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とある二人のお話。

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2020年7月の記事一覧

とある二人。その2

玄関を開ける。

「おつかれー。」と言いながら入ろうとする彼女を一旦制し、彼は自分の靴を片付ける。

中に入り扉に背を預けて彼女は踵に手を掛け、一段上がって自分の靴を揃える。

『大人と小人みたいだわ…。』

大きな靴にある種の感動を覚えながら、

「ねえ、靴のサイズって幾つ?」

投げかけられた素朴な疑問に彼はサラリと答える。

「でっか!」

見つけるの大変そうだなぁ、などと思いながら、部屋の

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彼女のその1。

「なんであんなこと聞いちゃったんだろ?」

平日、午前中のオフィス街を酒の残り香と共に越え、自宅のベッドで突っ伏して彼女は悶絶する。深酒の次の日にこういうことは確かによくある。

あー、恥ずかしい恥ずかしい、と繰り返しながら、醒めてきた意識と同時に生まれる敗北感と罪悪感、尤も勝ち負けなどない筈なのだが?と思い直したりしてみる。

敗北感は自分でなんなりと出来る。”そういう事”を期待しているように思

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