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ユッセン兄弟ピアノ・デュオ・リサイタルを聴く
彩の国さいたま芸術劇場へ。オランダの兄弟ピアノ・デュオ、ユッセン兄弟のリサイタルを聴いた。開演時間、登場したイケメン兄弟は王子様風衣装。26歳と23歳の兄弟、ピアノ・デュオの王子様で売るに充分なルックスだ、さて腕前のほどはどうか?お手並み拝見。
前半~モーツァルトとシューベルト~
モーツァルト「2台のピアノのためのソナタ ニ長調」、「のだめカンタービレ」で、のだめが弾いていた曲。やはりとても楽しい名曲だ。特に掛け合いの楽しさを満喫。
シューベルト「幻想曲 ヘ短調 D.940」は4手連弾で。主題の歌心、それだけで気持ちをグッと持っていかれる。さすが歌曲王シューベルト。
ユッセン兄弟の確かな腕前をまずは確認出来た前半。
後半~近代から現代~
後半冒頭はプーランク「4手のためのソナタ FP.8」。今年、娘のピアノ発表会で私もセカンドを務め第1楽章を弾いた、思い出の曲だ。プーランクらしさ全開の名曲。
さあ幕開け、第1楽章「前奏曲」。プロらしい演奏。pからmfぐらいでデュナーミクをキッチリ効かせて、テンポも自在に揺らして。しかしちょっとお行儀良すぎる印象。この曲、私はもう少し不協和音をしっかり不協和で聴かせ、熱気を感じさせ、狂気までをも垣間見させる演奏で聴きたい。
第2楽章「田舎風に」は打って変わって文字通り牧歌的に。
そして第3楽章「終曲」は、第1・第2楽章のエッセンスをうまく混ぜ合わせて大団円。名曲、好演。
さあ、そしてファジル・サイだ。トルコ生まれの鬼才、私と同年代。ずっと注目してきたピアニスト兼作曲家。曲は「夜」。これは初めて聴く。4手連弾、ユッセン兄弟のためにサイが書いた曲だと云う。いやぁ、よかった!ファジル・サイらしく、内部奏法も自在に駆使。特殊奏法を使いたいがための特殊奏法、には聞こえず、キチンと音楽的説得力を持って聴かせてくれる。どう説得力があるか、と言えば、内部奏法のおかげで音色の多彩さが広がり、また二卵性双生児のようにさえ見えるイケメン兄弟二人がピアノに手を突っ込んで同じ姿勢で弾くサマが絵にもなり。ユッセン兄弟も自分たちのために書かれた曲として大事に思っているのだろう、先ほどのプーランクをお行儀良く弾いていたのとは打って変わって熱の籠もった演奏ぶり。
サイの作曲家としての技量をもう一ランク上に再認識させられた。
続いてラヴェル「マ・メール・ロワ」を4手連弾で。やっぱり名曲。5曲全てが楽しめた。特に第5曲「妖精の園」は演奏効果絶大だな。グリッサンドが多用されるが、ユッセン弟、実に鮮やかなグリッサンドを聴かせてくれた。
そしてラストは同じくラヴェルの「ラ・ヴァルス」。2台ピアノで。当たり前だが2台ピアノというのは、そうそう聴けるものではないなと実感。自宅では勿論出来ないし、ピアノの先生宅だって出来ない。
ライヴならでは、2台ピアノならではの楽しさを堪能した。
アンコール~バッハ、そしてモーツァルトに還る~
1曲目はJ.S.バッハ作曲クルターク編曲「神の時こそいと良き時 BWV.106」、暖かでゆったり聴かせて。アンコールにふさわしい。
2曲目はイゴール・ロマの「シンフォニア40」。聴いただけでニヤリと笑える面白い曲だった。モーツァルトの交響曲第40番を材料に、様々に楽しく調理された作品。アンコールで肩の力を抜いて聴くに絶好。
そして演奏会冒頭のモーツァルトにアンコールでさりげなく「還る」、という素敵な趣向のアンコールでした。