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過去のレコ評(2018-1)

(2018年「SOUND DESIGNER」誌に寄稿)

「DINOSAUR」B’z
VERMILLION RECORDS
BMCV-8054

恐竜の鳴き声らしきエレキギターから始まるラウドロックは、今やアメリカンロックバンドよりもアメリカ的だ。EDMで広がった周波数のキャンバスをものともせず、中域に集まった伝統的で前のめりな音像で迫りくる1曲目。かと思えばDメロはいかにも日本的なウェットな展開。2曲目はオルガンやパーカッションも入った16ビートポップロック。シンプル極まりないリフから派生するメロディに乗せる歌詞は、他のバンドには真似のできない破天荒さ。3曲目は、BマイナーペンタトニックのうちEF#ABで構成される和的なバラードで始まり、アップテンポになってからは高域の多い今時のシンセが効果的。「泣きのメロディ」と「ベース・ギター・ボーカルのユニゾンメロディのキメ」の緩急がアルバム全体に散らされ飽きさせない。個人的には7曲目の80’s生バンド的な音像が気になる。

「SOAK」ねごと
Ki/oon Music
KSCL 3012

アルバムは7曲目が面白い。良いアルバムには7曲目に隠れた良い曲が存在し、7曲目で曲数稼ぎをしているようなアルバムは全体として面白みに欠ける。ねごとと言えば、四つ打ちキックに高域が派手なシンセとシャープなカッティングギター。しかし、このアルバムの7曲目には、これらが全て存在しない。8分で刻むベースにアクセントをつけるドラミングに、マイルドなシンセのアルペジオとむせび泣くギター。さらに2コーラス目からは人力ドラムンベースのようなノリになる。歌う歌詞はストレートな哀しいラブソングなのだが、切々と押し付けがましくはならず、宙ぶらりんな感じがよく出ている。益子樹によるプロデュースの妙にとどまらず、これが多作な彼らの底力なのだ。

「2」the band apart [naked]
ユニバーサルミュージック
asg-039

バンアパがアコースティックに、と聴くと「聴き心地の良いサウンドでモテようとしてんじゃないか」と勘ぐりそうになるが、いやはやその通りだ。これはモテる。とはいえ、普通にアンプラグドなバンド編成であっても、一筋縄にはいかないのがバンアパ。特に間奏が楽しい。彼らの音楽性の高さがどうやっても現れてしまう。どの曲も、似た曲を思い出さないのに、初めて聴いた曲であってもスッと身体に入ってくる。これがアコースティックの効用なのだろうか。今回の目玉は4曲目のシュガーベイブのカバーなのだが、なんだか他の曲とアプローチが違うように感じ、違和感を覚えた。何度か聴いているうちに思い当たった。一発録りした後、フェイダーを一切いじっていないようなのだ。錯覚だろうか。

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