3つの私の顔|キャリア開発体験談#5
第5話 なんとなく生きる毎日へ、お別れを
キャリアパーツの選び方
いよいよキャリアモデル作成の話になる。
キャリアバランスシートの固定資産から、まずは3つのキャリアパーツを選び出すところから始まる。
なぜ3つなのか?答えを先に言うと、相互作用(シナジー)を獲得しやすくするためだ。第2話で書いた「創発型」のキャリア構築するために必須だからでもある。
また、3つ以上でも良いが、その話は第8話あたりで紹介する。
最初はイメージが難しかった。
そこで、3つの自分の顔を考えてみることにした。
本職サラリーマンの私
工作教室における先生の私
趣味を楽しむ私
まずはぼんやりと並べてみる。そして一つずつ具体的にしていく。例えるなら、「肩書き」を考えるイメージだ。
一番最初に本職を考えた。私は環境活動の専門家であり、SDGsの推進にも力をいれていた。だから「環境・SDGs推進者」なる肩書を考えたが、推進者という言葉が曖昧だった。
企画立案する人なのか?
自らアクションを起こす人なのか?
これは実際、自己解決した。
前者の「企画立案して会社(従業員)を動かす」という主題で提案をしていたが、企画書には後者の「私自らが行うこと」ばかり書いていた。
キャリアパーツを考える過程で、自己矛盾に気づいてしまった。
曖昧に仕事をしていたんだと、納得することができた。
(会社内でそんな神のような視点で指摘をしてくれる人などいる訳もない)
無論、それ以降は前者のイメージに統一した企画書を作成することができ、企画が進んだ。キャリアパーツ様様である。
二つ目の工作教室の先生も、自分の立ち位置を見直すきっかけになった。
第4話で承認欲求満たすために先生という存在が心地よいと説明したが、なぜ工作教室の先生を始めたかという動機は子供が好き、教えるのが好き、である。
承認欲求というか優越感を感じることを否定しないが、キャリアパーツを考える上ではその動機が決定的となった。
さらに、SDGsと触れ合ったことで後出しの取って付けた感はあるが、子供に工作(技術)を教える社会貢献活動という大義を再発見することができた。
今まで漫然と続けていた活動に社会的価値があると知ると、10年以上の活動実績がとても誇らしく思える。
教えている子供達の中から、未来の技術者が輩出されるといいな。と、これからも継続するモチベーションに繋がったりもした。
ここまでは大きな気づきが得られたが、3つ目のパーツには苦しんだ。
先ほど「趣味の私」と表現したが、趣味だけでも5~6個ある。そのうちの一つに絞ることを考えてみたものの、すぐに諦めた。全てを満遍なくゆるく嗜んでいることが絶対条件だからだ。
もう一つ苦しんだことがある。流動資産だ。
流動資産がスカスカだと前話で取り上げた。
正直に言えば、キャリアを積み上げることで富や名声を得たい。これには担当のキャリアコンサルタントの方も苦笑いをされていた。
第3話で、「お金稼ぎを目的にはしない」とカッコよく書いてはいるが後日談だ。このキャリアパーツを考えていたオンタイムでは、早々そんな哲学的な見地には立てない。
そんな二重の苦しみを抱えたキャリアパーツ探しを、どう結論付けたか?
第4話の結論として出た「創る」ことを信条とする自分と、積み上げてきた会社と工作教室での経験の最適解を掘り起こして以下のように結論づけた。
3つの心と3つの顔
夏に始まったプロジェクトだったが、すっかり年の瀬を迎えていた。
残り2か月という期間の短さもあってか、仕上げ作業に全員が取り掛かっていた。
団体Nの課題は会員数を増やすこと。
しかし、プロジェクト期間内で私を含めたプロボノメンバーが直接会員を増やしたことはなかった。一見すると何の役にもたっていない。でも、団体Nが子供たちや初心者の方へレクチャーするための教材が形になったことで、参加者の満足度が向上したと連絡があった。
私を含めた5人のプロボノメンバーは、お互いに「大したことはしていない」という感想で一致した。それでも、団体Nからは多大な感謝をされた。自己評価と他者評価は大きく異なるものだと、この時ハッキリと実感した。
担当のキャリアコンサルタントの方とも打ち解けていて、会うたびに(感染症の影響でほぼオンラインだったが)どんな新しいことが待っているのだろう、というワクワク感ばかりだった。
並行していたキャリア開発も同様に大詰めで、キャリアモデルの3つのパーツの精査に入っていた。キャリアパーツの名付けで細かい修正が幾度とあったが、前項でお話した通り本質的には確定できていた。
自分棚卸からの一連の作業で明らかになった私の3つのキャリアパーツ。
その一つひとつに、心がある。
会社ではサステイナブルの旗振り役を
工作教室では教育を通じた社会貢献を
作家として世の中に元気を届けたい
そして、それらの心を他人に説明しやすくするために3つの肩書がある。
サスティナビリテプロデューサー
未来の技術者トレーナー
読み物クリエイター
どれも大げさな感じもするが、その肩書に恥じないように自分を高めていくことが人生の目的になりそうな気がしたから、私は大いに気に入っている。
そう、名刺が3つ作れそうだから「顔」が3つあると思って。
ここまでくると、今までの人生がいかに会社に依存したキャリアを歩んできたかを思い知ることになった。私が「キャリアは自分で考えるものだ」と、断言できる根拠はこの体験にある。
キャリアモデルの仕上げ・・・「創発型」にするための最後の作業。
次回でキャリアモデル図の話は終わりとなる。
第6話へ続く
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