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古い作品だけど面白い『柔道部物語』細かいことを気にしない主人公・三五十五の不思議な魅力

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)

【レビュアー/堀江貴文

私は小学校の六年間、強制的に柔道の道場に叩き込まれた。私がうまれた九州は、何故か武道を子供達に必ずやらせるという変な伝統があるので、柔道や剣道、そして少林寺や空手などとにかく有無を言わせず叩き込まれる。

私がぬくぬくとコタツでテレビを見ながらみかんを食べてたら、いきなり母親がやってきて一言「いくぞ」と言われて道着を買わされた。警察が運営する道場に放り込まれ、週3回、火曜木曜土曜は欠かさず雨の日も風の日も、好きでもない柔道をやらされた。

中学に進学して、柔道に行かなくて良くなった時はほっとしたものだ。そんな黒歴史の柔道を真正面から扱ったのが、この『柔道部物語』(そのまんま)だ。

なにせ古い漫画なので、体育会系ぐりぐりの今では絶対ありえない体罰や、うさぎ跳びなどの非科学的トレーニングがどんどん出てくる。

でも主人公の三五十五(さんご・じゅうご、冗談みたいな名前だ)は、吹奏楽部の経験しかないのに柔道に興味を持ち、高校から柔道部に入部する。

そんな未経験の彼だ。当然白帯だし全く期待されてなかったものの、先輩の強烈なシゴキにも耐え、毎日自転車通学で鍛えるなどして少しずつ柔道への興味関心が大きくなっていく。

三五十五のポジティブシンキングが良いのだろうか。細かいことを気にせず、新しいことやチャレンジングなことに躊躇なく飛び込む彼の性格は、まわりを巻き込んでいく。そしてモテない印象の柔道部なのに、彼は女子に結構モテるのである。

そんな青春漫画的な要素もあり、読者を物語に引き込んでいく。スポ根青春モノではあるのだが、独特の空気感が物語を支配している。絵柄があまり好みではなく、古い漫画なので敬遠していたのだが、マンガ新聞メンバーが強烈にレコメンドするので読んでみた。

嫌いな柔道が題材とはいえ、知識は経験したので結構あるから楽しめる物語だった。