あべこべ姉妹の京歩き2日目〜観光編〜
姉の朝は早い。
夜より朝に近く、意識を手放したあの瞬間からまだちょっとしか経っていないというのに。シャッと音がして、刺すような光が私の顔を捉えた。
「朝だよーー」
同じ時間まで起きていたのに、こんなに寝起きがいい人間がいるのって、神様の理不尽を感じずにはいられない。あぁそうだ、私は今京都にいるんだった。旅行の日の目覚めって「なぜ私はここに?」みたいな気持ちになる。
前日たらふくお酒を飲んだので、この日は少しは観光しようという計画でいる。京都をあまりちゃんと観光したことがないと言う姉のために、王道のコースでいく予定だ。
ホテルには朝食がついていたので、1階に下りていくと、食事をする宿泊客の皆さまは90%くらい外国人観光客で、その空間は京都じゃなくて異国だった。
アルコール明けにもするりと入ってくれる、おしゃれで優しい朝食。ご自由にのオレンジジュースやコーヒーがありがたい。
この日も天気が良く、チェックアウトをして外に出た途端、太陽の恵みが降り注いだ。持っててよかった帽子ちゃん!
前日に徘徊した先斗町あたりのエリアに戻り、鴨川を越えて八坂神社の方へぷらりぷらりと歩いていく。
この辺りは通りに屋根があるので日差しがあるときでも安心して歩ける。おみやげになりそうなものも大体見られるので、観光客も大助かり。
朝食から時間も少し空き、少し歩いたということもあって、私が好きな抹茶パフェをぜひ姉にもと『祇園辻利』の2階にある『茶寮 都路里』へ。
入店前は2人で1つにする?なんて話していたのに、メニューの写真を見たら「なんだか今日いけそうな気がする〜〜〜」と、頭の中であの人が吟じるのはなぜだろう。
実際これがいけちゃうのだ。所々に使われているやや苦味のあるスッキリした抹茶ゼリーが、あんこやクリームの甘みを中和してくれ、あっという間に底が見えてくる。しかもパフェを食べたあとのお腹がズシンとくるかんじもない。
元気にお店を後にし、せっかく近くだからと八坂神社にさらりとお邪魔。そこから清水の方へ歩く。途中ではあのフォトジェニックなところを通り、お祈りもそこそこにまた直射日光を浴びながらえっちらおっちら歩いていく。
大人になってから清水寺にあまり来た覚えがないと言う姉のために、京都ど定番の清水寺を選んだけれど、私も久しぶりで少し行きたいと思っていた。
修学旅行生が店の前で盛り上がるのを眺めながら、なつかしさに浸った、と言いたいところだけど、パフェ後の頃合いからかすごくお手洗いに行きたくて、道中のお手洗いのなさに絶望していた。風情も何もない。
清水寺は相変わらず寺を見ているのか人を見ているのかわからない大混雑で、この舞台は人の重みでいつかボキっといくんじゃないかと、私たち姉妹はただただいらぬ心配をしていた。
おみくじを引こうということになり、行列に並んでまでゲットしたものの、結果は半吉。半吉ってなんやと思ったけど、内容を見るに、あまり良くない。
ほぼ全てにマイナスなことを言われ、ズタボロのところに最後に「生死は生きたれども苦労災難多し」と書いてある。「まぁ生きるか死ぬかなら生きるけど、苦労と災難多いよ」って、辛辣すぎんか?逆境が待っていようとなんとか頑張って生きていこうと胸に誓う。
清水を後にして坂を下っているときに、よさげな蕎麦屋さんがあったので腹ごしらえと麦を発酵したおいしいアレを喉に通し、給油は完了。
さらに歩いて電車に乗って歩いて歩いて、行きたかった南禅寺の水路閣へ。
申し訳なく思いつつ先に言わせてもらうと、めちゃくちゃ蚊が多い。水辺なので仕方がないのだけど。
しかし自然が豊かでのんびりと静かな時間が流れる素敵なところ。そんなところを、すごい、すごい、と語彙力皆無の姉妹が台無しにしながら失礼しつつ、唐突に現れた水路閣にひときわ大きな歓声を上げた。古さや歴史を隠しもしないその姿、大きさも思っていた数倍大きい。
正直、話題だからここに行ってみたかったというだけのミーハーな理由で来ていて、「これがあの水路閣か!」みたいなのは薄め。しかし、「昔の人が一生懸命作ったこれは結局なんなの?」と、目の前にすると単純に疑問がわいて、家に帰ってから詳しく調べてみた。すると、思いがけず「琵琶湖の水止めたろか」とのつながりが見えてきて、なんだか知っていくのがおもしろいのだ。これが本や雑誌ではなく実際に目の当たりにすることのパワーってやつだろうか。観光、尊い。
水路閣にいた時間は歩いた時間よりもはるかに短かったのだけど、「来てよかったね」と満足感に包まれながらその場を後にした。
姉とは夕方に別れる予定だったので、また河原町の方に戻り、錦市場で海鮮を食べて旅の締めくくり。
姉は夕方が近づくにつれて何度も「帰りたくないなぁ」「楽しかったなぁ」と子どもみたいに呟いていて、私はそれを笑って見ていた。うちの姉妹は姉と妹が反対だとよく言われる。
でこぼこでちぐはぐだけど、なんだかんだ仲が良くてウマが合って、心地いい。
閉まりそうな漬物屋さんで急いでおみやげの漬物を買って、別れる予定の駅へ向かう。「楽しかったなぁ」今度は私の口から自然にこぼれ落ちた。
「次は地元でね」時間潰しのように、この旅行で何度も話したはずの夏の予定を確かめ合い、改札の向こうから手を振る姉が後ろを向くまで、大きく手を振った。