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結婚していることを知った朝。

ああ、そうだった、と、我ながら落胆した。

朝の何気ない会話の中、上司から告げられた、先生の配偶者についての情報。
「奥さんに、初めて出会った」
もしかしたら、上司すら、先生が結婚していることを知らなかったのかもしれない。だからあんなに勢いこんで、部下の私に告げたのだ。私の気持ちも知らないで。
朝イチの業務に向かうので、とその場を離れる間、そして1人になって移動する間、呼吸がおかしかったかもしれない。
まさか、結婚していたとは。
いや、違う、私はわかっていたのに、すっかり忘れていたのだ。遠方に戸建ての家があること、そことは違うマンションから通勤していること。戸建ての家から勤務されたときにお弁当を持ってきていたではないか。
彼女、という可能性もあった。でも、一切の情報を出さない態度に、未婚ではないかと周囲に思わせた戦略(?)はさすがである。
じゃあ、私とのこれまでのやりとりは何だったんだ。いや、それは、妻帯者だったから、か。
先生の忌引特休後の仕事復帰で、私はどういう態度を取ればいいのか。

ピンチになると、思考がフル回転する。まさに今がそれだ、と言わんばかりに思いが、考えが駆け巡る。

そしてその結論。
私の離婚の意志に、先生は関係ない。今の生活、子どもたちのことを考え、仕事が忙しくできる生活になり、私はとても幸せだ。
離婚のきっかけを作ったのはたしかに先生の存在だったかもしれないが、夫の存在を疎ましく思い、もう一緒にいられないことを自覚し、別居を強く望んだのは、紛れもなく私だ。

先生には、これまでたくさんのことを教えてもらった。仕事に対する熱い思い、名言、ノウハウ、専門分野に対する知識、新たな見識、専門家の名前や著書。そして、音楽、美術、それらにまつわるイベントや楽しみ方。たった数年だというのに、私の仕事に、生活に文明開花をもたらした。(だから私は「先生」と呼ぶ)

それって、既婚者だったら、受け取れなかったんだろうか?先生の婚姻の有無が、この学びに関係ある?私の答えはNOだ。
だったら、私には関係ない。私へのこれまでの言葉や、人知れずしたハグは、そのまま受け止めればいい。ただ、私の認知と、事実が異なっているので、そこを修正する必要がある。
ここまで、仕事をしながらほんの10分くらいで考えが行き着いた。

この件について、先生と話す必要があるのか?そこは、迷っている。
頭脳を使うと、本当に疲れる。チョコレートでも食べて、栄養補給したいところだが、その食欲すらなかった。

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