富山県の乗りつぶし計画の立て方
はじめに
乗りつぶし初心者の方向けに、地域ごとの乗りつぶし計画の立て方をご紹介します。第3回は富山県。主に富山地鉄とアルペンルートの組み合わせ方が中心です。
なお、私の乗りつぶしの考え方は、こちらにまとめてあります。
対象路線
西日本旅客鉄道
北陸新幹線(県内停車駅は黒部宇奈月温泉・富山・新高岡の3つ)
高山本線(猪谷以北が富山県)
氷見線
城端線
あいの風とやま鉄道線
両端の市振・倶利伽羅駅は、それぞれ新潟県・石川県に所在
富山地方鉄道
本線
立山線
不二越線
上滝線
富山港線
富山軌道線
本線
支線
安野屋線
呉羽線
富山都心線
富山南北接続線
黒部峡谷鉄道線
万葉線
高岡軌道線
新湊港線
立山黒部貫光
鋼索線(立山ケーブルカー)
無軌条電車線(立山トンネルトロリーバス)
鋼索線(黒部ケーブルカー)
「富山軌道線」の各線と富山港線は、いわゆる路面電車として一体的に運行されている。
立山黒部貫光の運営する路線は、立山黒部アルペンルートを構成する。なお、同ルートの東端で黒部湖~扇沢(長野県)を結んでいた関電トンネルトロリーバスは、2018年に廃止され電気バスに置き換えられている。
おすすめきっぷ
JR+旧北陸本線
2024年3月の北陸新幹線敦賀延伸で見直される可能性が高いが、2023年9月現在販売中のきっぷでは、下記がおすすめ:
北陸フリーきっぷ(東京・大宮などからの往復新幹線付き)
大人の休日俱楽部会員限定
北陸おでかけtabiwaパス(エリア内乗降フリー、北陸新幹線は対象外)
モバイルチケットのみ
北陸観光フリーきっぷ(名古屋・静岡・浜松発、ひだとしらさぎで往復)
エリア出入りの一方はひだ、もう一方はしらさぎの利用必須
それぞれ微妙にフリー乗車区間が異なるので、注意が必要。
上記のほか、エリア内乗り放題のきっぷとして、北陸新幹線でエリア入りする乗客限定の「北陸周遊乗車券」(JR東日本)や、サンダーバードでエリア入りする2人客限定の「北陸乗り放題きっぷ」(JR西日本)が販売されたこともあるが、2023年9月現在は販売されていない。
未乗線区の残り具合によっては下記きっぷがリーズナブルだが、先のこのきっぷで乗りつぶしをしてしまうと、後日結局このエリアを包含するフリーきっぷで出直す羽目になる恐れがあるので要注意:
あいの風とやま鉄道線 高岡~富山・氷見線・城端線・万葉線・富山港線・地鉄市内線・高山本線 越中八尾~富山
あいの風とやま鉄道線 高岡~富山・万葉線・富山港線・地鉄市内線
富山地方鉄道
鉄道線・市内電車2日フリーきっぷで、黒部峡谷鉄道・立山黒部アルペンルートともども乗り回るのが、最安と思っていたが、2023年3月に発売された「宇奈月満喫きっぷ」も興味深い。有効期間は利用開始から30時間。地鉄電車全線(市内線は範囲外)に乗れて3,700円。(2日フリーきっぷは、電車全線+市内線(富山港線含む)に暦日2日間乗れて4,600円。)
冬季(12月~3月)は鉄道線・市内電車1日フリーきっぷ2枚の方が2日フリーきっぷよりも安くなるが、黒部峡谷鉄道や立山黒部アルペンルートは冬期運休なので、要注意。
黒部峡谷鉄道
途中下車しないのであれば、単純に往復乗車券を買うのが最安。1日で何度か乗り降りする予定があるならば、宇奈月~欅平往復運賃+40円で1日乗り放題きっぷが買える。
立山黒部貫光(立山黒部アルペンルート)
WEBきっぷで、早期購入割引あり。
JR東海・JR西日本では、「立山黒部アルペンきっぷ」が販売されている。
立山駅・扇沢バス停など現地で購入すると、意外と行列で待たされるケースもあるので、事前購入できる点はメリット。
万葉線
1日フリーきっぷ(900円)より全線単純往復(800円)の方が安い。親子連れや、途中降りて観光する場合などは、フリーきっぷ有利。
宿泊地
交通の要衝である富山駅・高岡駅周辺には、ビジネスホテル多数。地鉄沿線やアルペンルートである程度長時間の観光も組み込みたいならば、宇奈月温泉や、黒部峡谷鉄道沿線・アルペンルート内の宿泊施設も候補に挙げてもよいかもしれない。
富山県へのアプローチ
関東からは北陸新幹線か飛行機。アルペンルートそのものへの乗車が目的でなければ、経路としてはあまりに高額&低速。JRから転換後の旧北陸本線はまだ評価できるほど利用していないので、評価保留。
東海地域からは、高速バスが多分一番リーズナブル。高山本線でのアプローチまで含んだフリーきっぷを用いるなら、高山本線での富山県入りも悪くない。
関西からは、いまのところ特急サンダーバードで金沢まで来て、そこから新幹線か在来線が自然。北陸新幹線敦賀延伸と在来線の3セク化で、どう変わるか。
乗車計画の立て方
富山地鉄・アルペンルート・黒部峡谷鉄道
東からアプローチする場合、1泊2日で完乗可能。ただし、それなりに日が長い区間でないと完全には乗り切れないので、その場合は市内線や富山港線を残し、後日万葉線などと組み合わせて改めて乗りつぶすのが、得策。
富山地鉄の鉄道線は、電鉄富山を頂点としたA字型。両脚部分がかなり長いので、どちらかの終点で一泊する形にしたくなるが、宇奈月温泉(宇奈月)からは黒部峡谷鉄道、立山からはアルペンルートがそれぞれ伸びているので、「暗いうちに端点まで進んでおいて、翌朝帰ってくる」作戦はあまり奏功しない。北陸新幹線金沢延伸以前は、「アルペンルート+立山線」「地鉄鉄道線+黒部峡谷鉄道線」「地鉄市内線+α」で2泊3日の行程を組むことが多かったが、北陸新幹線黒部宇奈月温泉駅や、扇沢への中央高速バス乗り入れ便を使うことで、1泊2日での乗りつぶしが可能となった。
富山地鉄は、市内電車線も環状線の開通により富山駅を頂点としたA字型になったが、直後に富山港線を編入したため、富山駅を中心に3方向に路線が伸びる形となった。環状線開通前は、「富山駅前から両端への単純往復」が最適解で、都合の良い上滝・不二越線の列車がたまたまあれば、南富山~富山間を鉄道線に置き換えていたが、環状線の開通後は、富山駅から各方向に延びた線を往復しながら環状線を一周して富山駅に戻るパターンが最適解。環状線の循環方向が反時計回りのみなので、乗車順序も「岩瀬浜→富山大学→南富山駅前」か「富山大学→南富山駅前→岩瀬浜」の2択(富山大学から南富山駅前は直行せず都心線に乗り換え)。
ルートA:アルペンルート→黒部峡谷鉄道
(初日)八王子 8:33(あずさ5号)11:16 信濃大町 11:35(アルピコ交通バス)12:15 扇沢 12:30(立山黒部アルペンルート)15:47 立山 16:46(富山地方鉄道 立山線・本線) 17:51 電鉄富山
アルペンルートは、どの交通機関も一切待たずに乗り継いだ場合の最速。この通りに立山駅に着いて、スムーズにフリーきっぷを買えれば、15:50発の電鉄富山行き特急に乗れる可能性もあるが、繁忙期にケーブルカー1本分待たされることは(コロナ前には)よくあったので、この乗り継ぎが妥当なところ。(16:13発の電鉄富山行き普通列車もある。)
逆に、新宿駅西口発23:15の中央高速夜行バスを使うと、扇沢に5:23に到着。アルペンルートの始発まで2時間以上(繁忙期でも1時間以上)待たされるが、アルペンルートで途中の観光をしたり、富山から高岡まで足を延ばして万葉線などに乗車する時間も取れる。
(2日目)富山駅 8:30(富山地方鉄道富山港線)8:54 岩瀬浜 9:16(富山地方鉄道富山港線)9:54 富山駅 9:56(富山地方鉄道2系統)10:07 富山大学前 10:19(富山地方鉄道2系統)10:24 丸の内 10:36(富山地方鉄道3系統)10:45 中町/西町 10:54(富山地方鉄道2系統)11:05 南富山駅前 11:12(富山地方鉄道2系統)11:34 富山駅/電鉄富山 11:45(富山地方鉄道 本線・不二越線・上滝線)12:20 岩峅寺 12:27(富山地方鉄道立山線)12:44 寺田 12:49(富山地方鉄道本線)14:19 宇奈月温泉/宇奈月 14:56(黒部峡谷鉄道線)16:18 欅平 16:43(黒部峡谷鉄道線)17:58 宇奈月/宇奈月温泉 18:11(富山地方鉄道本線) 18:34 新黒部/黒部宇奈月温泉 18:48(はくたか574号)20:50 大宮
ルートB:黒部峡谷鉄道→アルペンルート
(初日)大宮 9:57(はくたか557号)11:51 黒部宇奈月温泉/新黒部 12:05(特急くろべ23号)12:22 宇奈月温泉/宇奈月 12:50(黒部峡谷鉄道線)14:12 欅平 14:37(黒部峡谷鉄道線)15:54 宇奈月/宇奈月温泉 16:12(富山地方鉄道本線)17:37 寺田 17:40(富山地方鉄道立山線)17:57 岩峅寺 18:00(富山地方鉄道上滝線・不二越線・本線)18:35 電鉄富山
(2日目)富山駅 8:15(富山地方鉄道富山港線)8:39 岩瀬浜 8:46(富山地方鉄道5系統)9:28 富山大学前 9:39(富山地方鉄道2系統)9:44 丸の内 9:52(富山地方鉄道3系統)10:03 中町/西町 10:09(富山地方鉄道2系統)10:20 南富山駅前 10:22(富山地方鉄道2系統)10:44 富山駅/電鉄富山 10:50(富山地方鉄道本線・立山線)11:55 立山 12:20(立山黒部アルペンルート)15:21 扇沢 15:40(アルピコ交通バス)16:15 信濃大町
9月ともなると、18:35電鉄富山着まで明るいかどうかは微妙。明るいうちに乗れなかった分は、2日目の立山行きに乗る前に乗れば良い(扇沢からのバスへの最終接続は、15:00立山発なので、充分間に合う)。
どちらのルートでも、富山地方鉄道利用は30時間に収まるので、「宇奈月満喫きっぷ」も利用候補。ただ、2日フリーきっぷとの差額900円は、市内線4回乗車の720円でほぼ埋まる。
番外編:「関西電力黒部ルート見学会」との組み合わせ
2023年度まで開催されていた関西電力黒部ルート見学会は、いくつかのスケジュールから選択して申し込み、当選すると欅平上部からの「上部専用軌道」などに乗ることが出来る。欅平から黒部ダムを結んでいるので、上述「富山地鉄+黒部峡谷鉄道+アルペンルート」のA字型の長い2本の脚をつなぐ形となる。ぐるっと一周するルートが出来て乗車プランの自由度が上がるように見えるが、「乗りつぶしのついで」に乗るのはなかなか難しい。
(参考:2011年8月に乗車した際の行程)
信濃大町駅前発0900扇沢駅前行き北アルプス交通0940-06着。朝食。
1000黒部ダム行き300形6台1016着。
黒部ルート見学は1030集合。ボディチェック後防煙マスクの説明等を受け、作廊までのバスの出発は1100。1132到着。
インクライン上部発1140インクライン下部行きB車1202着。黒部川第四発電所見学。
黒部川第四発電所前発1310欅平上部行き1345着。200mの竪坑エレベーターで約1分下降。
欅平下部発1400欅平行き1402着。ツアーはここで解散。窓口で予約していた宇奈月行きチケットを受け取る。
1437宇奈月行きEDR形機関車2両+トロッコ13両。2年1ヶ月(-1日)振りの乗車。1554+01着。
宇奈月温泉発1632普通電鉄富山行き14700形2両ワンマン。寺田までは2年1ヶ月(-1日)振りの乗車。1758稲荷町着。
1801普通岩峅寺行き10000形2両ワンマン。2年1ヶ月(-2日)振りの乗車。1807南富山着。
南富山駅前発1810富山駅前行き7023号車ワンマン1828到着。投宿。
2018年限りで、扇沢と黒部ダムを結ぶ関電トンネルトロリーバスが電気バスに転換され私の乗りつぶし対象からは外れているので、それ以前に比べれば乗りつぶしへの組み入れも容易になったかもしれない。
なお、本ルートは2024年度から「黒部宇奈月キャニオンルート」という一般旅行商品になるとのこと。乗車可能日が増えるのは喜ばしいが、前泊/後泊のいずれかが組み合わされたツアーのみの販売というのは痛し痒し。
万葉線+富山地鉄市内線(富山港線含む)+JR西日本
アルペンルート・黒部峡谷鉄道との組み合わせプランで、何らかの原因で全部乗りつぶせない、となった場合は、市内線(富山港線含む)をこちらのプランに回すことにして、鉄道部分の乗車に注力するのが良い。
とやま周遊2dayパスを使うと、富山~高岡間の旧北陸本線と、そこから伸びるJR各線(高山本線は越中八尾以北)、万葉線・富山地鉄市内線(富山港線含む)に乗れるので、富山県の残り路線をほぼ乗りつぶせるはず。
金沢方面から在来線で高岡に入り、高岡から伸びる各線を往復。その後、富山周辺の残り線区を乗りつぶしてから、高山本線で南に抜けるのがおすすめ。(もちろん、逆ルートもあり。)
万葉線と氷見線の乗り継ぎは、かつては高岡までいちいち戻ってこなくても「如意の渡し」で伏木駅~中伏木駅をショートカットできたが、2009年で渡し船は廃止。代わりに橋が出来たのでバスでショートカットする手もありそうだが、時間節約になるような乗り継ぎは難しい。
(プラン例;富山港線が残っていた場合)
金沢 8:49(IRいしかわ鉄道線・あいの風とやま鉄道線)9:29 高岡 9:43(氷見線)10:12 氷見 10:22(氷見線)10:53 高岡 10:59(城端線)12:04 城端 12:59(城端線)13:36 高岡/高岡駅 13:45(万葉線)14:34 越ノ潟 14:52(万葉線)15:39 高岡駅/高岡 15:47(あいの風とやま鉄道線)16:07 富山/富山駅 16:15(富山地方鉄道富山港線)16:39 岩瀬浜 16:46(富山地方鉄道富山港線)17:15 富山駅/富山 17:34(高山本線)18:02 越中八尾
金沢方面からのアプローチを前提としているので、上記プラン例は金沢を朝出発する想定で記載したが、前夜のうちに高岡まで来て高岡に泊まる、あるいは、朝金沢で北陸鉄道に乗ってから高岡に入るなど、出発時刻は適宜ずらすことになると想定される。高山本線以外は、ほとんど普通列車しか運転されておらず、運転間隔も安定しているので、上記プランの出発時刻がずれても大崩れはしないと考えてよい。ただ、会社が別になったせいか、あいの風とやま鉄道線と綺麗に接続する訳ではないので、一応下調べは必要。
関東や関西からのアプローチのしにくさを考えると、高山本線に乗る際にはしっかり岐阜まで(少なくとも他線乗り換えがある美濃太田まで)は日中乗車しておきたいところなので、ここでは富山から旧北陸本線を東に抜けた方が得策かもしれない。いずれにせよ、市内線の残り具合と、高岡出発時刻次第。
越ノ潟から岩瀬浜に抜けるコミュニティバスが、土日祝日のみ1日4往復(所要時間40分;運賃500円)走っているので、うまくタイミングが合えばここで時間節約が可能。ただし当然、高岡~富山は別の機会に乗る必要がある。
七尾(石川県)から氷見も路線バスで抜けられる。こちらは他社路線への乗り継ぎが発生するので、充分な下準備が必要。もちろん、金沢(津端)~高岡間の乗車機会も別途必要。
あいの風とやま鉄道線
富山県内だけでなく、旧北陸本線沿線(他私鉄も含む)の乗りつぶし(あるいは乗りつぶし計画の作成)をある程度終えたうえで、乗り残した旧北陸本線区間を日中に一気に走破するような計画を立てるのが良いと思われる(2023年9月現在)。
2023年度末の北陸新幹線の敦賀延伸で3セク区間がさらに伸びたとき、3セク各社(3社~4社)共同で何か乗車促進策が出るのか、それとも各社それぞれ地元私鉄と組んで新たな施策を打つのか、動向を注目したい。