月見酒
9月17日。昨日は中秋の名月だった。3日前に「わぁ!月が綺麗だね」と夫に告白の代名詞みたいなことを言った私。本番の美しさは見逃すまいと楽しみにしていた。
雲がなくても、もし少しかかっていても、月の明るさがはっきりと分かって良いだろうね。そんな前日の会話も我ながらなんだか素敵だった。
「お月見をしよう」と思うと、お花見以上に何をしていいのかが浮かばない。お団子のイメージが強く浮かぶものの、もともと何をするものなのか。調べてみた。
ネットで見たさまざまな話から窺うに、中秋の名月は1年で最も美しく見られる月をみんなで眺めましょう、秋の収穫を神様に感謝しましょうという日。お供えはススキと月見団子(もしくは里芋)を月の見えるところに置くのだそう。そしてそれを食べつつ楽しめばよいと。
ここで酒飲みとして見過ごせない朗報。それは「月見酒」。そうだよね、日本酒も米からできてるものね!感謝しないとね!と、飲みたいだけの私の心がやんややんやする。実際、京都の日本酒メーカー月桂冠により、中秋の名月の日は「月見酒の日」と制定されているのだそうだ。
月桂冠のホームページをのぞくと、とても素敵なワードがあった。
神と酌み交わす!!!!なんというパワーワード。これはぜひともやらなくてはならないな。
スーパーに行ったら、みんな考えることは同じか月見団子が売り切れ。すでに夜もふけている中、粉からこしらえるのはちょっと…と頭を悩ませる。「俺、マックの月見パイが食べたい」隣の夫が言う。その話、乗った!何もすべてを歴史になぞらえる必要はない。私たちは現代を生きているのだから、今なりの過ごし方で月を眺めればいいはずだ。
夜ご飯を食べて、少し時間をあけてからの今日を終えるひととき。月見の宴を始めた。
一般的にはススキが月見のお供になるけれど、ススキが手に入る様子もない。代わりに何かと、満月のような丸いピンポンマムを買って来た。縁側のない我が家。月を眺めながらというわけにはいかないので、月に見立てた花で1杯もまた乙じゃなかろうか。
とは言いつつも、月を愛でるイベント。乾杯をする前に、ベランダで月を眺めておく。
見上げた時間には月の周辺には雲もなく、まっさらな空が広がっていた。それが月のおかげで電球がついているように明るくなり、夜にもかかわらず寂しさを感じさせない心強さがある。
昔、この日に私と同じ場所で月を見上げていた人がいるのだろうか。家でしっぽり、はたまたみんなでわいわい?想像すると少し不思議な気持ちになる。
道ゆく花にも目が止まらない忙しい現代。月を見上げ、少し息をついて乾杯。それってとても豊かな時間だな。熱燗に仕上げた日本酒。月見パイもさくっと食べ応えがあり、餅とあんこの和な味わいが日本酒にも案外いいおつまみ。いけるいける!
ちなみに、中秋の名月は必ずしも満月とかち合うとは限らず、じつは今年は本日9月18日が満月だそう。昨日は暦の楽しみ、今日は正真正銘、最も美しい月が見られるかもしれない。
昨日あまり見られなかった方も、今晩は月を見上げて神と酌み交わしてみてはいかがだろうか。