膵臓がん、切除可能境界例に対する術前(ネオアジュバント)治療 ー 化学放射線療法 vs. 化学療法 ー
Katz MHG et al. JAMA Oncol. 2022;8:1263-1270. PMID: 35834226
<背景と目的>
・重要性:ガイドラインでは、膵臓がん(PDAC, pancreatic ductal carcinoma)の切除可能境界例(borderline resectable)では術前(ネオアジュバント)治療を行うことが推奨されているが、適切な治療法は不明。
・目的:切除可能膵がん患者に対するmFOLFIRINOXレジメンによる化学療法(± 寡分割照射)と従来の成績(ヒストリカルデータ)を比較して、標準治療法を確立すること。
<対象と方法>
・多施設共同第2相ランダム化試験(A021501)(2017年2月~2019年1月)
・126例を組み入れ、これらのうち70例(56%)を化学療法群(54例はランダム化され、中間解析の後は16例を登録)、56例(44%)を化学療法→放射線治療(化学放射線療法群)に割り付けた。
・治療介入:
化学療法群:mFOLFIRINOX(オキサリプラチン、イリノテカン、ロイコボリン、5-FU)8サイクル
化学放射線療法群:mFOLFIRINOX 7サイクル後に体幹部定位放射線治療(SBRT)(33-40 Gy/5回)または 画像誘導下寡分割照射(25 Gy/5回)を施行した。
・病勢進行のない患者に対しては手術(pancreatectomy)を行い、術後にFOLFOX6(オキサリプラチン、ロイコボリン、5-FU)による化学療法を4サイクル施行。
・主要評価項目:18ヶ月全生存率(OS);従来の成績(ヒストリカルデータ)の50%と比較を行った。
・最初の30例の登録が行われた時点で中間解析を行い、R0切除率が11人以下の場合に症例登録を早期終了とした。
<結果>
・126例の患者のうち62例(49%)が女性で、年齢の中央値は64歳であった。
・最初の評価可能な30例のうち、化学療法群の17例(57%)、化学放射線療法群 10例(33%)でR0切除が行われ、化学放射線療法群への登録は中止され、その後は化学療法群のみに患者登録が行われた。
・18ヶ月全生存率:化学療法群 66.7%(95% CI, 56.1-79.4%)、化学放射線療法群 47.3%(95% CI, 35.8-62.5%)。
・全生存期間の中央値:化学療法群 29.8ヶ月(95% CI 21.1-36.6ヶ月)、化学放射線療法群 17.1ヶ月(95% CI, 12.8-24.4ヶ月)。
<結論>
・切除可能境界膵がんを対象とした今回のランダム化試験では、術前治療としてmFOLFIRINOXによる化学療法+寡分割照射による放射線治療(化学放射線療法)と比較して、化学療法単独後の全生存が良好であった。