全赤サンマの押し引き 実戦編

本記事では前回の記事の内容を踏まえて、私自身の雀魂サンマの牌譜画像(視点は必ずしも私のものではない)から、仮にこれが全赤サンマだったらどうするかという目線で打牌選択と押し引きを解説する。実戦のファジーな押し引きのイメージを掴む参考にしていただけると幸いである。
もちろん、この選択はおかしい等のツッコミも歓迎だ。

なお、私の推奨する打牌選択は、広く構えて危険牌を押すというより、頭を落とすなどで回し打って、あわよくばを狙うものが多い。
宣言牌が安全で流局を無視できるとき、追っかけリーチの勝率はざっくり両面テンパイなら60%、愚形テンパイなら40%程度だろう。しかし、両面テンパイを取るために放銃率20%の牌を切らないといけないならば、それだけで和了率は50%弱まで落ちる。
それでもテンパイ打牌なら大抵は危険でも広く受けられる打牌選択が正解になるが、イーシャンテン以下の段階で多少の受けの広さや最終形の強さを目当てに押すのが得になるかはかなり、微妙なケースが多い。
当たったらあがれない、あがるために押しているという点を強調したい。

なお、大半の読者同様、私は手出しツモ切りをそこまで真面目に見ていないことが多いので、特に断りのない限り、リーチ宣言牌以外の手出しツモ切りを見ていない前提で議論を進めることとする。

前提とするルールは以下のとおりとする。
東南戦 
トビアリ
ツモ損なし 打点は30符固定で下表のとおり。

点数表

一本場1000点(ツモった場合は、二人から本場に対応する点数を得られる。子の1本場満貫はロン9000、ツモ4000・6000となる。)
35000点持ち 40000点返し(オカが15000点ということ)
ウマ:1着+30000点、2着-10000点 3着-20000点
王牌は8枚。ドラ表の隣まで取り切り。北が4枚抜かれた場合、ドラ表を含めて残り6枚まで牌がツモられる。
北は抜きドラ、手牌で使用した場合は役牌かつドラ扱い
5は全てドラ扱い。赤5はドラかつ祝儀牌。
一発赤裏は5000点相当の祝儀。

それでは、ここからが本番だ。画像を見て、自分なら何を切るか考えながら読んでいただきたい。

解答:打南
完全イーシャンテンのところにリーチを受けて無筋の5sを引いてきた場面。押すなら2s or 5s。打点は大したことないが形は良いので押す価値はそれなりにあるのだが、残り筋がやや少ないのがネック。
手出しツモ切りを見ていなくても、6sと7sが3枚見えで7sの切りがやや早いことから58sが出てきにくいのはわかるだろうし、手出しツモ切りを見ているなら7s→9sの切り順でさらに58sが否定される。
58sが否定されると、残り筋は25p47p58p25s36sの5本だ。安牌で回れるのに親リー相手に20%近い放銃抽選を受けて、なおイーシャンテンでも許されるほど価値の高い手ではないだろう。南を切っても手は死なないので、まずは大人しく南を切っておこう。次順でテンパイならカン4sでも追っかけ。5sや7sを引いたらガチ押しの構えで。
なお、もう少し通っている筋が少なければ押しに傾くが、仮に押すなら2s。完全イーシャンテンにとって暗刻ができたときに出ていく3sがキツく、2sと2で打つ方がもちろん安いし、南が1枚ずつ見えていて縦フォローの価値が落ちている。また、5sは高打点の種にもなる(4s以外にも5sや7sも嬉しい)ためだ。
手組みの問題として、仕掛けの効かない形なら、縦フォローが2枚見えたら完全イーシャンテンより両面を固定して、安牌を持ったり、役牌を絞ってスリムに構えるのが全赤サンマの基本だ。前々巡で2sを切って共通安牌かつピンフや5受けに繋がる7sを持っておけばこんな面倒くさい選択自体がなかったのに…
なお、全赤サンマにおける役牌の絞りについてはこちらの記事を参照いただきたい。


解答:打1s
ドラ5のイーシャンテンとはいえ、所詮はチートイ。受けも広くないし、テンパイしても勝率が高いとは言いがたい。また、リーチは抜きドラ0とはいえ、自分の手に5が一つもなく、捨て牌の雰囲気からも、5の固まった手が出てきてもおかしくない印象だ。
しかし、ドラ表の隣まで取り切りの全赤サンマは19~20巡目まで続く。現状は折り返し地点を超えたばかりという感じで、ただオリても流局まではまだ先がそれなりに長い。
親に明確にやる気がありそうなら、親に任せてオリてよさそうだが、親の捨牌はそれほど濃くないし、リーチ一発目の安牌1m切りからは今のところやる気があるのかどうかよくわからない。
これを踏まえて、1sを切って押すか、安牌を切ってオリるかの二択だ。
現時点で通っていない筋は8本。結構残ってる。
割と安全な発や白より引っ張られた2sは関連牌っぽいが、ドラ3sで2sが捨て牌とドラ表で2枚見えたところから、223sの形をテンパイまで引っ張ることはあまりない。また、2切れの1sはシャンポンや単騎にもまず当たらないので、無筋としては安全な部類だ。
とりあえず1sくらいは押してもよいのではないか。現状は通りやすい無筋なら押せるが、ガチな無筋は押せないといったところ。
方針としては次に789sを引いたら即リーでおっかけ。3467pと3456sを掴んで789sが現物になってないならベタオリくらいだ。
なお、天鳳や雀魂ならこの牌姿はオリだろう。


解答:打8s
余裕で押し。最終的に5sが出ていきそうな牌姿で先に8sを押す感触は悪くない。58sに刺さったら5sで当たらなくて良かったとポジティブ思考で。


解答:打3s
親番につき基本は押し。
6p を切りたいのは山々だがさすがに受けの広さも切る牌の安全度もかなり差がある。
リーチに対して押し返すときは打点よりあがりやすさ優先だ。ここでのあがりやすさとは、切る牌の放銃率も含めた総合的なものだ。
なお、この手だと5pを切ってしまっているので、6pが出たら腹をくくってカン2sのポンテンを取るが、仮にもっと普通の手順でこの牌姿だったなら、6pのポンテンは取らない。出ていく牌がキツく、打点が下がる割にテンパイ形が悪い。6pを残せば危険な6p周りのツモを吸収できるメリットも見逃せない。


解答:打2p
リーチを受けてターツオーバーの形。
二向聴だが、親番につき基本方針は押し。全赤サンマの親は二向聴からでも平気で押せる。
何の制約もなければ、縦の手も見て68pを外したいが、リーチに対してそれはやりすぎだ。
仮に第一打の4pのまたぎが薄いとすると残りの筋は、58p69p14s36s47s58s69sの7本、2sをまたぐ14sが少し薄いとすると6.5本くらいのイメージか。68pを外したら、2つ合わせて25%以上は当たりそうだ。
全赤サンマの親は放銃を恐れる必要がないといっても、それはあがるために押すことをためらう必要がないという意味であって、最初に述べたとおり、そもそも放銃してしまったらあがれないのだから、放銃回避は重要だ。
一般論として、ターツオーバー形から押し返す時に落としたいターツが2枚とも無筋は親であっても相当にキツい。可能な範囲で迂回したいところ。
この形なら何となく白を落として回し打ちする人も多そうだが、私の推奨は2pだ。
他に切る牌がいくらでもありそうな第1打で、344から4を切る傾奇者はそうそういない。
2pは相当通りそうだ。ここは少し欲張って、白ポンで手を進めることを見据えた2p対子落としを正解とする。
なお、現状は62000点持ちのトップ目だが、全赤サンマにセーフティーリードの概念はほとんどないに等しい。親番さえあれば逆転はいくらでもあるし、素点も大事なので、ここではフラットな状況と押し引きの基準を変える必要はほとんどない。


解答:打1p
手は安いが親で両面テンパイ。スジが残り2本になるか残り2巡くらいまでは止める牌はない。
余談だが、捨て牌読みをすると、6pは普通に考えれば関連牌だが、5や7を切って6をくっつきテンパイや単騎候補で持っていたとは考えにくい。7が切れていて5566からのダブルメンツ落としもない。消去法で宣言牌の6pはヘッドレス形から暗刻切りが濃厚だ。ヘッドレスだったなら223pから2pを切ることも、1p絡みのシャンポンも考えにくいので、1pはだいたい通りそうだ。空切りやスライドからの実質ツモ切りリーチのケースもあり、絶対ではないが、この1pならもっと弱い形でも余裕で押せそうだ。
しかし、読みとか関係なくこの手はとにかく押し。


解答:打1p
方針は押しだが5p切りは保留でいい。次順58sを引いてテンパイしたらペン3p待ちでリーチ。
一発目ということもあるし、5pを残せば4567pなどを吸収して、結果として手が高くなるかもしれない。いきなり5pをカチこむのはちょっとやり過ぎ感がある。
なお、次順で6p引きはフリテンが残ってもやむなしで1p切り。フリテンで張っても元気よく追っかけリーチ。フリテン両面>愚形はサンマの基本だ

次は少し変則で、下家が中を切った段階で鳴くかどうか、鳴くとすれば何を切るか考えていただきたい。

解答:中ポン→打2p
1pが3枚飛んでピンズが割と苦しい形。かなり通りそうかつ、テンパイになる受けの最も多い2p切りでよさそう。
スルーはちょっと弱気すぎの感あり。
ただし、初牌の中を切った親はある程度はやる気がありそう。この程度の切りでは親の手の進行度は評価が難しいが、両無筋など濃い牌を切っていたなら、親リーを想定してかなりスルーに傾く。


解答:打1s
まっすぐ行くなら8sで、8s自体は余裕で押せるのだが、8sを切った後に出ていきそうな5sがかなりキツい。
1sを切って、安牌の中を挟んで宣言牌3sリーチならば3は明らかに関連牌だ。334や355からの3切りが強く疑われる。
さりとて8sを切って5sが切れないだと何のために8sを押してるのかわからない。
とりあえず5sを切らない手組なら1s切りが最も手広く、1s自体も安全なので、こちらを切って押していく。


解答:打南
花×2のリーチを受けて二向聴。しかもドラは5sだ。ダブドラのときは手が高くなりやすく、このリーチは倍満くらいは余裕で出てくると思った方がいい。
まっすぐ行こうとするとテンパイまでに最低でも無筋3本を押すことになる。これはキツい。
また、気になるのは親の動向だ。2s1p(1p切りはリーチ前巡)と無筋を押しており、普通に前に来ている。
南を落としてパンパンになったところに親リーもかなりキツいので、8sもないことはないが、サンマでこのくらい整った形から完全に手を崩すのは諦めが良すぎる印象だ。
横移動か1筋押すだけで追いつけることを祈りながら一旦は南を切っていこう。


解答:打3p
親リーの一発目でこちらは仕掛けこそきくものの、愚形確定のイーシャンテン。モロヒの3pを押すかどうかだが、このくらいは押しだろう。全赤サンマで246とあればカン5受けに取ることが多く、モロヒのカン3や7は比較的通りやすい。1pの切りも早く、ペン3pに当たりにくいのも少し押しやすい要素。現状で親は抜きもないし、まあまあ通るのでこのくらいは頑張ろう。1sと5sは出たら当然ポンして親と勝負だ。
抜きドラが2以上だと和了率重視のカン3pのようなパターンも増えてくるので、1sを切って様子見くらいになるイメージだ。

最後に頻出の打牌選択について解説する(頻出といいつつ適当な牌譜を探す気がおきなかった)。
子のリーチを受けた前提で、以下の牌姿、6sは現物、5sは両無筋とする。
東一局 西家 原点 10巡目 ドラ北
123556s22245688p 花1
要するに危険な5を切って両面に取るか、安全牌を切ってシャンポンに取るかの選択についての解説である。
結論としては、基本は安全牌切りのシャンポンリーチで良さそうだ。
まず、リーチ成立後の勝率はざっくり両面60%、シャンポン40%程度だろう。
仮に両無筋の放銃率が25%とすると、両面の勝率は75%×60%≒45%となり、そこまで愚形と変わらない。このくらいになるとシャンポンなら打点が高いメリットとほぼ行って来いか、シャンポンが勝るくらいだろう。ざっくり放銃率20~25%くらいがシャンポン受けの損益分岐点だろうか。
また、白ポッチありのルールで白ポッチが生きているなら、愚形が相対的に強くなるし、5に祝儀牌が残っている場合もシャンポンの実質的な打点が高くなり、よりシャンポン有利になる。このように実戦的にはシャンポンを有利にする要素が多いので、迷ったらシャンポンくらいが正解になりそうだ。
一方でシャンポンの待ちが2枚以上飛んでいるケースならばシャンポンの勝率が著しく低くなるので、だいたい両面受けが正解になる。また、5が片筋の場合は原則として勝率重視の両面受けが正解だろう。

最後の問題が象徴的だが、やはり放銃抽選が多くなると多少の待ちの広さやテンパイのしやすさの利が以外とあっけなく消し飛んでしまう。通常の四麻にも通じる理屈ではあるが、サンマは無筋の放銃率が絶対的に高いため、相手の攻撃に押し返す過程で切る牌の安全度の重要性は四麻以上だ。
結果として、全ツでもベタオリでもないぼんやりした回し打ちの重要性が高まる。
このサンマ感覚に馴染んでいない読者の方は、「当たったらあがれない」このフレーズを頭に刻みつけてサンマの押し引きを見つめなおして欲しい。
次回はリーチ判断についての記事を作成するつもりなので、気になる方はチェックいただけると幸いだ。

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