All Last One Chance! の解剖

この投稿は「MOSAIC.WAV Advent Calendar 2021」に向けた文章です。
https://adventar.org/calendars/6530

始めに

こんな投稿に目を通す皆様は十二分にご存じかと思われるが、MOSAIC.WAVの歌詞は韻の踏み方がとても素敵だったり、歌詞に込められた意味がまるでパズルのようにハマっていったり、と言うかそもそも歌詞自体がパズルだったりと語るに尽きることが無い。
その中でも私が特に好きなのが麻雀を題材にした楽曲である。ただ専門用語を歌詞にいれるだけでそれっぽくなるところをそこはMOSAIC.WAV。オケの楽器数に負けず劣らずのふんだんな意味をひとつの歌詞の中に詰め込んでいて何度聴いても新しい発見がある楽曲へと仕上げられている。
今回はその麻雀ソングの数ある中からひとつ「All Last One Chance!」の歌詞に込められた意味を紐解いていきたいと思う。
尚、タイトルは「ジョークの解説はカエルの解剖に似ている。」という名言から取っている。私の拙い文章でこの素晴らしい楽曲を殺してしまう事への一抹の不安はあるが、きっとこの程度のことではこの曲の輝きが色あせることは無いと信じて解説していきたいと思う。

・・・なんて書いてる間にカレンダーを見てみると、前々日:み~こさん。前日:かやぴー。という公式2大投稿の後にこの文章を公開することになってしまった。なるほど、これは解剖ではなく(筆者の)処刑か。諦めて断頭台に上ろう…

※注意、説明

  • 以下の解釈は筆者の独断と偏見によるものであり、公式とは何の関係もございません。

  • 麻雀のルールについては分かり易さを優先するため正確でない表現も含まれています。

  • 歌詞は旧公式サイトのshortバージョンより引用しています(新公式サイトからでも視聴できます)。CD実家に置きっぱやったんや…というか歌詞全部載せたらもしかしなくてもSampling Free案件か?

  • この部分の解釈はこうなんじゃないか、とかここにはこんな意味も含まれている、と言った指摘はコメントに投稿して頂けると筆者が喜びます。皆で聴き込んでエ〇ァ並みに深読みしよう!

基礎知識

解説を始めるにあたり知っていた方が良い麻雀の基礎知識を記載しておく。一度でも麻雀を遊ばれた方は飛ばして頂いて問題ない内容である。逆にもっと詳しく知りたい方はWikipediaを参照してほしい。

基本の流れとルール

  • 基本的に4人一組で行う。

  • 各自が13枚の牌(はい)を持った状態で反時計回りに1牌ずつ麻雀卓(山と呼ぶ)から引いて1牌麻雀卓(こっちは河と呼ぶ)に捨てていく。

  • 同じ絵柄、もしくは並び数字(トランプで言うところの階段)で3枚一組を作っていく。

  • 3枚×4セット+2枚一組の14枚を揃えると上がり。この時の牌の組み合わせ(役と呼ぶ)で点数が決まる。揃えるのが難しいほど点数が上がる。

  • 1つの麻雀卓の中に同じ絵柄の牌はそれぞれ4枚ずつ存在する。しかし1回のゲームの中で全ての牌が引ける訳ではない(つまり山を最後まで引いても出てこない牌が存在する)。

大体これぐらいで十分である。残りは解説の中で紹介していくので早速歌詞を見ていこう。

歌詞解説

立直一発門前清自摸和平和断幺九 満貫8000点
河底撈魚一盃口混全帯幺九三色同順 跳満12000点

  • 立直一発・・・
    役の名前(複数)。役を複数揃えると加算されていく。
    ちなみに役の中身は、初心者はまずこの上がりを目指しましょう、と言ったかたち。

  • 満貫
    点数の通称。役の数がある数以上になると呼び名がつく。呼び名がついている点数の中では一番下位。

  • 河底撈魚・・・
    役の名前(複数)。立直一発・・・と大よそ逆のかたち(語弊有り)になっている。

  • 跳満
    点数の通称。満貫の1個上(跳ねた)ので跳満。

冒頭のWITCHバースト・・・は割愛してここから解説。
文字で書けばこの通りだが実際に聞くとみ~こさんの(軽い)高速詠唱が耳に馴染んで離れなくなること請け合いである。

訳もないのに ついカンじちゃう
ポカポカ お風呂あがり 裸で待ってる(対々和)

  • カン
    同じ絵柄を4枚(全て)揃えた時に宣言すると、4枚を1セットとして扱う+ボーナスが出る。自分で4枚揃えても良いし3枚揃った状態で誰かが捨てた牌を拾ってもなれる。

  • ポン
    同じ絵柄を2枚持った状態で誰かがその絵柄を捨てたときに宣言すると、それを拾って3枚セットにできる。この時セットにした牌を全員に公開する(カンの時も同様)。

  • フーロ(副露)
    他人が捨てた牌を拾って3枚セットをつくること。


  • 裸単騎。ポン等でフーロした牌はそのゲーム中入れ替えることができなくなる。なので4セットともフーロで作ってしまうと自由に捨てれる牌が1枚(+山から拾う1枚)になってしまう。この状態で上り牌を待つことを裸単騎(裸)と呼ぶ。

  • 対々和
    刻子(コーツ:同じ絵柄3枚もしくは4枚のセット)を4つ作って上がった時の役

Aメロの出だしからこれである。ぱっと見エロゲっぽい歌詞(注:エロゲではない)から中身を読み解けばバリバリ麻雀の解説が入っている。ここで訳をヤク(=役)と読み替えると、
「ヤクもつかないけどポンカンポンカンとフーロしていって裸単騎から対々和で上がり」
となる。この30数文字の中に恐ろしいほどのダブルミーニングである。

メンツがつぶれて 頭にキタ!って
そんなタンキじゃ地獄でしょ?
シロウト まるだしね(字一色)

  • メンツ(面子)
    3枚1セットの呼び名。


  • 雀頭。2枚1組の呼び名。

  • キタ(北)
    字牌(ツーパイ:文字が描かれてる牌)の一種。方角が字牌になっており他に東(トン)南(ナン)西(シャー)もある。北の呼称は「ペー」。

  • タンキ
    単騎待ち。あと2枚一組が揃えば上がりの状態(待ち)。裸単騎はこれの一種。

  • 地獄
    地獄待ち、地獄単騎とも。場の中に2枚出ている牌で待つこと。同じ牌は4枚しかないので必然最後の1個を狙ってることになる。

  • 字一色
    字牌だけで上がるとつく役。ちなみに役満(最も点数が高い役)である。

個人的に1番好きな節。
メンツ(3枚セット)から2枚捨てていって(潰して)残りが出来上がった場合、アタマ(2枚組)は残りの1枚と最後の1枚で作ることになる(入れ替えても良いのだが)。その単騎待ちは地獄待ちですよね?シロウト丸出しですね。という他人の性格への感想に見えてやっぱり麻雀の解説になっている。しかも(感情の)頭に来た、(面子が)雀頭に来た、雀頭に北、とトリプルミーニングまでこしらえられている。凄まじすぎる。一体どういう思考回路を形成すればこんな歌詞を作れるのか本気で分からない。しかもこんな状態になってるのに字一色で上がっているのも恐ろしい。

そんなときは そんなときは
夢積めるだけ積み込み
次の一発 必ずこの手ににぎるよミラクル
「シューティングスター!」

  • 積み込み
    イカサマ(不正行為)の一種。山を作るときに意図的に牌を並べる行為。

  • 一発
    立直(リーチ:あと1枚揃えば上がりだと宣言すること、行うと役がつく)した後で次の自分の手番が終わるまでに上がるとつく役。

ついに魔法(イカサマ)の登場である。シューティングスターというのはゲームの中でのスキルの一種らしく、テンパイ(あと1枚揃えば上がりの状態)時に上がり牌を引けるというもの。まさに積み込みの賜物であるし立直しておけば一発もつく。

魔法つかったっていいじゃん!(いいじゃーん)
魔法で勝ったっていいじゃん!(いいじゃーん)
出会った証を刻もう すぐに君だと分かるよ「オプティカルタイル!」

  • 魔法
    この曲中では主にイカサマのこと。MOSAIC.WAVにはいろんな魔法がある。

  • ガン牌
    イカサマの一種。牌に印をつけて裏向きでもどの牌か分かるようにする手法。

ここは読んだままである。何か良い話っぽく書いているがやってることは完全にイカサマである。

最強のコンビネーション(やるじゃん!)
目と目でアシスト   (だめじゃん!)
ピンチになったら全力で「ダイレクトアタック!」

この部分には特に麻雀用語というのは無い(と思ってる)。コンビ組んだり目配せしあうのは麻雀に限らずだし。
オプティカルタイル、ダイレクトアタックもゲームのスキル名だと思われるが実際にプレイしたことが無いので判別がつかない。もし詳しい方がいらっしゃったら解説して頂けるとありがたい。

あー 昨日のケーキバイキングみたいに
選び放題だったらいいなとか思いながら
今日もパイまみれなの

ここも特段用語は無い(と思う)。強いて言えばパイがかかっている位。
バイキングみたいに選べたらどんなに良いことかと私も思います。

白發対々和小三元混一色混老頭嶺上開花三槓子 数え役満 親の48000点
「16000オーーールッ!!」

  • 白發対々和・・・
    役の名前(複数)。区切って表記すると
    白、發、対々和、小三元、混一色、混老頭、嶺上開花、三槓子、となる。

  • 数え役満
    役を複数揃えると加算されていき、その役数が十三飜(ハン:役の単位)以上になると役満と同じ点数となる。その呼び名。


  • 対局中4回に1回まわってくる。親になると貰える点数が通常より大きくなるが支払う点数も大きくなる。

  • 16000オール
    点数の払い方。麻雀では上がり方によって誰が点数を払うかが変わってくる。自分で上がり牌を引いた時(ツモ上がり)は残りの3人から均等に点数を貰う(親の場合)ので○○オールという呼び名になる。
    つまるところ全体魔法。16000オール=イオナズンと考えて貰って差し支えない(大分語弊有り)。

shortバージョンでは満貫、跳満だけだがFullバージョンでは倍満、三倍満(どちらも点数の通称)と続き最後に数え役満で終わる。そしてこの数え役満の役、どれもあと一歩で普通の役満にできたはずだろうにどうしてこうなったのだろうか…。

終わりに

以上、「All Last One Chance!」の解剖であった。shortバージョンだけでもこの情報量である。多すぎる。編集画面の右上を見ると文字数4400overだと表示されている。小学校の読書感想文で原稿用紙1枚埋めるのに四苦八苦していた人間にもここまで書かせてしまうあたり、もう義務教育の課題図書は全てMOSAIC.WAVの歌詞カードにしてしまえば良いのではないかとすら思ってしまう。
今回は都合によりここまでだが2番の歌詞も1番に負けず劣らずの意味がぎゅうぎゅう詰めの歌詞となっているので是非ご自身で読み解いていってほしいと思う。(と言いつつ来年書いてるかもしれないが…)
又、聞いたこともないのにここまで読んで頂いた奇特な方には是非Google検索より好みの音楽配信サイトへ飛んでFullバージョンを聴いてほしい。そしてそのまま他の楽曲も聴いてほしい。どれも素晴らしいから。大丈夫、15年以上も活動してるから聴くべき曲はいくらでもある。2日で合計40時間までならセーフだから!ほら!!

・・・麻雀とも解説とも全然関係なくなったところで終わる

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