「隅田川ほとりを行け」
谷水春声さんには「青い鳥が羽ばたいて消えた」で始まり、「帰る場所はここだった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば5ツイート(700字程度)でお願いします。
#書き出しと終わり #shindanmaker
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青い鳥が羽ばたいて消えたが見間違いだろうか。
隅田川沿いに伸びる歩道のベンチに座って、ぼんやりと空を眺めている。
そろそろ夕方だからか、川沿いのどこかに生息している鳥たちがぐるぐる上空を旋回している。冬にはもう真っ暗な時間だろうが、この季節はまだ明るい。
がたん、がたんと、橋の上から、浅草駅に向かって徐行する列車の音がする。その音は鉄が擦り合わさるような工業的な音で、非日常感がある。水面に反響しているのか、あるいは古びているのか、いつも駅のホームで聞く電車の音とは随分違うように感じる。何分おきに通っているのか計ったことはないが、少しだけ、眺めるのを楽しみにしている。
定期テストによる部活休みも今日までだ。誰にも知られていない小さな逃避行も、明日からはできなくなるのだろう。
正直なところ、テスト休みが終わったら部活に戻るかどうかをまだ決めかねていた。毎日散歩しながら考えていたが、決められなかった。
地区大会で勝ち残れなかった。都大会に進んだ人たちが歓声をあげているのを見ることができず、私は顔を背けた。
幸運の青い鳥は逃げてしまったのだ。
今日の空は夕焼けになるでもなく、静かに濃い青色へと変化していく。
さて。
親に寄り道を疑われないうちにそろそろ帰ろうか。
と。
振り返った先に、あなたがいた。
こんなに学校から離れた隅田川沿いの遊歩道に私がいることなど、誰も知らないはずなのに。
やっぱり、部長には叶わないな。
部長が見つけてくれたことに対して喜んでいる自分がいることが、ちょっと悔しいけど。
青い鳥がまた羽ばたいたのを目の端に捉えたが、多分気のせいだろう。
差し伸べられた手をきゅっと握る。私の帰る場所はここだった。
(700字)