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若くて赤いウメマツオオアリ

認めたくないものだな…
自分自身の、若さ故の過ちというものは…

ウメマツオオアリの若いコロニーを採集した。
ウメマツオオアリはよく見るので普段ならスルーしているのだが、今回採集したのには訳があった。
赤いのだ。

頭まで赤い
裏から見た様子

アリをよく見るようになってから2年ほど経つが、
正直今でも野外で見ただけでウメマツオオアリやクサオオアリの仲間を見分ける事なんてできない。
しかし、この赤い身体は本州産には見えなかった。
しかも近くに、この地域には居ないはずのヒゲナガアメイロアリの居る植物園があるのだ。

黒いアリと共存している

さらにこの通り、
黒いアリと赤いアリが混ざっている

別のコロニー。
採集はしていない

加えて、
数m先にまた別の赤いアリのコロニーがある

この辺りではウメマツオオアリをよく見るし、何ならこの2つのコロニーから数m離れた所の枝を折ったらウメマツオオアリが出てきた事がある。

この辺はウメマツオオアリの棲息地の筈なのに、ウメマツオオアリではない、今まで見たことのない謎の赤いオオアリ属に占拠されつつある!

外来種では?


もしそうなら由々しき事態である。

正義感に燃えつつ、この赤いアリと黒いアリの混在したコロニーを持ち帰り、日本産アリ類データベースと日本産アリ類図鑑と照らし合わせる。

この赤いアリのカラーリングは文章をみる限り、
本州産のアリのいずれとも合致しない
採集したコロニーには女王も3匹居る。ウメマツオオアリ、クサオオアリ亜属の国内種で、
女王が複数居るアリは限られる殆ど明らかにそれと異なる
国内種で怪しいのはダイトウオオアリくらいである。
もしダイトウオオアリなら国内外来種で、即座にここから除くべきであろう。

半ば確信を持って、コロニーを観察できるケースに移し替えつつダイトウオオアリである事を確認する

ダイトウオオアリではない?

まずこのダイトウオオアリだと思った根拠たるカラーリングからしてダイトウオオアリではない。
ダイトウオオアリなら腹部第一節まで赤褐色の筈である。
そして、黒い個体に関して何の情報も無い。
毛のはえ方もダイトウオオアリの記述と合致しない

外国の種類か?

でも、できれば殺したくない
(標本を作るのが面倒くさいため)
確信に至るには殺して標本にするべき…
面倒くさい…標本は…

標本作りから逃げる一心でもう一度、写真から読み取れる範囲で検索表を辿る。

ウメマツオオアリ

しかし体色が違う。
前胸が褐色がかる場合が多いとあるが、(偶然にも)前胸だけが褐色の見慣れたカラーリングの個体は居ない。黒か赤だけである。

ひ、標本を作ってもっときちんと調べれば…
いや、面倒くさい。

標本作りは苦手である。
ラベルをデジタルで打ち込んで印刷するのは面倒くさいので手書きにするわけだが、私の字は汚い。
読めたものではない。

そして先にも述べた通り、野外でこの手のアリをきちんと見分ける気にはなれない程度の、節穴の目である。

ラベルに虫の名前を書きたくない。
大体人生初の昆虫標本が謎のヒメバチで、結局種が判らなかった挙句、標本箱にカビを持ち込んでしまい完全に朽ちて消え、永久に謎のヒメバチとなってしまった私である。

昆虫を正確に見分ける自信は無い…

目の前の赤いアリをもう一度見る。
シャア専用リック・ドムみたいなカラーリングのアリだ…
シャア専用ウメマツオオアリ…

!(フレクサトーンの音)


ザクやドムにも赤いのが居るのだ。
ザクやドムよりも沢山いるウメマツオオアリに、どうして赤いものが居ない?
インターネットでウメマツオオアリの情報を漁る。

あ…


というわけで、これはただのシャアかジョニー・ライデン専用のウメマツオオアリだったのである。
黒い個体と混在していたのは、ウメマツオオアリの若いコロニーは女王が複数いることもあり、コロニー内に居る3匹の女王の中に赤いウメマツオオアリを産む女王が居ただけのことである。

彼女をダイクンと名付けたい

私自身のアリを見分ける能力の未熟さのせいで採集しなかった方のコロニーの虐殺を企てるところだった。
私はザビ家にはならない

シャアのお陰で若さ故の過ちは防げた。

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