仰げば尊死、間違いなし!息つく暇もない青春ハイスピードラブコメ『顔だけじゃ好きになりません』
【レビュアー/おがさん】
※このレビューは36歳(♂)が書いています
顔だけじゃ好きになりません
舞台は美乃和総合高等学校(通称:美和総)。イケメン大好きJK・知見才南(ちけん・さな)がSNSで見ていたのは、イケメンすぎる一般男子高校生・宇郷奏人(うごう・かなと)が映った投稿。
彼は美和総の2年生であるという噂が流れており、本人はSNS等一切やっていませんが、写真がアップされる度にバズっています。
そんな宇郷奏人は授業をサボりすぎて退学寸前。退学を免れる為には、美和総の公式アカウントのフォロワーを10万人にすることを校長から持ちかけられます。機会音痴の奏人は、才南と共同で公式SNSを運用することになるというのが主な筋書きです。
ちなみに、彼のご尊顔がこちら。
『顔だけじゃ好きになりません』(安斎かりん/白泉社)より引用
「顔良......(かお、よ.......)」
サラサラの髪、少し憂いを帯びた目。細い指先に男性らしい喉仏。
この画像だけで、「死んだ」人も多いでしょうが、これで死んでいたら、あなたは命がいくつあっても足りないよ!
そして、画面越しでいつも見ていた最推しに実際に出会った才南も、喜びを爆発させるのです。
いや、「顔だけじゃ好きになりませんってゆーとりますけども、顔だけで好きになっとりますやん!!」
と、1年間しか大阪に住んだことのない自分が、エセ関西弁で思わずツッコミたくなる展開。
さらに、本作はハイスピードラブコメディと銘打たれており、1話の「恋人つなぎ」から「バックハグ」など、1巻から惜しみないサービスショット連発で悶絶必死です。
『顔だけじゃ好きになりません』(安斎かりん/白泉社)より引用
(注:男性諸君はイケメンだけに許された行為であることを、ゆめゆめお忘れなきよう)
お前は顔だけだと突き放されることの寂しさ
『顔だけじゃ好きになりません』(安斎かりん/白泉社)より引用
ここまでは、奏人のイケメンぶりに触れましたが、この物語の本質は、内面の部分。
奏人が語るように顔が良いと言うのは、良いことばかりではありません。普通に生きているだけなのに、期待されたり幻滅されたりする。自分というものの外側ばかり見られて、内面まで辿りつくことのない悲しさ。
イケメンですが、奏人は容姿にコンプレックスを抱いているのです。
自嘲気味に自分の顔の良さを武器として使う彼を、才南は救えるのか。物語の見どころとなっています。
顔だけじゃないことを伝えたくて
顔だけが好きということになると、容姿の美醜(もちろん、個人の主観になりますが)を競うことになります。これが嫌味にならない設定として成立している理由は、主人公の素直さにあります。
「もちろん顔は好きだけれど、顔だけじゃない先輩の魅力をみんなに伝えたい!」という芯がしっかりしているから、この物語の面白さは深みを増します。
奏人の顔だけが好きという人は今まで何人もいたのです。奏人の行動も、今までの人と主人公がどう違うのか試すかのようです。
顔だけが好きかどうかという問いかけは才南自身にもあります。ただの顔ファンとの違いを、才南自身も見つけていかなければなりません。
さらには、前髪で顔が隠れているけれど、バチバチにイケメンオーラがほとばしるクラスメイト、土井垣(どいがき)も登場し、今後の展開は予測不可能。
仰げば尊死、間違いなし!ジェットコースターのような展開で、息つく暇もない青春ハイスピードラブコメをぜひあなたも体験してください。
そして、どーしても最後に入れたかった至高の1コマをあなたに。髪は結んだままでお願いします!
『顔だけじゃ好きになりません』(安斎かりん/白泉社)より引用