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エンジニア採用市場の未来予想

先日Meetyの中村さんのnoteの記事を拝見しました。感想は「Meetyすげえ」です。

(Meety、日頃よりお世話になっています。ちなみに以下プレスリリースにあるカジュアル面談の解釈が人それぞれ。それ、本当にカジュアル面談ですか?という問題提起がすごく好きです。)

さて今回のnoteは、中村さんの転職・採用市場についての所感に共感するポイントが多く、思わず自分も発信したいなと思い、書き始めました。
(稚拙な文章です。ご容赦ください。)

僕はエンジニアと企業のマッチングサービス「Qiita Jobs」をつくっています。2022年現在、自分が携わっている転職・採用市場においてどんな未来を予想し、これから何が起きていくのかを想像して書いてみます。今回は採用側に絞って書きます。

対象読者

  • 主にエンジニア採用やデザイナー採用など、売り手市場にて採用を担当されている方

  • 候補者とコミュニケーションを取っている方・採用担当者

今回は採用担当者の方・採用に関わる方にお読みいただくことを念頭に文章を書いています。

いきなりまとめ

  • 今後は候補者と企業の繋がりが重要視されていくのでは

  • 中央集権型から自律分散型へシフト出来る企業が勝ち組になるのでは

以下に詳細を書いていきます。

想像している転職・採用市場の未来

端的にいうと、繋がりが重要視されていくのではないかと考えています。

doda転職求人倍率レポート(2021年7月)によると、技術系(IT・通信)≒エンジニアの転職求人倍率は9.68です。

特に売り手市場において、繋がりを軽視したりきちんとコストを投資出来なければ、今後より一層苦戦を強いられる可能性が高まるのかもしれません。

なぜ繋がりが重要視されていくと考えたのか、以下に記載していきます。

自社にマッチするエンジニアは多くない

エンジニア採用にスコープを絞って記載します。
突然ですが、自分たちが採用したいエンジニアは日本にどれくらいいるかご存知でしょうか?

やや雑ですが、さまざまなデータを利用するとざっくりと算出することが出来ます。すこし古いですが、IT人材白書2020を見てましょう。

日本には95.9万人のIT人材がいるという推計結果があります。

さらに、以下がそのうちの職種・レベル別の推計結果です。
仮ではありますが、エンジニアをアプリ系技術者と仮定します。となると、全体の38%、つまり36.4万人がエンジニアです。
ちなみに多くの企業が採用ターゲットとしている「自立して業務を遂行できる人材」以上の方は、およそ28万人です。

上記データを元に、言語や職種、転職意向なども掛け合わせて算出していきましょう。ここではエンジニア白書2021のデータを利用します。

例えば、Webアプリケーションエンジニアとして働かれている方は38%です。「自立して業務を遂行できる人材」で、現在「Webアプリケーションエンジニア」として働かれてる方は、28万人×38%=10.6万人です。

さらに、言語も見てみましょう。例えばRubyをよく使う方は398/2997=13.2%です。
「自立して業務を遂行できる人材」で、現在「Webアプリケーションエンジニア」として働かれており、「Ruby」をよく使う方は、28万人×38%×13.2%=1.39万人です。

最後に転職意向度を見てみます。例えば転職活動中の方は6.4%です。
「自立して業務を遂行できる人材」で、現在「Webアプリケーションエンジニア」として働かれており、「Ruby」をよく使い、「転職活動中」の方は、28万人×38%×13.2%×6.4%=890名です。

さらに居住地や年収などさらに属性データで自社に合う方を探すと、より少なくなっていきます。さらには、これまでどんなことをされてきたのか、今後どんなことをしていきたいのか、その方の経歴や意思なども鑑みれば、もっと少なくなっていく…
転職活動中の方に絞ると、今回募集するポジションで声をかけたいと思う人は世の中に100名いらっしゃるかどうか、なんてことも。

その100名がどのサービスに登録しているのか、あるいは登録していないのか。登録していたとしても詳細情報を入力していないこともあります。
このように、声をかけられる人はより制限されていきます。

大雑把な推定人数ではありますが、このように考えると1人1人とのコミュニケーションを疎かにしてはいけないだろう、ということはわかります。

にもかかわらず、努力が質ではなく数に向いてしまっている

にもかかわらず、巷ではあまりよろしくないコミュニケーションが生まれていることを目にします。代表的なよろしくないコミュニケーションの1つは、数重視のスカウトです。

採用担当者目線で言えば、返信率は何%で、そのうち応募率は…と各フェーズの遷移率を想定し、逆算して送信数を設定するのはわかります。

ですが、この設定数値の努力目標を数にする企業が多いなぁという印象を受けます。さらに言うと、返信率の設定が低い会社が多いです。そのため、送信数が増えて、その送信数を効率的にするための悪手が生まれてしまっているのでは…(僕も採用担当していたので、返信率を高く設定する怖さ、本当によくわかります!)

ひょっとすると、数重視となっている原因にある「想定返信率を低く設定している」があまりよろしくないコミュニケーションを生み出しているんじゃないかな…?と想像しています。つまり、質向上に目が向かない状況になってしまっているんじゃないかなと。

例えば返信率が10%だとします。100名に送信して10名の方から返信が来ました。一方で90名とは繋がれませんでした。
今後会社としてまた同じポジションを募集するかもしれないのに、この状況のままで良いのでしょうか?

もしかしたらタイミングが悪かっただけかもしれません。しかし、今回のコミュニケーションを機に、良いタイミングを逃しただけでなく、その90名は今後も返信してくれない可能性も大いにあります。

もちろん新たな候補者が生まれる可能性は高いですが、今世の中にいらっしゃる候補者との繋がりを、自分本位のタイミングや効率性を優先するあまり、蔑ろにしてしまって問題ないのでしょうか?

質を担保するプラットフォーマーの登場

そんな中、質を担保するプラットフォーマーが登場しました。YOUTRUSTです。
YOUTRUSTのすごさは、繋がりがある人や知り合いの知り合いからスカウトが届く仕組みを生み出したことで、「質」を担保したことだと個人的に思っています。

さらにはMeety。Meetyはカジュアル面談を定義し、採用以外のシーンにも広げたことは素晴らしいアプローチだと思います。

これまでカジュアル面談は、転職活動の入り口のように利用されていましたが、Meetyが誕生したことにより、転職を検討していない人も気軽に各社に話を聞けるようになりました。繋がりが転職文脈以外でも活発に生まれるようになりました。

さらに、テーマを出会いたい人に向けて設定することで、スカウトではありませんが、繋がりを多く生み出すきっかけになると思います。

これから何が起きていくのか

ここまでに以下のようなことを書いてきました。

  • エンジニアはそれほど多くない

  • にも関わらず、数を追っているといずれ数に苦しむことになる

  • 数ではなく質を高めて、繋がりを多く生み出そう

  • 繋がりを生み出すプラットフォームに流行の兆しがある

では、なぜ繋がりを多く生み出すことが良いのか。簡潔に言うと、サービスに依存しなくて済むからです。この中央集権型から自律分散型へシフト出来る企業が勝ち組になるのではと想像しています。

アプローチする人を増やすために、サービスに依存するのはもう限界かもしれない

アプローチする人を増やす/エントリーしてくれる人を増やすために、あらゆるサービスを利用し、チャネルを増やします。サービスに依存し続けると、以下の問題が起きます。

  • アプローチする人を増やせるかどうかはサービス次第

  • 費用がかかり続ける

  • サービスの都合に踊らされる(UI/UX、表示順位、ユーザーに届けられるコンテンツの制限など)

サービスをつくる側の人としては自己否定となりますが、サービスに依存すればするほど、そのサービスの成長や都合が、企業の行動や結果に強く影響するようになってしまいます。

そして、エンジニア採用のスカウトサービスにおいて「アプローチする人を増やす」は限界を迎えているように思います。つまり、数の限界です。

まさに今、さまざまなエンジニア採用支援サービスが出ていますが、各社「アプローチする人を増やす」ために契約する企業が多い印象です。以前まで利用していたサービスはすでに当たりきったので、次は別のサービスを…と乗り換えている印象を受けます。
しかし、実際蓋を開けてみると、すでに連絡したことのある人ばかりだったり…

これまでにどれくらいの方に連絡をし、どれくらいの方から返信が来なかったのか?
その数によりますが、もうすでにほとんどのターゲットエンジニアに声をかけている可能性があります。となると、アプローチする人を増やすためにサービスにずっと依存し続けるのは、もう限界かもしれません。

これからは、サービスで繋がりを生み、その繋がりが生まれた方に対して段階的なコミュニケーションを取ることが必要なんだろうと思います。参考となるのは、THE MODELです。

コミュニケーションをもっと段階的にする

https://www.salesforce.com/jp/hub/sales/the-model/ より引用

上記を参考とすると、今マーケティングフェーズの来訪者がいわゆるサービス登録者であり、まだ見込客ではない人たちです。

その方々に対して、多くの企業は採用文脈でのスカウトやカジュアル面談依頼、つまり案件化を狙ってしまっています。(転職を考えていなくても…と言いつつ、転職サービスから届くスカウトはどうしても転職文脈が伝わってしまいます。)

サービス登録者(来訪者)から一気に案件化(候補者化)を狙うのではなく、その間にある繋がり(見込客)を目指していくのはどうでしょうか。

Meety中村さんも、Meetyの利用として以下のような話をしています。

Meetyのカジュアル面談には、ピュアな雑談目的のコンテンツもありますが、採用を目的としたコンテンツにも”Meety浅め””Meety深め”と2種類あります(社内的に勝手に使っている分類です)。
”Meety浅め”とは、Meetupや勉強会のテーマになるような「技術・ノウハウのシェア」や「同職種での交流」が内容のコンテンツで、目的は接点や関係をつくること。”Meety深め”とは、会社の情報を織り交ぜた「事業・組織の紹介」や「仕事内容の紹介」などのコンテンツを指しており、目的はファン作り、訴求機会となっています。

https://note.com/3kkabizen/n/n0f3eedb53fa2#34b2ade3-58b9-4dcd-878d-580f130e6335 より引用

まず「技術・ノウハウのシェア」や「同職種での交流」が内容のコンテンツを用意したり、スカウトでも採用文脈ではなく、技術的な相談や交流を目的としたコミュニケーションをとり、まずは繋がりのある人を増やしていく。これがいわゆるタレントプールだと思います。

サービスのタレントプールに依存するのではなく、そのタレントプールからいかに繋がりを生み出し、自社でタレントプールを作れるか。そしてその方々に適切なタイミングで良いコミュニケーションを取っていけるか。

  • 今すぐに採用したい

  • タレントプールなど長期的なことよりも短期的な採用を求められている

こんな意見もきっとあると思います。だからこそ、今すぐに採用したいときに、サービスのタレントプールから声をかけるよりも、すでに繋がりのある自社のタレントプールに連絡を取り案件化(候補者化)に導く、これこそが今後のスタンダードになるのではないでしょうか。

コミュニケーションの齟齬に注意

とはいえ、そのような繋がりの文脈でスカウトを送るとなると、「スカウト」の認識に候補者と齟齬が生まれているかもしれません。
むしろ現時点ですでに齟齬は生まれているようにも思います。以下のツイートは非常にわかりやすく、引用させていただきます。

もうすでに「スカウト」という言葉の定義が企業と候補者で違います。企業の基準でスカウトを送ると、以下のようなことを招いてしまいます。

「良かったら応募して(受かるかどうかは別)」という数の目標で突き動かされた企業のスカウトが、候補者のスカウトの認識とずれ、齟齬を招いている例だと思います。
(この齟齬はサービス提供者として解決していきたいと考えています。スカウトという言葉の意味を再定義して、候補者と齟齬をなくしていきたい。プレミアムスカウトと通常スカウト、みたいなものがありますが、あれは企業のスカウトの定義に合わせており、候補者目線ではないなと。)

繋がり(見込客)を目指すにしても、まだこのトレンドに合わせた仕組みのあるサービスは少ないと思います。どうしても採用文脈の「スカウト」として候補者に届いてしまうため、齟齬は生まれてしまいます。きちんと候補者と齟齬を埋めるため、文章で「まずは採用文脈というよりも情報交換がしたい」などと補足する必要があります。

現に転職ジャーニーは変わっている

ここまで繋がりの重要性を説いてきました。さらに繋がりの重要性を把握するにあたり、このツイートはとても印象的でした。
この転職ジャーニーはエンジニアでも当てはまっているように思います。

つまり、転職を考えたときに選択される企業は非常に限定されているということです。プレファレンスを高めるにためには、転職活動前に接点を持っておく、繋がっておく必要性がこれを見てもわかります。

@tsuyoshi_osiire さんのツイートを抜粋&引用させていただきました

転職を考えている人に繋がろうとする、はもう遅いことがわかります。
転職を考える前の人と繋がりを持ち、そのタイミングで想起してもらう、声をかけてもらう、用意しているイベントに参加してもらうことが必要です。

最後にもう一度まとめ(詳細)

とても長くなってしまいましたがエンジニア採用市場の未来予想、まとめると以下です。

今後は候補者と企業の繋がりが重要視されていくのでは

  • エンジニアはそれほど多くない

  • にも関わらず、数を追っているといずれ数に苦しむことになる

  • 数ではなく質を高めて、繋がりを多く生み出そう

  • 繋がりを生み出すプラットフォームに流行の兆しがある

中央集権型から自律分散型へシフト出来る企業が勝ち組になるのでは

  • アプローチする人を増やすためにサービスに依存するのは限界

  • 返信数を追うだけでなく、返信来なかった数とも真剣に向き合おう

  • コミュニケーションを段階的にしよう(候補者化を狙わない、まずは繋がり)

  • 自分たちで繋がりのある人(アプローチする人)を確保し、サービスのタレントプールに依存しない状況へシフトしよう

  • コミュニケーションの齟齬をなくそう

  • 転職を考えている人に繋がりをリクエストしていては遅い

  • 転職を考える前の人と繋がり、考えたときに自分たちでアプローチできるようにする

サービス提供者として、未来をリードし、自分たちの手で良い市場をつくるんだ、という気概でやっていこうと思いました。それと同時に文章化する難しさを感じました…。

またQiitaを運営している我々としては、このコミュニティをより良い場にするために、企業の力を借りながら一緒に良いユーザー体験を作り出したいと思います。逆に、コミュニティを毀損する企業の行動には毅然とした態度・対応をしていきます。

(宣伝その1)Qiita Jobsでもカジュアル面談企画を始めました!

Qiita Jobsでもこれからの未来に向け、候補者と企業の繋がりを生み出す企画を準備しました。Meetyにならい、僕たちも一緒にカジュアル面談を採用だけに閉じないものとしていきます。

ちなみに候補者にとっては、新しい世界を見つけるきっかけとしてカジュアル面談を利用してもらいたいと思っています。

これまでQiitaは、 記事を通じてエンジニアとエンジニアがつながり、 技術課題を解決してきました。 そしてQiita Jobsでは、 また異なる手段でエンジニアの方々のキャリアに対する課題を解決したいと考えています。
昨今、 カジュアル面談は転職のシーンにおいて良く行われていますが、 転職に限らない場合でもエンジニアとしての新しい世界を見つけるきっかけとして有用なのではないかと考えました。 面談に参加した結果、 新たな活躍の場を見つけて転職する人もいれば、 不安が解消されて今の環境でより一層努力する方もいます。 またフリーランスや独立する方など多様な選択肢が生まれます。
業務の相談、 知見の共有、 職場探しなど、 どんなことでも構いませんので、 ぜひカジュアル面談を通して新しい世界を見つけてください。

https://plus.jobs.qiita.com/casual-talk-project/ より引用

そのほか、世の中に必要とされるかもしれないことを小さくはじめ、ニーズを確かめながら大きく育てていきます。

(宣伝その2)未来を一緒に想像し、Qiita Jobsのプロダクト改善にご協力くださるプロダクトアドバイザーを募集しています!

契約企業限定ではあるのですが、この未来に共感いただいたり、異なる未来を想像されていれば、その未来についてディスカッションしながら、Qiita Jobsについてご意見してくださる方を募集しています。

(まだまだ至らない点も多いため、未来だけでなく現時点で使いづらいポイントの改善などにも力を入れてまいります。)

もし興味ある方がいらっしゃれば、以下より詳細を確認いただき、ご応募ください!2022/01/10(月)まで募集しています!



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