ざくろちゃんはじめまして『出産宣言』の感想
さおりさんは、『妊娠したら出産する』ということを伝えるタイミングはいつなのか、悩み、迷い、プレッシャーと不安を抱えながら、仕事をこなし日常生活を送っていた。個人的なことから、『男女平等とはなにを目指したらいいか』まで、ありとあらゆることを明け透けに話せる間柄でも、なかなか切り出せない重要な話題もある。
やっと言えた、『結婚するということは、妊娠したら出産するということだからっ』は、『言ったというより、啖呵を切る感じになった』という。どうしてだろうと気になりつつ、読み進めると、『プレ・マタハラ』なる言葉があるという。『そういうことを言われたことは1度もなかった』と綴られているので、もしかしたら、いつかどこかで触れてしまった世間からの冷たい声をかき消すように、力が入ったのかもしれないと、心がぎゅっとなった。そして、『っ』からは、少しの緊張と、どうか反対しないでほしいと祈るような気持ちがした。いざ、言葉にしたら、『想定とはちょっと違うニュアンスの声』が出てしまうくらい何もかもわからないながらに、大きな大きな宣言であったことが、ガッツポーズからも窺えた。
『出産宣言』は、読者にも宣言しているようで、妊娠、出産、子育てを、どこか他人事だとも思っていたわたしの心を、ぎゅっと掴んで、次のページへと連れて行ってくれた。丁寧に紡がれた現実から、想像を広げることしかできないけれど、この1冊に込められた想いを1つでも多く受け取りたいと思った。