局所進行食道扁平上皮がんに対するネオアジュバント治療 ー 化学放射線療法 vs. 化学療法 ー
Tang H et al. Ann Oncol. 2022. PMID: 36400384
<背景>
・局所進行食道がんにおいてはネオアジュバント(術前)治療が推奨されている。
・しかしながら適切なネオアジュバント治療法に関しては不明。
・局所進行食道扁平上皮がん(ESCC, esophageal squamous cell carcinoma)に対する手術(MIE, minimally invasive esophagectomy)前のネオアジュンと治療としての化学放射線療法(nCRT, neoadjuvant chemoradiotherapy)と化学療法(nCT, neoadjuvant chemotherapy)の有効性を比較した。
<対象と方法>
・適格基準:食道扁平上皮がん(cT3-4aN0-1M0)
・(1:1)の割合で化学放射線療法群(nCRT)と化学療法群(nCT)群にランダム化を行った。
・化学療法のレジメンはいずれの群でもシスプラチン+パクリタキセル。
・化学放射線療法群(nCRT)での放射線治療の線量分割は40Gy/20回。
・化学放射線療法群ではシスプラチン+パクリタキセルとを放射線治療に同時併用した。
・ネオアジュバント治療後に手術(MIE)を施行した。
・主要評価項目:3年全生存率
<結果>
・合計で264例を対象としてintention-to-treat解析を行った。
・2021年11月30日までに121例が死亡した。
・経過観察期間の中央値は43.9ヶ月(IQR 36.6-49.3ヶ月)
・化学放射線療法群(nCRT)と化学療法群(nCRT)の比較において、全生存成績は同等の結果であった(HR 0.82, 95% CI 0.58-1.18, p=0.28)。
・3年全生存率は、化学放射線療法群(nCRT) 64.1%(95% CI 56.4-72.9%)、化学療法群(nCT)54.9%(95% CI 47-64.2%)
・全生存期間の中央値は、化学放射線療法群(nCRT)で未到達、化学療法群(nCT)で43.2ヶ月。
・無増悪生存も両群間に明らかな差を認めなかった(HR 1.07, 95% CI 0.70-1.60, p=0.75)。
・無増悪生存期間の中央値は、化学放射線療法群(nCRT) 46.5ヶ月、化学療法群(nCT)34.1ヶ月。
・3年無増悪生存率は、化学放射線療法群(nCRT)54.3%(95% CI 46.3-63.6)、化学療法群(nCT)49.8%(95% CI 41.9-59.2)。
・病理学的完全奏効率(pCR, pathological complete response)は化学放射線療法群(nCRT)で良好であった(27.7% vs. 2.9%, p<0.001)。
・化学放射線療法群(nCRT)で再発リスクが低い傾向が認められた(p=0.063)が、再発形式は同様のものであった(p=0.802)。
<結論>
・食道扁平上皮がん(cT3-4aN0-1M0)に対する手術(MIE)施行例において、ネオアジュバント化学療法(nCT)と比較して、ネオアジュバント化学放射線療法(nCRT)による有意な全生存の改善効果は認められなかった。