験がメインのもの
例えば『自分と同じ体型のアバターを使って3D空間上でバーチャル試着できる』などであれば3Dにする意味があると言えるでしょう。上の項目との違いは、お金を払う対象が無形体験そのものであるところです。そういう意味で大抵の3D表現を使ったゲームはこちらに当てはまると思います。
3D空間のデザインに関わる上で気をつけておいたほうがいい、かもしれないポイント
3Dでは視点が重要
2Dだと実装されなくても絵に起こせば「ここは余白あきすぎだから、もうすこし詰めた方がいいな」などの調整を行えると思いますが、3Dで操作できない環境下ではこの感覚的な想像がしづらく、ある一定の方向から見るとちょうどよくても、他の方向から見ると不格好だったりします。
3Dのグラフィックを2Dで考え続けるのはどうしても限界があります。なので、なれないうちは2D時点でクオリティを高めるよりも3Dに起こしてみるタイミングをなるべく早くして、詳細なディテールは3Dに起こしてから考えるの方が良いかもしれません。
空間があるから感じる寂しさ
3D空間には当然ですが奥行きがあります。
奥行きが増える分、「あった方がいいものはない方がいい」理論で削っていくと、ものすごく寂しい空間になって全然間がもちません。
2Dのグラフィックでは過剰な装飾は入れない方がトレンドの表現だと思いますが、3Dで同じことをすると空間に対して対象物が少なすぎて虚無になってしまいます......
モノは気持ち多めで!ぐらいに思っておくと良いかも。
グラフィックのクオリティとデバイスのスペック
現代人の3Dクオリティへの目はなかなかに厳しいです。ぱっと見ローポリな時点で「へぼい」と思ってしまったり……
私が関わったプロジェクトでも、競合に比べてちょっとリッチなモデリングにしてもらったものと初対面したときにはテンションが上がったので、やはりグラフィックが良いというのはそれだけで体験向上に貢献するという実感があります。
しかしポリゴン数を増やすとロード時間が増えたり処理落ちするなどパフォーマンスに直結してくるという現実的な壁があります。ゲーム用コンソールであれば統一された規格でユーザーが使っているのでパフォーマンスの基準点を測りやすく、クオリティの目安を作りやすいですが、PC環境やスマートフォン、特にビジネス用途での利用を想定した場合、たいしたスペックを積んでいないことが予想されます。
「パフォーマンスが良好でサクサクできる」というのは、割とどんなサービスでも当てはまる最高の体験の一つだと思います。
(参考:サービスにおいて速さこそが神である|深津 貴之 (fladdict)
@fladdict)
2D表現では端末性能の向上もあり、グラフィック表現についてそこまで気にすることはないですが、3Dになるとまだこのパフォーマンスとクオリティのバランスを気にする必要があると感じます。
おわりに
作るものがゲームではないサービスに3D空間を適用する場合、個人的にはまだそれなりにハードルがあるように思えます。
もし今後あなたが担当するプロジェクトで「3Dで表現したい」というような相談が来た場合は、3Dありきで全てを考えずに3Dを手段の一つとして考えていくとうまくいくかもしれません。
しかし、いちデザイナーとしてはこの先この分野を学んでおいて損なことはないです!まずは簡単なモデリングができるように……なりたい!
私も勉強しなきゃ……
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