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太郎と鉄丸。

最近、自分の名前に引っかかる事が多い。
ただ単に身に纏う附属でしかない文字。

俯瞰してみると太郎という名前は異端らしい。

太郎、たろう、タロウ、TARO。
海外言うとマイケルみたいなものだろうか。

社会人になってからというもの
初対面の人には必ず驚かれ
「普通だね」「太郎って本当にいるんだ」
などと躊躇なく打たれる散弾銃かのように
放たれるソレが心底心地悪い。
“普通”ってなんですか。

ただ有難い事に
幼少期から周りに恵まれ
”たろー”“たろーちゃん”  “たろちむ”
“たろたろす””ち◯ぽこはめたろー”と
様々な愛称で呼ばれていたので
自分の名前をすんなり受け入れてきた。

昔話や元総理や政治家
それぞれの人生に落とし込まれた太郎が発せられ
呼び方でひとつで個性が分かる。
取引先のお偉いさんにも
1発で名前を覚えていただき
2言目には愛する孫に向けた様な眼差しで
”たろーちゃん”呼びだ。

これはキャラ得ならぬタロ得。
相手の懐に入ることを苦手としているが
名前のお陰で助かる場面も多い。
どんどん利用していこうと思う。

友達のに鉄丸という名の男がいる。

名前を聞くだけでは
“太郎”という古くから残る”普通”とは違う。
どんなにイカついヤツなのだろうと思ったが
そんな思いは直ぐに蹴散らされた。

彼はとても温厚で
しわくちゃな目尻が可愛らしく
おまけに天然チリチリパーマという
愛嬌しかない存在である。

学生時代。
今となっては申し訳ない気持ちで溢れているが
鉄丸という名前をめちゃくちゃにイジっていた。
それはもう相手の全てを知り尽くしたい一心で
貪り尽くす獣のような勢いで。

さらに鉄丸は特徴のある走り方をしていた。
体育祭のリレーで鉄丸が爆走する時には
「まるぅ〜〜ん」という
浦安鉄筋家族の花丸木がよく使う
「らむぅ〜〜ん」を鉄丸バージョンにして
クラスの男子全員で声援代わりに発していた。

そんなヤツらにも鉄丸は
鼻セレブよりも優しく丁寧に
くしゃくしゃな笑顔で包み込んでくれた。

青春時代も過ぎ
お互い社会人になって数年。
毎日のように会っていた鉄丸とも
ここ数年は会えていない。

大人になり関わる人が膨れ上がった今でも
鉄丸という名前は聞いたことがない。

彼だけが鉄丸であり、鉄丸だけが彼なのだ。

このパンデミックが落ち着いたら
海が見える教室の喧騒の中ではなく
洒落たJazzが流れるお店で
渋いウイスキーを片手に
お互いの名前について語り合いたいと思う。

そしてその後日談をヒコロヒーのきれはしに
影響されて始めたこのnoteに記そうと思う。

太郎と鉄丸。

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