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32年フランス料理を作ってきた私が、スープを作り続ける理由(3)

その場からすぐに、循環器病センターに行く。そこでは、前例がない場所に瘤があっため、すぐに手術ができなかった。

不安のまま、動くことを制限された時間だけが過ぎる。

周りのベットには、これから手術する人やすでに手術を終えた人がそれぞれのベットに横たわっていた。

入院はしたものの手術日が決まらない。

これからどうなるのか・・・。

時間だけが過ぎていく。

この手術後のことが、私の料理観を変えるきっかけとなる。

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脳裏に残る一瞬の記憶。

右の耳から2人の話し声が聞こえる。

手術後、耳が先に起きた。脳が起きたという表現の方がいいのかもしれない。身体は自分のものでないように動かない。

ここは、何処なんだろう・・・。

目も開かない。

『先生、この患者さんの尿道に管入れてもいいですか?』

記憶は確かではないが、あまり行ったことがないので・・。と言った気がする。

咄嗟に、私は、試されることが嫌だったので、『嫌だ!』と言いたかった。

しかし、身体は全く動かない。声も出ない。

これって。自分は生きているのか・・・。死んでいるのか・・・。

TVで観たことがある。

亡くなる人の耳元で呼んであげて下さいと言っていたことを。

そして、管を挿入されるような気がした不快感が身体に走る。

尿が溜まり、漏れそうな状況。

今すぐにでもトイレに行かないと漏らしてしまうくらい。

でも身体も動かない。声も出ない。

・・・・・・・。

それからの記憶がない。

あの時の記憶と恐怖は二度と忘れないだろう。

自分が生きているのか、死んでいるのかを考えた瞬間だった。

そして。

目が覚めた時は、チューブが首の後ろなどに入ったままの状態だった。

生きていたんだ。

2つ目の命を頂いたんだとその時思った。

その後、辛い闘病生活が、次々と起こるとは、予想していなかった。

生きているが、ここからが本当の戦いとなる。(つづく)

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Le tonton
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