センチネルリンパ節生検においてリンパ節転移陽性の乳がん ー 腋窩照射(ART) vs. 腋窩リンパ節郭清(ALND)ー
Bartels SA et al. J Clin Oncol. 2022. PMID: 36383926
<背景と目的>
・EORTC 10981-22023 AMAROS試験では、cT1-2、リンパ節腫大のない(node-negative) 乳がん患者で、センチネルリンパ節生検(SLN)にてリンパ節転移が確認された患者に対する腋窩リンパ節郭清(ALND)と腋窩照射(ART)を比較した。
・5年時点の評価では、腋窩リンパ節郭清(ALND)および腋窩照射(ART)の治療成績は良好で腋窩リンパ節の制御は同様のものであったが、合併症の頻度は腋窩照射(ART)で有意に少なかった。
・今回は10年時点での腋窩リンパ節再発率(ARR)、全生存(OS)、無病生存(DFS)および生活の質(QOL)の成績を報告する。
<対象と方法>
・多施設共同第3相ランダム化試験
・4,806例の乳がん患者に対してセンチネルリンパ節生検を行い、リンパ節転移陽性の1,425例を腋窩リンパ節郭清群(ALND)と腋窩照射(ART)群にランダム化を行った。
<結論>
・Intention-to-treat解析において、10年累積腋窩リンパ節再発(ARR)は、腋窩リンパ節郭清群(ALND) 0.93%(95% CI 0.18-1.68)、腋窩照射群(ART)1.82%(95% CI 0.74-2.94)(HR 1.71, 95% CI 0.67-4.39)。
・両群間に全生存に有意差を認めなかった(HR 1.17, 95% CI 0.89-1.52)。
・無病生存にも有意差を認めなかった(HR 1.19, 95% CI 0.97-1.46)。
・腋窩照射群(ART)と比較して腋窩リンパ節郭清群(ALND)群でリンパ浮腫の発生率が高かった(24.5% vs. 11.9%, p<0.001)。
・治療後5年間を通して生活の質(quality-of-life scales)に差異を認めなかった。
・10年累積二次がん発生率は、腋窩照射群(ART) 12.1%(95% CI 9.6-14.9)、腋窩リンパ節郭清群(ALND)8.3%(95% CI 6.3-10.7)。
<結論>
・今回の10年成績の解析結果でも腋窩リンパ節からの再発率は腋窩照射群(ART)および腋窩リンパ節郭清群(ALND)いずれも低く、両群間に全生存や無増悪生存、局所領域制御成績に差異を認めなかった。
・上肢の合併症のリスクが低いことから、センチネルリンパ節生検でリンパ節転移が認められたcT1-2乳がん患者では腋窩照射(ART)の方が好ましい。
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