幻滅の反転
ジャニー喜多川の、ジャニーズ事務所所属タレントに対する性加害というスキャンダルは、死後四年経ってようやく注目を集め始めた。ようやく、と書いたのは、これは何も突然降って湧いた話ではなく、「ちょっと芸能裏話に興味があるヤツ」なら多くが知っているくらいには有名なネタだったからである。少なくとも、一昨年大々的に報じられた(再発見された)小山田圭吾イジメ問題よりも数段有名ではあったと思われる。
さて、このスキャンダルを通じて、ジャニー喜多川のみならずジャニーズそのものに対して幻滅したと言う人は多い。もちろんそれは否定しないが、ただ注意すべきは、彼ら彼女らの「幻滅」の背後には、ジャニーズに対して新たな神秘を見出した者の存在があるということである。そうでなければ、竹中労の暴露以来50年以上続いてきたこのスキャンダルの拡散の中で、ジャニーズがその強固なファン層を維持し続けてきたことに無理が生じる。ここに、光に影を見出せば幻滅となり、影に光を見出せば神秘の発見となるという対照がある。(主宰、書く)
※東大モラル研究会機関紙「怒涛」第3号(2023/8/15発行)収録