いつかのバレンタイン
今日、スーパーに立ち寄ったら、バレンタインのスイーツがたくさん売られていた。
それを見て、
「あぁ。今日はバレンタインか」
と気づく。
バレンタインといえば、小学生の頃、同じマンションに住んでいた幼なじみの男の子に、毎年手作りチョコレートをあげていた。
手作りチョコといっても、板チョコを溶かして、カップに入れて固めて、カラフルな細長いチョコを散らすというものである。
形がいびつで、なんだかゴツゴツした岩みたいなチョコが毎年出来上がっていた。
今思うと、溶かす前の板チョコの方がよっぽど綺麗である。
だけどその頃はそんなこと思いもせず、バレンタインが近づくと母と一緒にスーパーに行き、材料を揃えていた。まっすぐ、しんけんに、材料を吟味していた。
バレンタイン前日にそれを作って冷蔵庫で冷やしておき、当日の夕方に、その男の子の家に届けに行っていた。
その子の部屋の前に行って、インターホンを押す。
一緒に遊ぶときは何も感じずに押すけれど、チョコを渡すときはなぜだか少し心拍数があがった。
ガチャ。
「はい。」
「チョコ。もってきたよ。」
お世辞にも美味しそうとは思えないチョコを渡すと、
その子は必ず、
「ありがと」
と言って、もらってくれた。
小学生なら、そんなチョコをもらったら、誰かに言って笑いものにしてもよさそうなものだが、その子はそういうことはしなかった。
一ヶ月後のホワイトデーには、必ず少し豪華なお菓子(テディーベアの形をしたホワイトチョコとか、可愛い瓶に入ったウルトラマンのチョコとか)をくれていた。私は毎年そのお返しが楽しみだった。
中学に入ると、友チョコが流行り、女の子同士であげあうようになったので、その子にはあげなくなった。
高校からは学校も別々で、ちょっとずつ疎遠になり、
今では連絡を取ることもなくなったけれど、
なぜだか今日その子のことを思い出した。
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