ネオアジュバント(術前)化学療法を受けた乳がんに対する乳房温存療法 vs. 乳房切除術

Gwark S et al. Ann Surg Oncol. 2023. PMID: 36577865
・ネオアジュバント(術前)化学療法が施行された乳がんに対する乳房温存療法と乳房切除術を比較
・後ろ向き研究(韓国)
・結論:ネオアジュバント(術前)化学療法が行われた乳がんで、乳房温存手術と乳房切除術のいずれも選択肢となる場合には、乳房温存療法(BCS+RT)が好ましい治療法である様子。

<背景と目的>
・早期乳がん患者において、乳房切除術と比較して乳房温存手術(BCS)と放射線治療の併用(BCS+RT)が行われた患者で生存成績が良好であったと報告されている。
・しかしながら、ネオアジュバント(術前)化学療法(NCT)が行われた乳がん患者において、この優位性が維持されるかどうかに関しては依然として不明。
・ネオアジュバント(術前)化学療法が行われた乳がん患者を対象として、乳房温存療法(BCS+RT)と乳房切除術(MST)後の生存成績を比較した。

<対象と方法>
・手術(乳房温存手術 または 乳房切除術)の前にネオアジュバント(術前)化学療法が行われた1,641例の患者を評価した。
・傾向スコアマッチングを行い、手術法以外の要因による潜在的なバイアスを最小化し、5年無病生存(DFS)、遠隔無再発生存(DMFS)、全生存(OS)を比較した。

<結果>
・1,641例の患者のうち、839例(51.1%)に対して乳房温存療法(BCS+RT)、802例(48.9%)に対し乳房切除術が行われていた。
・乳房温存療法(BCS+RT)が行われた患者と比較して、乳房切除術(MST)が行われた患者で大きな腫瘍の患者が多く、リンパ節転移が陽性であった。
・調整を行わず比較した場合、5年無病生存率(DFS)87% vs. 73%、遠隔無再発生存率(DMFS)90% vs. 77%、全生存率(OS)92% vs. 81%で、いずれも乳房温存療法(BCS+RT)で良好であった(p<0.05)。
・傾向スコアマッチング後の比較(378例)においても、5年無病生存率(DFS)88% vs. 69%、遠隔無再発生存率(DMFS)90% vs. 76%、全生存率(OS)89% vs. 76%で、いずれも乳房温存療法群(BCS+RT)で良好であった(p<0.05)。
・傾向スコアマッチング前およびマッチング後の多変量解析において、乳房切除術(MST)と比較して、乳房温存療法(BCS+RT)は良好な無病生存(DFS)、遠隔無再発生存(DMFS)および全生存(OS)と関連していた。

<結論>
・ネオアジュバント(術前)化学療法が行われた乳がん患者において、乳房切除術(MST)と比較して、乳房温存療法(BCS+RT)による無病生存(DFS)や全生存(OS)の悪化をまねかない。
・腫瘍の生物学的特徴や治療に対する奏効が予後の指標となる。
・今回の研究結果から、乳房温存手術と乳房切除術の両方が適応できる場合には、大半の患者では乳房温存療法(BCS+RT)が望ましい可能性が示された。

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