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30夜 特別な支援というけれど・・・

 文科省が2022年12月に発表した調査によると,小中普通学級に在籍する「特別な教育的支援を必要とする児童生徒」が8.8%になっているようだ.特別な教育的支援については,ネット上に様々な情報があるので詳細はそちらに譲ることとして,超簡単にいうならば現在の小中学校では学級に「学習面や行動面に何らかの問題を抱えており,なにかしらの支援が必要な児童生徒」が10人に1人くらいいるということなのである.35人学級で考えれば2~3人くらいがそれに該当するということになる.確か前回あった同種の調査では6%くらいだったという筆者のあいまいな記憶からすると,この種の児童生徒が量的に増加しているということになる.
 なぜ増加したのか.という率直な疑問はさておいて,支援を必要とする児童生徒に対してそれなりに支援ができている状況なのかといえば,これについても詳細はネット上の情報に譲るとして,結論としては「できていない」というべきだろう.だから,できていないということが先生の多忙化の一因として挙げられるわけだし,この問題が出てくる少し前から多くの自治体の教育委員会では,在職教員への「特別支援教育」に関する教員研修が非常に多く設定されるようになっているのが実情だろう.ただ,児童の発達障害を専門とする精神科医の数は圧倒的に少ないのが実情であり,そもそもそういった医師を養成するには十数年はかかるといわれている現状で,忙しい学校の先生が年に数時間の研修を受けたからといって,果たしてうまく対処できるようになるかどうかは,本人の能力を差し引いても非常に疑わしい.この問題は,学校だけの問題ではなく行政や医療も含めた連携対応が必要なのだ.であるのに連携が進んでいないことが問題なのだ.と,以前の筆者は考えていた.読者諸兄のなかには同様に考えておられる方もいらっしゃるだろう.
 しかし,これはもはや「教育問題」ではなく「社会問題」としてとらえるべきだろう.例えば,10人に1人の特別な支援を必要とする小1の児童が20年もすれば,生産年齢人口に組み込まれることになる.もちろん年齢が上がれば支援を必要としなくなる障害?(高等学校では2%くらいという結果)もあるだろうが,人口減少が明らかな社会問題となっている現在では,この問題による生産年齢人口への影響をしっかりと把握して,社会全体で対処する枠組みを作らないと,なんとも暗い未来のような気がしてならない.
 じっとして椅子に座っていられない児童や日常的に注意散漫な児童,文字認知の問題を持つ児童,人との関係性に問題を持つ児童など,障害は様々で学齢の低い児童に対応する先生程大変な状況だろう(だから,保育士や幼稚園教諭なども大変なのだ.).こういった人たちが大人になってこの社会を支える一員となるためには,この問題を「社会問題」と位置付けて長期的な視座で策をつくらないと,それこそ経済的な損失は計り知れないだろう.他国の状況改善に支援を施すことはもちろん大拙な事であるし,国際社会の一員として果たすべき使命のひとつだろうが,同時に国内にある持続可能を阻むこの問題にも相当な覚悟で取り組まないと未来は暗い.

 
 


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