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My Secret World

サラ・レコードの存在は知っていたが、それほど詳しくはなかった。あまり市場にも出回っておらず、いかんせん値段が高いため、深く掘れなかったというのが正しいかもしれない。

そんな自分にとって、この映画の鑑賞はとてもとても有意義な時間であり、今年1発目の映画がこの映画で本当に良かったと思う。

サラがどんなレーベルだったかを知れるというだけでなく、構成、デザインなど細部に渡ってとても魅せてくれる映画であり、あと20分は長くして欲しいなと思うくらい飽きのこない素晴らしい映画であった。

去年観たCreation Storyがあまりにも酷い映画だったのだが、こちらはドキュメンタリーだし、あんなものにはならないと思っていたが、想像以上にサラへの造詣を深めることが出来たし、「とにかく好きなものを追うという人生は素晴らしい」ということが再確認できた。

サラ・レコードにいかに自分が詳しくないかということにもなりかねないが、この映画から知った様々なことを徒然に記載していくとする。ある意味ネタバレになるとは思う。

男女共同主催のレーベル

元々はジンを作っていた2組の男女、クレアとマットが作ったレーベルで、クレアは大学生で20歳だったらしい。音楽がとにかく好きで、ライヴハウスに通ってはジンを売っていたという2人が出会い、いっそレーベルを作ろうということになり、始めたとのことだが、2つ驚いたことがある。

1つはジンを売っていたということ。自分が馴染み深いテクノのミニコミは、当時基本無料であり、郵送料ないしは切手のみを送って届けてもらうというものだった。もちろん全てのものを知ってるわけではないが。有料のデリックなんてものもあったが、映画を見る限りそこまで上等な装丁でもなく、写真のコラージュ的切り貼りと、文章くらいで、強いて言えば白黒ではなく2色刷りだったかなくらいのもので、作ったものにはしっかり値段つけるという精神は時代性もさることながら、ものづくりの姿勢として感心させられた。 

そしてもう1つはこの時点で、ジェンダー的観点を持ちつつレーベル運営をしていたということ。

男女共同主催ということはそういうことであったとのことであり、女性がいるグループが所属バンドに多いのもそのためとのこと。

またサラという女性名をレーベル名に冠したのもそういうことらしい。

ブリストルのレーベル

詳しい方には当たり前のことなのかも知れないが、自分はブリストルのレーベルということも知らなかったので驚いた。作中でも触れられていたように、ブリストルといえば、ワイルドバンチ、マッシヴ・アタックの街という印象が強い。このようなキラキラした音楽を生み出す街とは到底思えていなかった。気にいちばん驚いたことかも知れない。当然のように、ロンドン、ないしはグラスゴーあたりのレーベルだと思い込んでいたので、何気に1番驚いたことかも知れない。

そして印象的なスリーブデザインの数々は、ほとんどブリストルの街並みを使用しているらしい。もっと世の中の人に知ってもらいたいという思いからとのこと。

オーストラリアのバンドも所属

グローバルにレーベルとバンドが繋がることはあまりなく、ライセンスもの以外では、国内のバンドを紹介するのが当時の主流であったと思う。だからこそ、言葉を持たないが故に、国境を越えるテクノがグローバル・コミュニケーションだともてはやされた時代があったのだと思い込んでいたのだが、それよりも前に個人レーベルが別の国のバンドと契約をするなんてことがあったのだなと驚いた。

100番で終わり

サラというレーベルはカタログナンバー100としてコンピレーションのCDを出し、しっかり終わらせたらしい。これは出来そうでできないことだと思う。彼らの事情もあったにせよ、強い美意識のようなものを感じた。そして何よりもとてもかっこいい。

ちなみにコンピやアルバムを複数枚出しているので、サラが100枚しかリリースしていないわけではない。

Shinkansen Recordings

クレアはサラを畳んだ後はキッパリと音楽業界からも足を洗ったようだが、マットの方は新しいレーベルを設立し、しばらくはレーベル業を行っていたらしい。その名もShinkansen Recordingsというもので、Blueboyはここに所属し、The Field Miceのベスト版のような物を出したりもしている。

日本人ならばちょっと嬉しくなるネーミングだが、以前ロンドンに住んでいた時に、自分はラフ・トレードでこのレーベルのコンピを購入していた!ジャケットが美しかったので買ってみたのだが、とても素敵な内容でよく聴いていたのだが、あまり詳しくなかったサラ・レコーズとのつながりを感じ、とても嬉しくなった。

現在

現在は主催者の二人は音楽には携わっていないようだが、サラ・レコーズへの愛情などは深く持っているようで(そうでなければこの映画を作ることを認めてないであろう)、とても楽しげにインタビューに答えている姿が印象的であった。

その中でマットが語っていた今現在は、音楽家達が自ら音楽を発信できるので、インディー・レーベルの役目は終えたとはっきり言っていたのが印象的であった。

あまり熱心とは言えないかもしれないが、レーベルを持っている自分としてもハッとさせられる発言であり、今後のことを真剣に考えないといけないなと思った。特にテクノのダンスミュージックなどという極めて部品的な音楽はどのように存在すべきなのか。エモーショナルさを取り戻せば良いのか、どのように個性を出していけば良いのかなどなど。

トークショー

終演後は、トークショーがあり、この映画を日本で配給した張本人のチコさんという方、DYGLのベース加地氏、写真家兼音楽ライターのYuki Kikuchiさんの3名で色々語ってくれた。

映画チア部という関西を中心に活動しているミニシアター応援団のような団体が、交渉などをまとめ、翻訳を入れ、無事公開してくれたという、ここまでの経緯などを説明してくれた。何故こんなにも上映回数が少ないのかなどの疑問も解決されつつも、深く深く感謝の念を抱きました。

その中でも語られていたように、現在、サラ・レコーズはもちろん活動はしていないのだが、Bandcampやストリームサービスなどでは音楽を買えるし、手軽に聴ける。

流石に全曲とはいかなかったが、大部分のリリース楽曲がSpotifyでは聴けるようなので、1番から100番までのカタログ順に、そして続いて各種アルバムをまとめた。是非この中で気に入ったものがあったら、Bandcampで購入してほしいところ。


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