欲望は作られる(アコギの話)

 ごく当たり前のことかもしれませんが、知らず知らず作られてるよなーと、アコースティックギターを買い替えることを繰り返してしまっているうちに、そう感じた次第です。欲望が作られるって、つまりその装置に突き動かされて行動するようになるって考えると、けっこう恐ろしい。なお、ギター業界がそういう世界であることを否定するわけではありません。量産されているからこそ、私は手頃な価格で良いギターを購入できたりするわけですから。この記事を書こうと思ったきっかけですが、本当にこれはずっと手元に置いておきたいと思えるギターが、中古で5万円程度で手に入っちゃったんです。いわゆるビンテージもので。そのギターのことは最後に述べたいと思います。
 まさに私がこよなく愛するアコギという業界こそ、どんどん刷新されていく我々の欲望がよく反映されていると思います。どういう点でか。ビンテージギターを弾いてみて思ったのは、50年経って、その間いろいろな木材やブレーシングやネックシェイプ、新しいサドル材などが開発されてきたことと思いますが、まず、古いものでも良いものは良いし、新しいものが良いとは全然限らないということ。ただ、現代は本当にいろいろなメーカーのものが手に入りやすくなったのは間違いないのかなと思います。
 欲望がどう作られるのか。それは、一言で言うならば「違い」の誇張によってである。スプルースにもいろいろ種類が、ローズウッド系にもいろいろ種類が、塗装にもいろいろな種類が…と、フンフンと情報を仕入れているうちに、今度は別のが欲しくなる!という具合に。
アディロンダックとか、ホンジュラスマホガニーでないと…とか聞いてると、シトカスプルースとアフリカンマホガニーじゃイマイチなんじゃないかとか、変な偏見が身についてしまうんですよね。賢くなってるんだか、なってないんだか。
 そうそう、最近NHKで、福山雅治がアメリカはナザレスのマーティン本社に行って、最高峰D45をカスタムオーダーするってシーンが映ってて、当然のようにそこにはハイグレードなブラジリアンローズウッドが並べられていました。宝くじ当たったら、アコギ好きなら夢見るような話ですよね。マーティンカスタムショップで作られるD45なんて。太い音に倍音の残響ときらびやかな高音が星空が降り注ぐように鳴るのがイメージできますね。D45弾いたことないですけど。ほら、またこうして欲望が作られる。頑張れば叶いそうな欲望ほど、私たちをいつも悩ませますね。45は、ありゃ500万くらいするんだろうけど。
 最近は、マーティンもギブソンもわりと安価なモデルを出しまくってるけど、まだうまくいってるのはマーティンなんでしょうね。ギブソンは古い時代の栄光が輝きすぎているのか…近年の廉価モデルなんて、フリマサイトで10万切ってます。
 なお、私が買ったビンテージは、S yairiの古いYD305です。マーティン系統の、とても美しい鳴りです。安くてビックリなんですけど、狙い目ですね、古いエスヤイリ。

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