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ドリーム・アイランド。それはグラズヘイム経戦学区域の湾岸部に増設された、巨大な埋立地だ。閉鎖された海水浴場、あるいは打ち捨てられたレジャー施設。それらは、はるか昔に破綻した開発計画の置き土産である。はるか昔。この地が"戦場"に指定されるよりも、はるかに。
戦場、そうだ、戦場だ。制服をイタマエ風に着崩した学生、スバルは重々しく反芻した。眼前に立ち向かうのは数台の戦闘車両、そして、夥しい数の兵士、兵士、兵士。彼女らはみな一様に、ダッシュフーズの社紋を身に着けている。
ガガピー。最も目立つ戦闘車両に指揮官らしき生徒が立ち、メガホンを構えた。『諸君!我々は情け深きダッシュフーズ・コーポレーションの代理人としてェ!君たちに停戦の選択肢を提示する!』指揮官の顔はギラつき、慈愛とは程遠いように思われた。
『彼我の戦力差は圧倒的にこちらが優勢!我々とて滅多な戦闘狂でもなければ、結果の見えた戦争をわざわざ始められようものか!』指揮官のボルテージが上がっていく。『そもそもダッシュフーズの買収には純然たる法的正当性がある!この戦争はもともと無意味!無価値!』
嘘だ。スバルの手に力がこもる。ダッシュフーズは近年急速に勢いを増してきた飲食系企業であり、その急進の裏には暗い噂が絶えない。違法まがいの地上げ行為によってその版図を広げており、毒牙はついにスバルの実家である寿司屋にまで及んだ。
だからこの戦争を起こしたのだ。グラズヘイムでの戦争の結果は、企業決定に対し大きな影響力を持つ。だからこそ、彼女たちにも協力を仰いだ。ここで勝ち、守らなければ……『以上!』いつのまにか、演説が終わっていた。指揮官はもはや勝ち誇ってすらいなかった。
スバルは隣を見上げた。車体に大きく『メルティホット』とプリントされた、赤とピンクの移動販売車。廃墟にも戦場にも似つかわしくない、味方唯一の戦闘車両である。そして、車上に立つ大柄な生徒。安藤ミルカ。かわいらしいエプロン姿だが、その顔つきは将のそれだ。
『御託は並べ終えたか、脂の乗った舌め』キン。ミルカが持つメガホンの残響が、戦場を支配した。指揮官の顔色が変わる。ミルカの声は静かだったが、底知れない怒りを含んでいた。『ごちゃごちゃと喋っていたが、こちらから申し上げることは一つ』
ガシャァン!スバルは反射的に音の方を見た。遠くにミルカのメガホンが転がっている。また向き直り、ミルカが手を天に突き上げているのを見た。「クソくらえだ!豚ども!」怒号。味方から、敵から。
戦争が、始まった。
◆◆◆
「経戦……正式名称は、"企業間の経済的および政治的問題の穏便解決のための代理戦争"」大慈院ミトメは淑やかに進み、来訪者を案内する。「グラズヘイムはそういった……物騒な決闘を取り扱う、裁定機関というわけです」
「生徒たちの間には、ある種の不文律が存在します。言うなれば闘争秩序」ミトメは来訪者を振り返った。「今この時この場において、其方らは秩序を乱す侵略者に他なりません」
◆◆◆
薄汚れたアジト。「来た!来た来た来た来た……来たかァ!」神月ヘンリは学ランを跳ね飛ばし、闘志のままに立ち上がった。「何か月も待たせやがったなァ!」「行くんですかぁ、団長ぉ」副官が間延びした声で問う。「当ッ然!」「カイザー、黙ってませんよぉ」
「知るか!犬にでも任せとけ!」ヘンリは獰猛に笑い、壁掛けモニタに表示された"侵略者"の名前をなぞった。「待ってろよ……メェインディッシュゥ……!」
◆◆◆
「便利屋だァ?」「アンタ、知ってる?」「……知らない、零細企業かなんかでしょ」「一応登録はあんのか?」フリーランス傭兵生徒たちはなんでもない日常のような雑談を交わしながら、戦闘準備を進める。「四人しかいないんだと、戦闘員」「四人って」「戦争ナメてる」「楽勝ビズだな」
◆◆◆
「止まれ!止まれ!」「本日、戦争の事前申請はない!これ以上の侵入は校則違反に該当する!」「こんなことをして……許されると思っているのか!貴様らいったいどこの」爆発。無慈悲な砲撃が防衛線に叩き込まれたのだ。攻撃者は厳かに歩みを進め、答えた。「セイント・ネフティス」
◆◆◆
「アルテ・エンタープライズ筆頭代表ならびにアルテ・カリストー軍団長、ミスミと申します」差し出される名刺、薄い青三日月のプリント、或手ミスミ。「アルテって言ったら……大手も大手の銃器メーカーじゃない!」「おや、ご存じでしたか。嬉しいものですね」
「審議会の命につき、あなたの護衛を任されました。共にヴァルハラまで参りましょう」ミスミは妖しげな瞳で私を見た。「私の……《運命の持ち主》……」
◆◆◆
「其方らは企業ではありませんが……学園自治区に特権を与える例外規則を更に例外的に適応し……」ミトメは神がかりじみて呟きながら、複雑に絡まった校則、法規を解いてゆく。「……成りました」
「今この時この場をもって、其方らは侵略者の汚名を雪がれ、グラズヘイムにおける参戦権を得ました」ミトメは真っすぐ来訪者を……私を見据える。「私たちは其方らを歓迎しましょう」
「ようこそ先生、我らが……混沌の箱庭へ」
ブルーアーカイブ杯3
【ビギニング・オブ・ザ・ラグナロク】
2025年 初春