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44夜 賃上げ賃上げというけれど

 ここ数日,大企業を中心とした賃上げの満額回答がメディアを賑わせている.詳細は,新聞でもネットでもいろいろな情報がとびあっているのでそちらを見ていただければよいが,中には初任給40万越え回答やベースアップ3万5千円回答といった報道をみると,これまでの賃金据え置きというのは一体何だったのかと考えてしまう.筆者が就職した当時,初任給は大体16万円くらいであったことから考えると単純に「いいなあ」と思う事しきりなのだが,この感覚は年金受給世代や受給待機者にとっては共通のものではないだろうか.また,これらの数値の多くは大企業によるものであり,この国の労働者の大半を占める中小企業労働者や非正規労働者の給与の現状については,なかなか身近な話題にでないことをみると,やっぱり「溜息」をつく人が多いのも事実なのではないだろうか.
 総務省統計局(2024年2月20日公表)によれば,2023年9月1日現在,総人口1億2434万8千人のうち15歳から64歳人口は7392万1千人,65歳以上人口は3622万5千人で,すべて前年比で減少しているということ.今更人口減少に関する詳細をこの紙面で詳述することはないが,2019年以降,人口の急減は目を覆うばかりであると言わざるを得ない.今回,注目しておきたいのは15歳から64歳の人口の約半分にあたる65歳以上の年金受給者の年金額に関するところなのだ.
 年金受給額がこの5年でどのように推移しているかについて調べたところ,令和5年の老齢基礎年金月受給額が66,250円,老齢厚生年金同額が男性で167,388円,女性で109,165円で,令和元年以降の増減は,基礎年金で△1,242円(増額),厚生年金で男性が▼5,354円(減額),女性は△409円(増額)とのことである.この数値がなんとも寂しい状況であると考えるのは筆者だけではないだろう.基礎年金だけで生活する方々や賃上げの期待ができない労働者にとって,今のインフレは決して喜べる環境ではないと筆者はみる.  (https://news.yahoo.co.jp/articles/b2d784f58c99813dad1f73ac2be0e5ecc33275cf)

 今後年金受給者が確実に増える一方で,他方,生産年齢人口が減少する状況では,当面,生産性をあげるしか改善の手立てはないと考えるのが妥当なのだろうが,年金と給与(おもに大企業)の置かれた状況の違いをどう考えればよいのだろうか.
 給与アップによってインフレに対応していくという考え方は理解できるが,肝心の中小企業労働者や非正規労働者,年金受給者のおかれた状況は,あまりにも心もとないとしか言えない.大企業の給与アップが中小企業にも波及するという考え方は,一見するとよさげな考え方なのだが,そもそもその理屈の根拠はどこにあるのだろうか.他国に比べてGDPの伸びが低く,2位から3位,そして4位以降へと順位を下げていくこの国が,生産性をあげるという前提で,いろいろなことが決まっていくことに対して,だから中小企業の給与もアップするのだとか,年金額が上がるという期待は,どうも筆者には幻想のようにみえるのだが.
 すでに多くの人々が80歳まで働かないとなあと感じている今日の状況では,私たちは,日々の生活をどう乗り切るかという視点でしか,経済をみることができないステージにどんどん追いやられているように感じてしまう.
一体,将来に期待が持てる超高齢化人口減少労働力不足組織停滞社会とはどのようなものなのだろうか.なんだかなあ.
 


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