#もう眠副音⑦:右も左もACP
最近、ACP(=人生会議)関連で、講演に呼ばれることが増えた。
僕よりもACPについて詳しい先生はたくさんいらっしゃると思うが、僕の語り口が面白いといって呼んでいただけているのは、それはそれでありがたい。まあ、「実践」という意味では日常的にACPを行っているので、その経験を少しでもシェアできればいいなと思っている。
ただ最初の頃、ACPについて講演していると演者(僕)と聴衆の方々の齟齬というか、なんか距離を感じるな~と思うことが多々あった。これって何なのだろう?
ACPとは会話です
僕の講演の結論を一言で言えば
「ACPとは会話です」
ということ。なまじ「人生会議」なんて愛称をつけられたものだから、ACPは会議のように、きっちりと決められた体系で、何かアウトカムを出すべきもの、と思っている方も多いと思うのだが、そんな仰々しいものではない。「今日の朝ごはん何食べた?」とか「好きなテレビ番組は何ですか?」とかと同じくらいのノリで「もし大きな病気になって体が弱った時にどこで過ごしたいと思う?」とか「人工呼吸器をつけて生きる生き方ってどう思う?」というテーマで、医療者と患者・家族がざっくばらんに話をするということなのだ。
日常の診療の中で、例えば病状が進行した時などのタイミングで、
「今回CTで、がんが大きくなってきていることがわかりました。また別の抗がん剤に変更して治療を続ける選択肢もありますが、これからの治療は効果はそれほど見込めず、副作用の方が強くなってくる可能性も高くなります。それであれば、無理に抗がん剤をせず体力を温存する治療に切り替えるという選択肢もあっていい。また、仮に抗がん剤を続けるという選択肢を選んだとしても、いずれまたその抗がん剤も効果が無くなる時がきます。そういったときには、体力が落ちていて抗がん剤を続けられないかもしれない。そのような場合に、どこでどのように過ごしたいかとかを考えたことってこれまでありましたか?」
といった話を、いつもの診察室でしていく。
「いやー、そんなこと考えたことなかったな~」
と頭をかきながら言う方もいれば、
「ずっと、そういう話を先生としたいと思っていたんです」
と、涙を浮かべながら話す方もいる。
考えたことがなかった、という方へは、これから折に触れてそういう話も一緒に話していきましょう、と言葉を継ぐし、ずっと話したかったという方へは具体的に何を考えているかを尋ねていく。もちろん中には「考えたくもない」という方もいるので、「知らないでいる権利」を保障しながら話を進めていくことが大事だ。
そんな内容を講演で話す中で、僕が感じていた「聴衆との距離」。
その正体がわかったのは、とある講演後の懇親会でのことだった。
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僕が感じていた「聴衆との距離」の正体、そして日本でACPがうまくいっていない理由、だけどある看護師長が僕に教えてくれた「衝撃の考え方」。特に最後の看護師長の考えは多くの人に知ってほしい。
最後に、僕の講演スライドが10枚ほど、ACPの歴史や行うべき時期の目安、余命の伝え方などについてまとめたのを載せています。
ACPや教育について知りたい方はぜひどうぞ!
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