それは実質安楽死の容認なのでは~安楽死制度を議論するための手引き14
論点:京都地裁判決は実質的な安楽死の容認になり得るか
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2023年3月5日、難病のALSを患う京都市の女性を、本人からの依頼で殺害した罪などに問われ無罪を主張していた医師に対し、京都地方裁判所は「短時間で軽々しく犯行に及び、生命軽視の姿勢は顕著で強い非難に値する」と述べて、懲役18年の判決を下しました。
被告となった医師は無罪を主張していたそうですが、この判決の内容自体は、現行法を鑑みて、犯罪性を否定できる要素はなく、量刑の軽重は別として有罪は免れ得ないものでしょう。
被告は控訴するようですが、大勢は決したと考えて良いかと思います。
僕たちが論点とすべきはその先、今回の判決で京都地裁が示した「患者などから嘱託を受けて殺害に及んだ場合に、社会的相当性が認められ、嘱託殺人の罪に問うべきでない事案があり、それに必要な要件」についてです。
以下、その要件についてNHKの記事から引用します。
この要件自体は、名古屋安楽死事件(1962年)、東海大学病院安楽死事件(1995年)の際に示された要件をほぼ踏襲したものではあるものの、この2023年に改めてこの要件が示されたことの意義は大きいのではないでしょうか。
東海大学病院安楽死事件でも、この要件を厳格に満たした場合については「違法性は無いために阻却される(刑事責任の対象にならず有罪にならない)」とされており、今回の京都地裁の判決は、その判断を強化したものといえます。
つまり今回の事件については、明らかに4要件を満たしていないため有罪は免れ得ませんが、逆に言えば、もっと時間をかけて丁寧に手順を踏めばこの4要件を満たすことができたかもしれません。そして、今後新たに安楽死を希望する方がいた場合に、これらの4要件を満たすことが可能なら、日本でも実質的に安楽死は可能になったと言えるのではないでしょうか。
4要件は本当に満たせるものか検証してみよう
ではここからは、この4要件は本当に満たせるものなのかを考えてみましょう。
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