設定大幅変更も炎上なし! 『レンアイ漫画家』は漫画原作もドラマも全く違和感なく楽しめる稀有な作品
【レビュアー/松山洋】
フジテレビでテレビドラマもスタートした『レンアイ漫画家』。
鈴木亮平&吉岡里帆が主演で話題となっている本作ですが、原作は2010年~2012年に週刊モーニングで連載されていた同名の漫画が原作となっています。
が、このテレビドラマ化、ちょっとした異変が起きているのです。
漫画原作では、葬儀屋で働く主人公・あいこが出会った男は少女漫画家で人見知りの人格破綻者で、そんな変な漫画家から「恋愛しろ」と言われて好きでもない男と恋愛する姿を観察して漫画のネタにする、という依頼を受けるところから始まります。
テレビドラマの方でも設定や物語の導入は同じだったりもするのですが、実は随分と設定や展開が異なる内容になっているのです。
①主人公がヒロインではなく漫画家に変更されている
テレビドラマの公式サイトでもハッキリと『主演:鈴木亮平』と明記されているとおり、なぜか主人公がヒロインではなくその変な少女漫画家になっていて名前まで変更されていのです。(漫画原作では苅部清美・テレビドラマでは苅部清一郎)名前変更に関しては原作者の了承も取るほど明確な意図のもと実施されているようですが理由は明らかになっていません。
②設定が年齢から何までまるっと違う
漫画原作ではヒロインのあいこの設定が『葬儀屋で働く22歳の若い女の子』というものに対して、テレビドラマでは『恋愛経験が少なくこれまでダメ男としか付き合ったことが無い29歳のアラサー女子』とまるで違うものになっています。
③物語の初動からきっかけまでが異なる
漫画原作ではヒロインは『漫画家が引き取ることになった甥っ子のレンくんのことが心配でなし崩し的に依頼を受ける』という展開であるのに対して、テレビドラマでは『100万円を報酬として疑似レンアイをしろ』というオファーを受けています。(レンくんのことを心配して、という要素は変わりは無いのですが明確にオファー内容が違う)
はい、他にも原作と異なる部分が多々あるのですが。ここまで『原作と違う』と言われると、「あー、はいはい、ドラマ化にあたって改悪された残念なドラマ(漫画)ってことでしょ?」って思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は真逆のことが起きているのです!
テレビドラマも漫画原作もどちらも極上に面白いのです。
まぁ漫画原作の方はいわずもがなですが、ここまで設定変更がなされているにも拘らずテレビドラマの方もしっかりと面白いって凄くないですか?
だから『ちょっとした異変』が起きているのです。
フツーは漫画原作からドラマ化にあたって設定変更がなされるとだいたい「余計なコトしやがって、台無しだよ」ってなることも多いのですが、本作に限ってはそうじゃあない。
なんなら「あれ、漫画原作も設定ってこうだったっけ?」って全く思わない気づかないレベルで自然で違和感なくドラマを観ることができるのです。
これって極めて稀なケースだと思います。
過去、いろんな漫画原作がドラマ化&実写映画化にあたって改変・改悪されて炎上してきたという歴史が少なからず映像業界では存在しますが。
本作『レンアイ漫画家』のテレビドラマ化に限っては不思議な化学反応と同時にこれまた新しい魅力となって“同時存在(ダブルウェア)”しているのです!
私はもともと原作の山崎さやか(紗也夏)先生の作品が大好きで『マイナス』『マザー・ルーシー』『はるか17』『シマシマ』など全ての作品を読み続けていて、今回のテレビドラマも「おお、ついにドラマ化するのか」と思って見始めたら全然設定が違っていて驚いて、これまたそれが面白くて更に驚きました。
テレビドラマは毎週木曜日に放送中ですが、見逃し配信で観ることもできますのでぜひ漫画原作と読み比べながら観てください!間違いなく二度おいしいです!
原作漫画は全5巻でサクっと読めますよ。そしてもちろん面白い!
最後に私がこの『レンアイ漫画家』という作品の中で一番好きなキャラクターを紹介します。
ヒロインのお姉ちゃんです。奇抜な髪形をされていますが要所でヒロインに(読者にも)ズバっと核心をつくセリフを言ってくれるのでグッときます。(ドラマにも登場するかどうかはわかりませんが)
『レンアイ漫画家』(山崎紗也夏/講談社)3巻101ページより引用