夢見パンフレット


 夢で行きたい場所があったので、夢見パンフレットを買うことにした。
 行きたい場所にチェックをつけて、電話で予約をする。
「かしこまりました。それでは本日の23時に、エジプトのピラミッドを予約させて頂きます」
 その日の夜はワクワクして、仕事も家事もなかなか手につかなかった。
 気持ちを落ち着かせるためにも、もはや癖となった煙草を一本ふかしてから、いつもより早くベッドに入る。
 はやる気持ち抑えてなんとか眠りにつくと、気が付いた時には砂漠にいた。目の前にはピラミッドが見える。
 初めて利用したが、まさかここまで再現度が高いとは。
 砂の感触もピラミッドの迫力も、体をむしばむ暑さまで再現されていた。
 俺は興奮して、あちこちを駆け回った。
 しかししばらくすると段々息苦しくなってきて、ついにはドサリとその場に倒れこんでしまった。
 こんなにも暑い中、走り回っていたせいだろうか。
 どうにか水がほしいと辺りを見渡すも、オアシスひとつ見つからない。
 早く夢が覚めてくれと祈るも、一向に覚める気配がなかった。
 起きたら旅行会社に文句を言いつけてやる!
 そう決意して、仕方なく目が覚めるのを待つ。
 しかしどれだけ待っても夢が覚めることはない。息苦しさは増し、なぜか焦げ臭い匂いまでしてきた。
 ごぉごぉと、何かが燃える音がする。こんな音が砂漠で発生するのだろうか?
 次第に呼吸が苦しくなって、俺はその場でじたばたと暴れまわった。
 それでも目が覚める気配はない。
 向こうの方では、ぼんやりと燃え盛る炎が見える。
 これが噂に聞く蜃気楼だろうか。なんにせよ、早く目覚めてほしいところだ。

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