脳内里崎智也について
里崎智也という方をご存じだろうか。
元千葉ロッテマリーンズ、不動の名キャッチャーである。
彼はキャッチャーとしても物凄いのだが、解説者としても非常に素晴らしい人物なのだ。
テンション高めの口調から並べられる、的確かつバランスのとれた流暢な解説は、近年の解説者の中ではピカイチと言って差支えない。
「誰?」と思った人は、「里崎 解説」で検索してほしい。
そんな彼は、よく僕のことを救う。
僕がつらいとき、かなしいとき、落ち込んでいるとき、
彼は颯爽と僕の脳内に現れて、解説しだすのだ。
例えば、僕が仕事でケアレスミスをしたとしよう。
実況「おおーっと高清水選手まさかのエラー!」
里崎「今のはよくないエラーですね!でもこの後の回の先頭打者ですから、気持ちを切り替えてほしいです」
実況「やはり繁忙期での疲れもあったかと思うのですが、そのあたりいかがでしょうか」
里崎「あったと思いますね。それにこういうミスは誰にでもありますから、繰り返さないという意識が大切ですよね。挽回しようという気持ち。それが大切ですよ」
こんな感じに、里崎は謎の実況を引き連れて、僕を叱咤激励してくれる。
ただ、僕は職業柄、他人の代わりに謝ることが多い。
そんなときも、やはり里崎は僕の脳内に現れて、解説をかましてくれる。
実況「高清水選手、今日三度目の『申し訳ございません』が出ました!」
里崎「まだ午前中なのに3回、これはきついと思いますよ」
実況「表情にもかげりがうかがえます」
里崎「自分は何もしてないのに、という気持ちは出てきてしまいますからね。上司のミスが原因という所も拍車をかけているのだと思います」
実況「ここで先方からの強烈なクレーム!抑えきることができるのでしょうか!」
里崎「ぐっとこらえて頑張ってほしいですよね~、おいしいランチでも食べて気を取り直してほしい。わかってくれる人は必ずいます!」
キレッキレの解説具合。まさに気分は幕張の防波堤。
僕もノッてきてしまい、あえて下唇を噛み締めたりする。
実況「午後もなんとか投げ切りました高清水!もう表情には力がありません!」
里崎「結局昼休みを取れないままでしたからね。肉体的にも相当しんどかったと思いますよ」
実況「あーっと高清水!ベンチに突っ伏しています!」
里崎「そりゃ泣きたくもなりますよ。今日は本当にお疲れさまと言ってあげたいですね」
ベンチというか便座に突っ伏していた僕は、今日も里崎に救われた。
もちろん仕事だけではなく、家庭内不和の際も里崎は現れてくれる。
実況「高清水選手、終電でようやく帰宅しました!」
里崎「今週はハードでしたよねえ。目の下にもクマが出ていますからね」
実況「おぉーっと奥さんが玄関前で仁王立ち!怒りの表情でこちらを睨みつけています!」
里崎「ああーこれはキツいですよ。深夜1時半ですよ今」
実況「一昨日が4時、昨日が2時帰宅ですから、しびれを切らしたといったところでしょうか?」
里崎「それは仕事が理由ですから~…やはりわかってほしいですよね!ないがしろにしているわけではないんですよ!」
実況「ここで高清水、トイレへの盗塁を決行!判定はセーフ!セーフです!」
里崎「喧嘩だけは避けたいですからね。自分も頭を冷やしたかったんだと思いますよ。いい盗塁です」
実況「試合終了間近にこんなピンチを迎えるとだれが思ったでしょう!果たしてこの場面乗り切れるのか!」
今の僕は9回裏で1点差に追い込まれた抑え投手だ。
1塁側外野自由席からは「高清水!高清水!」というマリーンズファンの大合唱が聞こえるよう。
歓声の渦巻いて 大きく放り込め 歌え 踊れ 打ちまくれ! いざ行け里崎
里崎はいつも僕を励ましてくれる。
ありがとう里崎、サンキューサット、フォーエバーサット。
※著者は阪神ファンです。