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ラジオドラマ脚本 018(長文です)

【大漁旗はためくもとに、わが故郷あり!】

【登場人物】
清花 家
清花 梅子(さやかうめこ)71歳
 出来る事であれば孫とこの故郷で住めるの
 ではないだろうかと淡い希望を抱いていた。
清花 向日葵(さやかひまわり)23歳
 放射線を勉強して、梅子の希望をなんとし
 ても叶えてあげたいと思っている。
郷 家
郷 正義(ごうまさよし)73歳
 かつての全共闘。今は伝説の漁師。船を復
 活させて大漁旗をはためかせたいと思って
 いる。
郷 剛(ごうつよし)23歳
 正義のお守役。帰郷キャンペーンに嫌々な
 がら参加
国生 実直(くにおじっちょく)32歳
 環境省の役人。出世のためにあらゆる事に
 忖度し、冷徹に物事を進めようとしている。 


SE:携帯の起床アラーム音

向日葵「うわあ〜!思い出したくないのに、もう!おかあさん出てこないでよ」

SE:テレビからアナウンサーの声「はい!こちら、12月の昼間だというのに、大変、暖かい駅前ロータリーです。帰還困難区域住民のための帰還実証実験の第一弾が、14時頃、このロータリーより故郷に向けてバスが出発します」

N:バスの車内で、久しぶりに再会して喜び合う村民たち、表面上は希望に満ちた会話を交わしています。

向日葵「国生実直、いつにも増してぴっちりした七三分けね。いかにもお堅い行政マンという感じ。愛想笑いの一つだしても、バチは当たらないと思うけどね」
梅子(心配気に)「自宅は、大丈夫だろうか?」
向日葵「その件に関しては、今回の実証実験で、再度、考えよう…。ばっちゃん、まだ、希望は、…あると思う」
梅子(ため息)「はあ〜」
向日葵「実直が、名札兼Dダッシュを配り始めた。ばっちゃんの分ももらってくるね」

N:目的地に向け、14時の定刻通りにバスが発車。

SE:バスのエンジン音

「Dダッシュってなんだ?役人の言葉は難しい」
向日葵「Dダッシュ、知らない人がいるの?なに!現実逃避してるんだか。この現実を見据えて、乗り越えるのが、今回の実験なんだよ」
「だから!なんなんだよ!」

N:向日葵さん、車内を見渡します。

「あっ!おまえ!」
向日葵「剛だよね!」
(笑)「あの可愛かった。向日葵かよ。10年の歳月って、こわいな」
向日葵「可愛かっただけ、余計だよ!」
「今?まだ、大学生、やってんの?」
向日葵「事故の後、放射線を解決したいと思い、大学に行ったんだ。今は、院生活。だから、ばあちゃん連れて、自宅の状況をこの目で見て、安全なのか?確かめたいんだよ。剛、何してるの?まだ、フリーターだっけ?」
(小さく)「今回は、じっちゃんのお守り役。フリーターでは…」
梅子「あれ?向日葵の同級生の?えーと」

「剛だよ!近所に住んでた。梅ちゃん?梅ちゃんだよね!元気?懐かしいな、本当に、村一番のべっぴんさんの梅ちゃんだよ」
向日葵「71歳の女性を捕まえて、ちゃんはないでしょう!ちゃんは!」
梅子「その呼び方、なんか、故郷に帰ってきた気がするね。お世辞だって、嬉しいよ、ほんと、嬉しいよ!」
「梅ちゃん!」
向日葵「調子に乗るなよ!剛!」
梅子「剛くんがいるなら、大漁旗をいつも、みんなに自慢していたお調子者の正義さんも一緒かい?まだ、死んでないよね」

N:正義さん、梅子さんの背後でラジオ体操を始めています。

正義「梅!おめぇ、おれを勝手に、殺すなよお〜。こんなに、元気だ!ほれ!ほれ!ほれ!港にもう一度、大漁旗をはためかせないうちは、死んでも死にきれないってもんよお〜」
向日葵「腰痛くするよ、正義さん、今年いくつになるんだっけ?」
正義「73歳!朝から、もう、びんびん、もう一つ、び…」
「じっちゃん、もう、嘘つかなくてもいいよ。村一番の美人の前だからって、も
う、明日、動けなくなっても知らないよ!」
向日葵(ぽつりと)「大漁旗、もう何年も見てないなあ」
 
正義「うるさい!現役だ!」
(笑)「どうみても、後期高齢者そのものだけどね、誰がみても」
梅子「小腹が空くと思って、漬物持ってきたんだ。お茶もあるよ。正義さん、落ち着いて、ちょこっと、つまんでみて」
正義(笑)「ぬか漬け、うめえ〜!うめこだけにな?どうだ!おい!おい!おい!」

向日葵(笑)「もう、みんな、声が大きいよ。なんだか、事故の前の村に戻ったみたい」
梅子(しんみり)「生きてて…、よかった」

SE:マイクのハウリング音

N:環境省の役人、国生実直さん、マイクを握りながら、なにやら、今回のバスツアーの説明を始めました。

「えっ?小学校が宿泊先?俺たちが卒業した?いつの間に、改装したんだろう?」
向日葵「とうとう帰ってこれたよ…」
梅子「自宅は、どうなっているんだろうか?おそらく、動物の棲家とかになって、荒れ放題なんだろうか?まずは、掃除からか…」
向日葵「掃除?なんで?」
梅子「そうだよ、掃除しないと、住むこともできないよ。動物の住処じゃなくて、私らの住処に戻さないとだめだろう」
向日葵「そ、そうだよね」
梅子「自宅の先祖代々の位牌くらいは、持ち出せないものだろうか?あの石頭の役人に相談しても、無駄かしら?名前が実直だから、ルールを曲げるなんてあり得ない感じだね」
向日葵「固すぎて、歯が欠けるくらいだよ」
梅子「あのガイガーカウンターとやらで、自宅の周りを計測するつもりでしょ。石頭実直に見つかったら、大変な騒ぎになるよ」
向日葵「国生だよ!」
梅子「そうだった国生さんだね。石頭の方がお似合いだと思うけどね」
向日葵「計測はするよ。それが今回の最大の目的だもの。計測データ次第で、今後のことを見定めないとね。その後のことを決めるための重要な要素だから」
梅子「その〜、なんとかスポットが見つかると、住みたいと思ってもだめなものかね」
向日葵「ホットスポットでしょ」
梅子「それだよ!それ」
向日葵「表土をそいで、数値を抑え込めれば、数年は、大丈夫だともうけど、永遠となると、原発次第だね」
梅子「毎回、選挙の時、政治家が安全だって…」
向日葵「いつの時代でも、政治家は、自分の都合が最優先だよ。僕たちが選挙に行かないのも、悪いんだけどね。同じ穴の狢を選ぶことほど、難しいものはないよ」

SE:マイクのハウリング音

N:実直さんが、現在の放射能の数値データ及び、現地の状況を説明しています。

向日葵「すみません、あの〜、そのデータは、ちゃんと、紙ベースもしくは、データは存在してるのですか?今回も、情報公開せずにそのまま破棄されてしまうのですか?いつものように」

SE:バスの車内から笑い声が聞こえる

「科学者さん、頑張って!」
向日葵「茶化すなよ!剛。大事なことなんだよ。この国の隠蔽体質をなんとかして、打破しない限り、村での生活は考えられないんだよ。わかってるの?」
「相変わらずだな、冗談だよ、冗談」

N:実直さんが、向日葵さんのことをギロッと、睨んでいます。

SE:向日葵さんの咳払い

梅子「実直さん、私ら老人にも、わかるようにちゃんと話をして!話をするだけなら、サルでもできるんだよ。わたしらにちゃんと伝えておくれよ」

向日葵「サルに失礼だからね」

正義「そうだ、訳の分からない役所言葉の羅列だと、誰も、理解できないぞ!俺みたいに、少し訛りをいれてだな…」 

「声でかいよ」

向日葵「また、寝たふりしてるよ。優秀な公務員様だよ」

SE:マイクのハウリング音

N:実直さん、マイクの調子を確かめて、また、しゃべりだしました。

向日葵「そんなにホットスポットが点在してる可能性があるんでしょうか?実直さん、ちゃんと話をしてください」
「えっ、100mSv?」
向日葵「そんな数値が出てるのに、帰還事業なんて、どうして?実施できるんですか?」
正義「はっきりしろ!」
梅子「そんなに、高いのかい?なんとかスポットが存在?もう、除染が成功してるものだと思ってたよ。また、騙すのかい?」
正義「どういうことだよ!おい!」
「モルモットか何かと勘違いしてないか?」
向日葵「放射能が除去できる菌?いつ発見されたんですか?EM菌とかのたぐいですか?国からなにも発表されてないと…」
「それを撒けば大丈夫なのか?」
向日葵「その菌のエヴィデンスは、どこにあるんですか?もう、私たちは、騙されませんよ。徹底的に追求します」
梅子「騙されたんだ、やっぱり」
正義「どうして、おまえらは、わしらの神経を逆撫ですることしかできないんだよ!どこを向いて仕事してるんだ!」
梅子「実直さん!」
向日葵「実直さん、すみませんが、その資料を見たいのですが、どちらで、見ることができますか?また、データをもらえることは可能ですか?」
「もう、棄てたんじゃ?」
正義「お前ら役人は、数年もすれば、どこかにいなくなるかもしれんが、わしらは違う。この村で育ってきたんだ、お前にその気持ち理解できるか?」
向日葵「ここは、死んだ村じゃない!」
梅子「わしらは、あの事故さえなければ、ここで死んで、丘の上のお墓に入る予定だったんだ!その夢さえも、あんたたちは、奪ったんだ!」
向日葵「なんで、ごまかすの!」
正義「大漁旗をはためかせたいだけなんだよ!実直さんよお、俺たちに対して実直でいることがお前の仕事じゃないのか?俺たちはこの村が、最愛の居場所なんだよ!」

SE:マイクの雑音とハウリング音

N:また、マイクの調子を確かめる仕草をする実直さん。

梅子「また、正義さんの大漁旗がはためく姿が見たいんだよ。きれいな青空にはためく色とりどりの大漁旗の群れ。また、みたい…」
「梅ちゃん、大丈夫?」
正義「お天道様に逆らうような生き方しないでくれ!実直さんよお!おい!お前さんにも、大切な居場所があるだろう」
向日葵「あ、バリケードが開くよ」

N:黄昏時、帰還困難区域内に、バスがゆっくりと動きだした。実直さんに対する糾弾がしばしやみました。

SE:バスの中の住民の歓声


梅子「実直さん、ちょっと、小学校に行く前に、漁港にわたしと向日葵を降ろしてもらえませんか?」
向日葵「期待しても、ダメ!」

SE:バスのブレーキ音

N:村の漁港にやってきた梅子さんと向日葵さん。あの時と違い穏やかな港を見つめる二人。

向日葵「実直が降ろしてくれるとは意外だったね」
梅子「やっと、この海に帰ってこれた。黄昏時のこの港は、いつでも、穏やかで、私たちを包み込む優しさがあるんだよ。わたしはこの村に戻ってこれるのかな?じいさんは、わたしの手で、戻すことができるけど」
向日葵「風邪ひくよ」
梅子「もう少し、もう少し、もう少しだけ…。この景色を見ていたんだよ。生まれ育ったこの港の景色をさあ、目に焼き付けさせて、お願いだからさ…」
向日葵「もう、あと、すこしだけだからね!」
梅子「あっ?12月なのに漁船が出てないなんて、どうしたんだろう?この時期なら、カレイ漁の時期だよね。大漁旗がはためいていても…。おかしくない時期だよ」
向日葵「漁船?たしかに?」
梅子「地下水を海洋に放出することが決まったみたいなニュースがあったから、皆、違うところで操業してるのかも」
向日葵「もう、死活問題だよ」
梅子「売れない魚を獲る漁師なんて、おかしなものだもの。いつも、正義さんからもらってたマコガレイ美味しかったよね」
向日葵「大好物だった、ばっちゃんの煮付け!」

梅子「正義さんが、この沖で獲ってきたマコガレイだから、美味しくできたんだよ。ほら、避難場所で作っても美味しくなかっただろう?」
向日葵「そうだった」
梅子「わたしの腕前が、落ちたのかと心配したよ。ほら、わたしも歳だしね。砂糖と塩を間違ったりもあったからね」
向日葵「私でも間違えるよ」
梅子「それは、向日葵が料理ができないからだよ。必要に迫られれば、すぐに覚えるよ」
向日葵「あるかなあ」
梅子「ああ、ほんとうに、ここは落ち着くよ。空気も、風景も、居場所は、ここなんだよ。向日葵、理解してもらえるかな?」
向日葵「もう、行こう。風邪ひくよ」

N:港を後にする2人。小学校に向かって歩き始めました。周りの景色の変貌ぶり。梅子さん、それでも、気丈に振る舞います。
梅子「ご先祖様、遅くりましたが、やっと、戻ってきました。明日、家の後でお墓のほうに参ります。向日葵、お線香?大丈夫だよね」
向日葵「大丈夫、あるよ」
梅子「お供物は…?」
向日葵「ほら、バスの中で実直が言ったでしょ、動物の餌になるから、絶対に備えないでくれと…」
梅子「あの、石頭」
向日葵「今や、野生の王国みたいだから、その件については、わたしも、賛成だよ。ばっちゃん、ごめんね」

N:その頃、小学校では、正義さんが、剛さんに強い口調で話をしています。

正義「俺の船は、無事なんだろうか?事故の時、偶然に、丘に上げて点検中だった。船体は問題なくても、エンジンは、10年も動かしてないから交換が必要だろうな」
「船に関しては、保険とかでなんとか修理代金とか補填されないの?それがなかったら、修理なんてできないんじゃないの?今のうちの経済状況じゃ」
正義「う〜〜ん?おまえが気にすることじゃない!」
「どうしようもないだろう?」
正義「ば、ばかやろう!借金に決まってるだろう!魚をいっぱい獲って、お金に変えて借金を返すに決まってるだろう!それが、漁師って、もんだ!」
「えっ!」
正義「じっちゃんに任せとけ、大船だよ、大船!いつもの大船!船の確認の後は、漁協と相談だ!補助金とか助成金とかでなんとかなるに決まってる!」
「そんなんじゃ、家が沈没だよ」
正義「ばっ、ばかやろう!船がなかったら、お前らのおまんま、どうするんだ!」
「俺も、働くよ!」
正義「剛、おまえの働き場所は、今日から、船の上に決まったぞ」
「えっ〜〜〜〜」
正義「船が無事であれば、お前が漁師になって、あの船を継ぐんだぞ!いいな!俺が生きてる間にイロハを叩き込むぞ」
「家長制度は崩壊したんだよ」
正義「わしの目の黒いうちは、許されないからな!わかったか?えっ!」
「最悪だあ!」

N:小学校の玄関ホールで話し込む梅子さん、向日葵さん、正義さん、剛さん、楽しそうです。

SE:館内のアナウンス「ただ今18時になりました。公民館での夕食の準備がでました。皆さま、公民館の方にいらしてください。


梅子「正義さん、19時に公民館の食堂で、明日のスケジュール確認があるみたいですよ。こらっ!水道水に触ったらだめですよ。実直が飲み水は、ペットボトルにしてくださいと言ってましたよ。まだ、だめなんですよ?」
正義「ちょっと、臭いを嗅ぐだけだぁ」
梅子「正義さん、いくらお歳だとはいえ、放射線が強ければ、被曝するんですから、ほんと、気をつけてください。まあ、私ら年寄りにはあまり関係ないですかね」
正義「おう!そうだ!」
梅子「正義さん、公民館に行く時は、エスコートしてちょうだいね。大丈夫かしら?」
向日葵「あんまり、わがまま言わないで、ばっちゃん!」
正義「お互い、独り身だしな!」
梅子「流石、紳士だわ」
「なに?こんな時に、デートの約束してんだよ!色ボケじじい!」
正義「残り少ない人生、楽しまないでどうする!剛、お前も早く気持ち、伝えろよ、童貞野郎!」
「あーあーあー!」
向日葵「剛、私、公民館に先に行くから、ばっちゃん、よろしくね。いくら、勝手知ったる故郷でも、今は、危険と隣り合わせなんだから、剛、面倒みてよ。老人は、頑固で融通が効かないからね、気をつけるように!」
「データみにいくのか?」
向日葵「研究者としては、確認しないとどうしても、気持ちがおさまらないんだよね。データは、必ず、あるはず。でないと、この帰還事業なんて、絵に描いた餅と同じだよ」

N:公民館の食堂に、住民の方達が集まってきました。

SE:食堂の住民たちのざわめき

梅子「剛くん、向日葵は、まだかしら?」
正義「向日葵ちゃん、どこに行ったんだ?」
「こっちには、いると思うんだけど、実直が来てないところを見ると、まだ、実直とデータの件で揉めてるかも?」
正義「先に来てるんだ。なら、よし」
梅子「役人は、なんで上を見て仕事するのかしら?」
正義「そう、あいつらにとって、一番重要なのは、己の出世だけだから、政治家に人事権を握られている限り、忖度するしかないだろう。かわいそうな奴らだよ」
「そんなことないだろう?」
正義「お前は、少し勉強が必要だぞ。NHKのニュースをよく見ろ!」
「漁師になるんだろう?政治の勉強なんて必要か?選挙さえ、行ったこともないよ。いくだけ面倒だよ」
梅子「あっ!向日葵が戻ってきたよ」
「実直も、現れた」

SE:マイクのハウリング音

N:マイクの調子を確かめながら、実直さん、
 ゆっくりと話し出しました。

SE:実直さんの咳払いの音

梅子「あの石頭は、また、のらりくらりかい?」
向日葵「もう!あの頭の固さは、生まれつきなのかしら!もう、ずっと、あるないの押し問答」
「そんな事ないだろ」
向日葵「あるはずのデータに関しても、存在自体認めようとしないし、破棄したということも認めない」
「なんなだよ、それって!」

正義「やつらなら、そんなことは朝飯米のこんこんちきだよ」
梅子「一体、実直さんは、なにを守ろうとしてるのかしら。守ってもらいたいのは、わたしたちのほうなのに。困ったもんだわ」
「いやだ、いやだ。そんな不自由な生き方。俺にはできないな」
正義「こんな国、守るに値するのか?」
「でもさ、誰かが国を守らないとならないだろう?」
梅子「あの石頭じゃだめだ!」
向日葵「総理大臣が言ったことを、下っ端役人ごときが、嘘だとは言えないでしょう。それこそ、そんな発言したら、一生、冷や飯よ」
「それは、まずいよなあ」
向日葵「誰でも、自分が一番、可愛いんだから、それをうまく逆手にとって操るのが今の政治家だからな、本当にタチが悪い」
正義「許せねぇ!」

SE:マイクのハウリング音

N:実直さん、いつもの仕草をせずに、いき
 なり話し出しました。

向日葵「なに!実直のあの態度、どうしても気に食わないよ。結局は、お上の言うことに逆らうなと江戸時代の役人となんら変わらないあの態度。こちらの意向に添えないようであれば、この実験は、即刻中止って、なによ」
「そんなことって」
向日葵「さっき、電話で確認していたのは、このことね。早速、上に報告して確認したんだ。虎の威を借る狐だね」
梅子「帰らないよ!絶対に」
「そうだ!いつまでも、行政の言いなりになんかなってたまるか!でも、被曝するのもちょっと怖いかも」
正義「実直の野郎!サメの餌にでもするか?おい!」

N:梅子さん、舟を漕ぎ始めたみたいです。

梅子「疲れたよ、もう、帰って寝るよ」
正義「そうだな。もう、寝よう。明日の作業に支障が出たら、それこそ身も蓋もねぇし、梅よ、一緒に寝るか?どうする?」
「なに呑気なこと言ってるんだよ、色ボケじじい!」
向日葵「わたしは、もう一度、実直と話をしてみるよ。ここでの正確な放射線のデータがあるかないかで、将来、ここでの生活が大きく変わるんだもん」
「明日、俺にわかるように教えてくれよ」
向日葵「その態度が、この国の危機管理をいい加減にしても、大丈夫だと政府が思うんだよ」
「そんなことねぇだろう」
向日葵「戦後、なにも、考えない国民を作ってきたんだよ、この国は」
「考えてるけどね!」
正義「考えてるようには見ねえぞ」
向日葵「だから、自分の頭で考えて一人一人が行動しないと、自分のことだと思わないとだめなんだよ」
正義「俺たちが、60年代安保法制で負けたことも、一因かもなあ」
向日葵「あの後の社会を見れば、よくわかるよ。大人はみんな豊かな生活というお題目に踊らされて、がむしゃらに働き、国をよくしようとして出来上がった結果がこの有様」
「おれ、馬鹿だからな」
向日葵「馬鹿だと思う人に、わたしは説明しないよ!絶対にやだ!そんなところ、子供の頃と全く変わらないね。馬鹿だといえばみんなが優しくしてくれると思ったら、大間違いだよ」
「わ、わかったよ」

N:手を振る梅子さん、優しく正義さんが付き添いながら歩いて行きます。

SE:獣の鳴き声

N:朝日が昇ってきました。今日も、いい天気のようです。

梅子「なんだか、怖いくらいの動物の泣き声だね。この村にもいっぱい、いたんだね。向日葵が起きる前にちょっと、この辺りを散歩でもしよう」

N:向日葵さんを起こさないようにそっと、部屋をそっと出る梅子さん。ホールで新聞を読んでる正義さんに声をかけられました。

正義「お!梅よ、どこに行くんだ?この村に、今いるのは、野生化した動物だらけだぞ。気をつけないと襲われっぞ!」
梅子「そうなのかい?」
正義 敷地内であれば大丈夫、わかったことだけどな。ただし、小学校の

梅子「安心したよ」
正義「もしかして、昨夜は、興奮して眠れなかったとかかあ?俺は、今後のことで頭がいっぱいで眠れなかった」 

梅子「寝れなかったよ、やっぱり」

正義「そうだよな、10年ぶりに戻ってきたのに、自分の家に戻れないなんて、へんだよ」

梅子「家に戻れないなんておかしいよ」

正義「梅子は、今回のこの事業にどうして、参加しようと思ったんだ」

梅子「わたしはね、今回、死んだじいさんの骨を、この丘の墓に入れることだけを考えて参加したんんだ」 

正義「避難所で亡くなったのか。俺が知ってる頃は元気そのものだったけどな?」

梅子「海も見えない、知り合いもいない場所が、殺したんだ!」

正義「そうだよな」

梅子「今回の件、骨壺は持ち込めなかったけど、喉仏を持ってきたんだ、じいさんも、ここのお墓なら安心だと思ってな」

正義「墓石を動かすのは大変だぞ。道具が必要だ。梅子には無理だ」

梅子「正義さん、手伝ってくれないかい?」
正義「お安い御用だ!」

梅子「なぁ、正義さん、あんたは、今後どうするつもり?わたしは、家が無事であれば、もう、帰らないつもりだよ。向日葵には悪いんだけどね」
正義「俺も、実際のこと、船が無事でも、孫の剛と一緒に、船を出すのは、考えてるんだよ」
梅子「被曝のことだね。わたしら年寄りは、いいとしても、若い向日葵や剛くんを巻き込むのは、ちょっと、躊躇するよ」
正義「思いはおなじか」
梅子「もう、避難所の生活は、からだに応えるよ。事故の前のように、ここに住んで、出来れば天寿を全うしたいんだよ」
正義「海が見えないのは…」
梅子「わたしら老人にとって、放射能だとか放射線とかは、どうでもいいことさあ。ひとつだけ、わたしの居場所は、ここだと今回の事故で気付かされたよ」
正義「俺も、おなじ気持ちだ」
梅子「二人で、駆け落ちとか、してみるかい?うちの家にだけど」
正義「それも、いいかもな。ただし、居場所は判明してるんだから、駆け落ちではないな」
梅子「そうだ!そうだ!」

N:公民館での朝食も終了して、各住民たちが自宅の様子を見に行動をはじめました。

向日葵「ばっちゃん、私たちの自宅の様子を見にいこう」
梅子「なんか、ドキドキするね」

N:公民館から、梅子さんの歩くスピードに合わせながら、家に向かって歩く向日葵さん。

SE:鍵の開く音

向日葵「じっちゃんがよっぽど頑丈に作ったんだね。あの震災以来、何度か大きな地震があったのに、びくともしてないよ。すごいよ、ほんとうに、すごすぎるよ」
梅子「褒められて、くしゃみしてるかもね」

向日葵「じっちゃんって、ここを出ることを考えたことなかったのかな?」
梅子「今じゃ、こんな、廃れた場所だけど、じっちゃんの頃は、原発工事が大量に出て、この村も、工事バブルに沸いたもんだよ」
向日葵「そうだよね。あんな大規模工事だもの」
梅子「じっちゃんも、あんたのお父さんも、原発の仕事以外、したことがなかったんだよ。実入りがよかったからね。この村では、珍しい家だったんだ」
向日葵「確か、お母さんは?ここの人じゃないんだよね」

梅子「お母さんは、東京から来た人だ。この村の出身じゃないよ。お父さんが、原発で働いてる時、原発開発の本社から来ていた社員だったんだよ。二人は、原発で出会ったんだ」
向日葵「そうか、原発でね」
梅子「こんな辺鄙なところに、よく、嫁に来たと思ったよ。うちは、農家ではなかったから、それも、よかったのかもね」
向日葵「えっ?どういうこと?」
梅子「畑に関しては、おまえの母さんが、自主的に始めたんだよ。わしらも、びっくりしたもんさ。いきなり畑やるって!」
向日葵「てっきり、先祖代々かと…」
梅子「最初の頃は、わしらも教えることができなかったから、近所の農家の人に頼んで、一緒に農作業を手伝いながら、お母さんは畑仕事を覚えたんだ」
向日葵「おかあさん、すごいなあ」

梅子「その後、無農薬やらなんやらを実るようになったんだよ。でも、ちょっと早
 すぎたんだ」
向日葵「今じゃ、付加価値の高い農業だよ」
梅子「あの時は、農業も大量生産時代で、周りの畑で農薬散布は当たり前。お母さんの畑だけが、農薬を撒かないから、虫がつくと周りの農家から、吊し上げも食らったこともあったね」
向日葵「そんな」
梅子「お母さんは、孤立無縁だったんだ。ただ、自分が信じたことに対して、絶対にブレなかったね」
向日葵「わたしには、できないなあ」
梅子「お前には、その血が流れてるよ。向日葵が、生まれる一週間前も、畑にいたもんだよ。相当、畑が心配だったんだろうね」
向日葵「すごいな」
梅子「おまえの名前は、お母さんが、畑のまわりに、いつも、向日葵を植えていたから、つけたんだとわたしは、思ってるんだ」
向日葵「向日葵が好きだったんだ」
梅子「やっと、軌道に乗った時に、あの事故で全てが、消えたんだ」
向日葵「おかあさんも…」
梅子「お母さんの作ったトマト、あれはうまかったな。今のトマトみたいに甘いだけじゃなく、少しえぐみがあるような味が良かった」
向日葵「嫌いだった。だって、苦いんだもの」

梅子「向日葵は、まだ、子供だったからね。仕方ないよ。でも、ときどき、思い出すよ。本物の野菜の味をね」
向日葵「今なら、食べれるかも」
梅子「お母さん一人で、立派な畑を作り上げたんだよ、あんたを育てながらね」
向日葵「ここが、おかあさんの居場所だったんだね」

梅子「そうかも」
向日葵「おかあさん、ゆくゆくは、ここで、自給自足の生活をするんだって言ってた気がする」
梅子「お父さんにもよく相談していたよ。原発の仕事も先細りだったみたいで、お父さんも真剣に考えていたみたいだった」
向日葵「事故さえ…」

SE:動物の鳴き声

N:遠くで、野良犬の遠吠えが聞こえてきます。

向日葵「おかあさんなんで、あの時、ここから出て行ったんだろう?ここで、大人しくしてれば…」
梅子「もう、いうな!」

向日葵「だって、だって、だって。いまだに、どこにいるかもわからないし、ここにいたとしても探すこともできないんだよ。ここの墓に入れてあげられないんだよ!ばっちゃん!」
梅子「死んだとは決まってないよ!」
向日葵「そんなこと言っても、生きてるなら、避難場所だって、わかってるんだから…」
梅子「わかった、ばっちゃんがなんとかする」
向日葵「なんとかするって、どうするつもり?ここに来ることはできたけど、また、すぐ帰るんだよ」
梅子「だまっとれ」

N:外をじっと眺めている梅子さん。大きな声に気圧された向日葵さん、明るい声で、梅子さんに話しかけました。

向日葵「この家の状態なら、すぐに戻っても住めそうだね。じっちゃんに感謝だね。家の中は、確認できたから、ばっちゃんちょっと、外に出て、放射線を計測してみるよ」
梅子「気をつけるんだよ」

SE:猫の鳴き声

向日葵「軒下に、子猫が、いるよ。ばっちゃん!どうしよう?」
梅子「どら?」
向日葵「バケツに水汲んでこようか?お腹空いてないのかな?」
梅子「いい毛並みだね、魚のアジのような模様だね。おまえは、今日から、アジに決まり!」
向日葵「アジ、美味しそうだなおまえ!」

SE:ガイガーカウンターの警報音

向日葵「思ったよりも、数値が、大きいよ。ホットスポットさえなければ、住めるかと思ったけど、雨樋の下がひどい」
梅子「どうした?」
向日葵「なんでもないよ。ちょっと、玄関から、町道のところまで、計測してみるよ」
梅子「イノシシに気をつけるんだよ」
向日葵「家から、絶対に出ないでね。わたし戻るまで、絶対だよ」
梅子「はい!はい!はい!」

N:梅子さん、家の中で、一生懸命、使えな
 いものをだして、処分用の箱の中に入れて
 います。

向日葵「ただいま!お腹減ったよ。もう、お昼になるから、公民館に戻ろうか?ばっちゃん?あれ?ばっちゃん?ばっちゃん!」
梅子「心配するな厠だよ」
向日葵「公民館に、お昼食べに戻ろうか?ばっちゃん?どうする?」
梅子「お腹すいてないから、もう少し、家の中を片付けるよ。いつまでも、避難所にいることも出来ないようだし」
向日葵「あっ、そう?なんなら、おにぎりでも握ってこようか?」
梅子「おや?向日葵、おにぎり?握れたっけ?」
向日葵「そのくらいはできるさ、うん、できるよ。ただし、三角だけはリクエストはなしでね」
梅子「教えればよかったよ」
向日葵「じゃ、行ってくるね。くれぐれも、家から出ないでね」
梅子「はいはい」

N:向日葵さん、公民館に向かって歩き出します。

SE:公民館の中のざわめき

N:住民の人たちが思い思いに食事をしています。

「向日葵、じいさん見なかった?」
向日葵「見なかった。何処か行ったの?海でも見てるんじゃないの。年寄りは、ときどき、センチになるから」
「それはどうだろう?」
向日葵「じゃ、どこにいったの?」
「腹減ったから、先に、公民館に行くと言って、船を出て行ったんだけど」
向日葵「行き倒れた?」
「ありがたい」
向日葵「ねぇ、船の具合はどうなの?すぐに、操業出来そうな感じなの?」
「すぐは、無理だな。エンジンの調整もしくは、買換えになる感じだよ。そうなると、お金も工面しないと」
向日葵「フリーターやってる暇はないね」
「足元に火がついたよ」

向日葵「あんまり聞いたことなかったけど、本当は、やりたいことがあったんじゃないの?この事故で、夢を諦めたとか?」
「そんなたいそれたことはないよ」
向日葵「ほんと?」
「ほんとだよ、大学までは、出してもらえたし、その後も、なんやかんや言いながら、わがまま聞いてもらってるからな」
向日葵「やりたいことないの?」
「やりたいことか…」

SE:梅子さんの家の玄関の開く音

正義「おい!おい!梅子、いるか?」
梅子「正義さん、声が大きいよ。静かにしてくれよ」
正義「向日葵ちゃんは、ご飯食べに行ったかい?」
梅子「行ったよ」

正義「家は、今すぐにでも、住めそうな感じかい?」
梅子「なんとか、住めると思う。思ったほど、柱とかが傷んでないようだから。それと、動物が入った形跡もないみたい」
正義「不幸中の幸いだ」
梅子「正義さんのところは?どんなだい?」
正義「うちのほうは、もう、住めないね。泥棒に入られて、玄関が開いていたみたいで、動物の住処になった。もう、俺の家じゃないよ。まあ、船の方が、思っていたほど、傷んでなくてよかったよ」
梅子「じゃ、作戦通り。ここが新居だね」
正義「そういうことだな。この歳で、女房以外で、一緒に住むとは思わなかったよ。わっはっはっ!」
梅子「さあ、戦いの開始だよ」
正義「まずは、玄関をバリ封してと」
梅子「器用だね」

正義「これでも、全共闘世代だぜ!バリ封なんて、朝飯前!大学の時を思い出すなあ。あれは、一種のお祭りのようだった」
梅子「全共闘だったの?」
正義「あの時は、ほんとうに、世界を動かせると、本気で思っていたもんだ。それが、はかなく消えたときに、俺は、この村に戻り、社会に関わるまいと思って、漁師の世界に飛び込んだんだよ」
梅子「正義さん、東京から戻った時は腑抜け物だった」
正義「勝てると思っていた喧嘩に負けたからな。そんなことを忘れるために、頑張ったよ」
梅子「ほんとこの村の活気は、大漁旗が全てだった」
正義「そうだ、船から大漁旗を持ってきて屋根に掲げて、ここでの生活宣言とするか?」
梅子「いいね!それ!」

正義「全共闘世代の生き残りの最後の花火だ!盛大に打ち上げなくっちゃなあ!」
梅子「騙され続けたんだからね」

N:アナウンス「食事の時間が終了しました。恐れ入りますが、食器等を流しまでお願いいたします

向日葵「正義さん、結局、顔を見せなかったね」
「もしかして、梅ちゃんの家で、よろしくやってるとか?」
向日葵「それはないでしょ!」
「わからないよ、お互いに、独り身だし、別に結婚してもおかしくないでしょ!」
向日葵「わたし、家に行ってみてくるよ。心配だし。結婚してくれてもいいけどね」
「困るんだよなあ」


N:2人揃って、向日葵さんの自宅に向かっています

SE:動物の鳴き声

向日葵「あれ?玄関が開かないよ。どうしたんだろう?」
「建物が、歪んでんじゃないの?」
向日葵「だって、さっきまで、なんともなかったよ。おかしいよ?ばっちゃーん!ばっちゃーん!ばっちゃーん!」

N:家の中から、梅子さんの声がします。

梅子「向日葵かい?」
向日葵「ばっちゃん?どうしたの、玄関、開かないよ」
梅子「ごめん、ばっちゃんは、もう、避難所には、戻るつもりはないよ!」
向日葵「えっ!どうしたの?」
「梅ちゃん!今、この村にいてもいい事ないよ。ご飯とかどうするんだよ?」
梅子「なんとかするよ!」
「うちのじいさんと同じこと言わないでおくれよ!うちのじいさんはきてない?」
梅子「今は、いないよ」
「いままで、やっぱりたんだ!」

N:剛さんの後ろから、大きな声が

正義「いちゃ、悪かったかい?」
「じいさん、何してるんだよ。あんまり心配かけないでくれよ」
向日葵「何?持ってるの?」
正義「大漁旗だよ!みてわからないのか?今日から、ここは、梅と俺の自由開放区になったんだ」
梅子「正義さん、大漁旗あったのかい?」
正義「あったぞ!」

向日葵「ばっちゃん、ここは、あまり安全とは言えないんだよ、ちょっとでいいから話をさせて!」
梅子「あんな避難所で死ぬのは考えられないんだよ。あそこで、死んだら、誰がここに連れてきてくれんだい?」
向日葵「それは」
梅子「わたしの人生の晩年は、わたしが決めるんだ!」
向日葵「そんなこと言わないで!ばっちゃんが、いなくなったら、わたし、天涯孤独だよ」
梅子「最後のばっちゃんのわがままだよ、ごめん」
正義「さぁ、二人とも、公民館にもどった方がいいぞ。ここは、老人に任せて」
「じいさん、俺に漁師のイロハを教えて、くれるんだろう!あれは、嘘なのか?」
向日葵「ばっちゃん!ばっちゃん!ばっちゃん!」
正義「おまえを漁師にしたいと、今でも、おもっているさあ。でもな、魚を獲っても、売れない魚を獲る漁師なんて…」
梅子「向日葵、おまえは、あの母さんの血を引く娘だ。大丈夫!」

向日葵「ここに来てわかったことは、今の政府は、やっぱり、私たちをまた、騙したんだよ!放射線の数値は思ったほど低くないんだよ」
梅子「そうだろうと思ったよ」
向日葵「わかってるなら、一緒に帰ろうよ!ばっちゃん、お願いだから」
正義「ここで、骨を埋めることは、わがままなことなのか?」
向日葵「わからないよ!」
梅子「もう、ここ以外で生活することは考えられないんだよ。他の居場所じゃ、ダメなんだよ」
向日葵「できないよ!」
「もう、いい加減しろ!決めた!じいさん、漁師は中止。来年の選挙に立候補する!」
向日葵「ばかじゃないの」
「おかしいじゃないか!当事者がいない政治なんて!」
正義「おい!剛、なに言い始めるんだ!俺を困らせるな!」
「政治家になって、この村を事故前の村にする!一本の礎になる。もう、他人任せにするのはやめにする!」
向日葵「みんな、どうかしてるよ!わたしは、どうすればいいのよ!」
「いままで、俺は、なにごとも他人任せにしてきた事を後悔したことはなかった。でも、みんなを見て今やれる事を誰かがやらないと、きっと、この村は死んだままだと思う」
向日葵「安心してここで住める方法、絶対に見つけるよ!」

梅子「向日葵、おまえには、お母さんの血が流れてるんだよ。忘れないでおくれ」

SE:大きなマイクのハウリング音

N:実直さんが、10数名の警官を連れて現れました。

向日葵「だめーー!ここで実力行使しても、あの二人には通用なんてしないよ!」
正義「おれは、この大漁旗と一緒に燃え尽きるってもんだ!」
「村議になって、ここを、俺たちのまほろばに変えてやる!」
梅子「ここが、わたしの居場所!わたしの故郷だよ!わしらの気持ち、実直には永遠に理解できんじゃろ!」
向日葵「わたしはこの村を見捨てないよ!何があっても!実直…!」

N:マイクのハウリング音が鳴り響きます

                【完了】

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