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#ずいずい随筆⑪:狂信者の僕がこれから書き進めるもの

 2020年上半期、僕は3冊の本を出版した。
 その3冊とも、社会的処方研究所から生まれたもの。今回はこの「3部作」についてご紹介しよう。
 そして最後の有料部分では、僕がこれから書きたいと思っていることについてお話したい。

①『社会的処方~孤立という病を地域のつながりで治す方法』

 1冊目は2月に刊行されたそのものズバリ『社会的処方』だ。
 この本は、社会的処方という名を冠した日本で初めての本ということもあり「社会的処方って、医療者だけじゃなくってみんなのためのものだし、何よりワクワクして楽しいんだよ!」ってことを強調する構成にした。
「地域を盛り上げても金が儲かるかはわからないけど、みんなが元気になるってことが、これでわかった」というのは、帯文を書いてくださった山崎亮さんの言葉。これだけでも相当にワクワクする。
 初手、というのはどんな世界においても大事だ。まずは「社会的処方」という概念を知ってもらうこと。このタイトルが目に入るようにすること。そこがクリアできれば、活動には火がついたも同然になる。キャンプファイヤーをするとき、火を大きくするよりもつけるまでが大変。この本の最初が「紙芝居」で構成されているのもそのためだ。本屋で最初の数ページを読んでくれるだけでもいい。その積み重ねが、未来の炎につながるから。

②『ケアとまちづくり、ときどきアート』

 この本はもともと、医師の守本陽一さんと、ほっちのロッジなどで活躍する藤岡聡子さんが立ち上げた同名マガジン『ケアとまちづくり、ときどきアート』を、緩和ケア・社会的処方の要素を追加して1冊に仕上げた作品。
 基本的には医療者向けの本。まちに出たい、でもその方法がわからない・・・という医療者たちの背中を押すことを目的に書かれた本だ。
 つまり、1冊目の『社会的処方』が、医療者・非医療者も含め、「社会的処方って面白い!」って感じてもらったその次に、「まずは医療者から行動を起こそうよ」っていうステップのために置かれた石だ。
 社会的処方に関することだけではなく、地域での仲間の作り方や、イベント・企画のあり方、SNS時代の情報発信の仕方なども収載している(情報発信については「発信する医師団」と、病理医ヤンデル先生からもアドバイスを頂いた)。
 そしてこの本で注目すべきはこの装丁だろう。本の中でも取り上げた「ヘラルボニー」さんにご協力いただき、所属アーティストの八重樫季良さんの作品を使わせていただいた。藤岡さんが「手のひらアート」と呼んだように、この作品を片手に、まちに飛び出してほしい。

この作品を提供いただいた八重樫季良さんは去る5月10日にご逝去されました。これが、八重樫さんが使用許可を出した最後の作品になったとのこと。僕らのプロジェクトにご協力を頂いたことに感謝を申し上げます。近いうちに必ず「るんびにい美術館」へ八重樫さんの作品にお会いしに伺います。ご冥福をお祈りいたします。

③『だから、もう眠らせてほしい』

 そして3冊目は、このnoteで2月から連載をした同名マガジン『だから、もう眠らせてほしい』を書籍化したもの。
 この本では、「安楽死」をひとつのテーマとして、広い意味での緩和ケアが、安楽死制度に対峙することができるか?ということを描いた本。登場人物の吉田ユカとYくん、そして看護師の及川たちの物語から、生と死を巡った葛藤をみることができる。
 3部作の最後にこの作品を置いているのは、僕自身が「死に急ぎたいと思わずに済む社会」を、社会的処方を通じてつくりたいという願いがあるからだ。もちろん、社会的処方はそれだけのためにあるわけではない。ただ、安楽死のことについて学んできて、今の日本における社会的孤立が人を死に追いやっていく現状を何とかしてからでないと、安楽死制度についても建設的な議論になりえないと思ったのだ。
 この本の中には、立場も考えも違う4人の方々のインタビューも収載されており、そのひとつひとつから学べることがたくさんある。ある意見には賛成できても、こちらには反対だとか、その「反対だ!」と思ったことの答えがまた別のところで出てきたりとか。思考のデパートのような体験が得られると思う。7月に発刊となるので楽しみにしていてほしい。

 社会的処方はいま、国の報告書にも掲載され、様々な場所でその文言が用いられているのを目にするようになってきた。
 問題はまだその実践に乏しいところだ。日本国内でもそれぞれが光る活動はたくさんある。それが今はバラバラに動いていて、有機的なネットワークになっていない。
 今はタネをまく時期。焦る必要はない。これから僕らは実践を一歩進めていくためのアクションを考えている。あくまでも僕らが楽しみながら、地道に一歩ずつ実践を重ねていく。そのころには国の制度も次第に追いついてくるだろう。制度と文化のバランスを取りながら、僕らは僕らにできることをやっていく。この3部作はそのための布石なのだ。

 さて、ここからの有料部分は、この3部作を書き終えて、僕が次に何を書きたいと考えているかといったところをお伝えしたい。マガジン「コトバとコミュニティの実験場」に登録いただいている方はそのままどうぞ。

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