『マンガ「獄中面会物語」』のリアリティと説得力!ホリエモンも拘置所トリビアを語る。
※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)
【レビュアー/堀江貴文】
この種の記事を書いている人間の中で刑務所の経験者は数少ないだろうが、この漫画で描かれるのは基本的には死刑囚であり死刑囚は刑務所にはいない。
そうではなく拘置所にいるのである。
拘置所というのは未決囚、つまり刑の執行がまだ始まっていない人々が身柄拘束されている場所である。未だ裁判中だったり、まだ起訴すらされていない人も含まれる。
私もそんな段階や、収監されたのにまだ所属先の刑務所が決まっていないときに一時的に入れられたこともある。
ではなぜ今回取り上げる漫画の死刑囚が拘置所にいるのだろうか。
それは死刑とは国家権力により殺されるまでは未決囚であるからだ。
殺されるまで刑の執行が開始されていないという理屈なのである。
逮捕されて保釈されるまで同じフロアに数人の死刑囚がいたことはわかった。
なぜなら普通の未決囚はテレビの観覧が認められないのに、認められている人が何人かいたからだ。
それはおそらく死刑囚だ。
梵字で書いてある書籍を差し入れられていたので、もしかしたらオウム真理教の殺人犯だったのかもしれないと今思う。
前置きが長くなった。
この漫画はそんな死刑囚の真実を探る本である。
本当に人間らしさが一欠片もない極悪非道の人間が殺人犯なのか。そんな素朴な作者の思いがこの漫画となっている。
共通するのはそんなに単純な図式ではないはずだ。
彼らの中には彼らなりの行動原理があり、それが常識とかなり乖離していることは多いのだが、行動が全く理解できないというわけではないのである。
そんな複雑な死刑囚の現実を垣間見せてくれる。
エグいシーンも多いのであるが、真実というのは解釈次第で歪んでもしまうという事を目の当たりにできるのではないかと思うのである。