貯金をして父に叱られた話。

金は天下の回り物言うてな。おまえが今持ってるその金は、おまえのもんちゃうねんぞ。金は使って初めて値打ちがある。使てへん金には何の値打ちもあらへん。欲しいもんがあって貯金すんのはかまへん。けどな、目的もない貯金なんかすなよ。


当時まだ10才かそこらだった私を、父はこう言って叱りました。お小遣いを貯めて増やすのが楽しくて仕方がなかった頃です。


20年ほど前の当時より今の方が、うなづいてくれる人も多いのではないでしょうか。それでもまだ、何を言っているのかよくわからないという方も多いでしょう。


まず、「金は天下の回り物」とはどういう意味でしょうか?


金は天下の回り物とは、金は一箇所にとどまるものではなく、常に人から人へ回っているものだから、今はお金が無い人の所にもいつかは回ってくるという励まし。


一般的にはそのように使うみたいです。でも、父はそういう意味で言ったのではないように思います。もっといい説明があるように思って検索していると、こんなツイートを見つけました。



そう、これこれこれこれ!父が言いたかったのは、こういうことだと思うんです。


父に叱られて、幼いながら次のようなことを考えたのだと思います。


私がお小遣いでファンシーショップでお買い物をすると、ファンシーショップが潤う。潤った分、ファンシーショップの店員さんが服を買って、服屋さんが潤う。潤った分、服屋の店員さんがクルマを買って、自動車メーカーが潤う。自動車メーカーが潤った分、増産しようと下請会社に部品を発注すると、部品を作っている父の会社が潤う。潤った分、下請会社の従業員=父のお給料が増える。父のお給料が増えると、私のお小遣いがアップする。


もし、私がファンシーショップでお買い物をしなければ、ファンシーショップの店員さんは服を買わないから服屋さんは潤わない。服屋さんが潤わないと、服屋の店員さんはクルマを買わないから自動車メーカーが潤わない。自動車メーカーが潤わないと増産できないし部品も発注しないから、下請会社が潤わない。下請会社が潤わないと、父の財布が潤わない。父の財布が潤わないと、私のお小遣いがカットされる。私はますます財布の紐が堅くなり、以下エンドレスで経済状態が厳しくなってしまう。


もちろん、ファンシーショップで私の数百円のお小遣いを使ったところで、その儲けで店員さんが服を買うことはできません。でも、もしすべての人がお金を使わなかったら?すべての人が、自分ひとり豊かでいたくて手元のお金にしがみついたら?みんな、今手元にあるお金以上を手にすることはできないでしょう。お金とは、紙幣や硬貨を持っていることそれ自体に価値があるのではなく、みんなが使ってぐるぐる回ってはじめて価値があるのです。


今でも私は、経済学とかには疎くて、デフレもインフレも上手に説明できません。でも、お金は貯めるものではなく使うものであること。また、自分ひとり豊かになろうとせず、みんなで豊かになるために自分の手元からリリースしないといけないこと。そういう考え方が身についているので、手元のお金が減ることが怖くありません。お金を使うことは楽しく、豊かな行動だと思っています。


父も言っていますが、すべての貯金がよくないのではありません。私は今、結婚を控える身です。何かとお金が入り用なので、これから貯金をします。でも、貯めた分は挙式や新婚旅行なんかに使って、しっかり世の中にリリースします。


今日は、10才かそこらだった私を子供扱いせず、大切なことを教えてくれた父のお誕生日を祝いに実家へ帰っています。お父さんありがとう。これからもまだまだあなたからたくさんのことを学びたいです。なので、あともう少し、長く生きてくださいね。




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