ソシャゲ、アニメに続いて漫画も絶好調!日本競馬史に残る名馬たちのドラマに心震えよ『ウマ娘 シンデレラグレイ』
【レビュアー/澤村晋作】
「ウマ娘 プリティーダービー」、アプリは2か月で600万ダウンロード、アニメ2期も大好評ですね。
それだけに、アプリを遊んでテンション爆上げダイタクヘリオス状態な一方、アニメが終わって飢えているころではないでしょうか?
そんなあなたに極上のにんじんハンバーグ的な作品『ウマ娘 シンデレラグレイ』をご紹介!
1・オグリキャップ復活
タイトルのグレイとは灰色、馬の毛色でいうところの葦毛を表していると思われます。
(より正確には、生まれたては黒っぽいが、だんだん白くなっていく毛色のこと)
80年代後半から90年にかけて活躍し、日本に一大ムーブメントを巻き起こしたオグリキャップの毛色です。
そう、本作の主人公はオグリキャップ。
令和の時代にオグリキャップが復活したのです!
笠松競馬(作中ではカサマツ表記)という地方競馬から登場した超新星。
それは中央競馬一強の時代に現れたヒーロー。
本作を読めば、当時の人々が、なぜあれほどオグリキャップを愛したのか、それがきっとわかると思います。
本作を通してかつての熱を知り、そしてウマ娘としての全く新しい魅力を知ることができるのです。
彼女は当初、カサマツトレセン学園の同期からいくつもの嫌がらせを受けます。
しかし、どこか天然な彼女は、それを苦にしません。
オグリキャップへの嫌がらせを見て、友人のベルノライトが相手に抗議し、口論に発展したことがありました。
それを止めたのがオグリキャップ。
ここは本作でも極めて印象的なシーンでぜひ読んでみてほしいのですが、自分が嫌がらせを受けたのに、全く気にしていない。
走れることが嬉しくて、ほかのことは気にしていないというのが正確かもしれません。
その器の大きさに、敵視していたキャラクターたちすら、惹かれていくようになります。
やがてその器は地方競馬の枠を超え、怪物ひしめく中央競馬に活躍の場を移すのです。
2・葦毛の馬は走らない
オグリキャップが活躍している頃、実はもう一頭、非常に強い葦毛の名馬がいました。
それがタマモクロスです。
かつて、葦毛の馬は走らないと言われていました。
(全くいなかったわけではないのですが、概ねそういった認識でした)
それをひっくり返したのがオグリキャップとタマモクロスです。
もちろん本作でも、タマモクロスのウマ娘が登場します。白い稲妻と評されていた名馬をモチーフとすることからか、稲妻のエフェクトをまといながら走る姿が強烈な印象を残します。
いわば、もう一人の主人公、シンデレラグレイと言えます。
それが中央競馬に乗り込んだオグリキャップの前に大きな壁として立ちはだかるのです。(むしろオグリキャップの描写の方がラスボス感あるけど)
3・宿敵が強さをくれる
強敵はタマモクロスだけではありません。
カサマツ時代のライバルはキョウエイマーチ。(おそらく実在の「オグリに2勝した馬」ことマーチトウショウがモデル)
カサマツでは頭一つ抜けた存在として、オグリキャップを激しくライバル視します。オグリキャップとのレースの中で彼女の心理がどのように変わっていくか、本作の見どころの一つです。
彼女もまた葦毛。
地方競馬のダートで砂を被りながら走る彼女も、シンデレラグレイなのかもしれません。あるいは、夢を背負って走るウマ娘たちは、みなシンデレラなのかもしれないと思わせます。
そんな未来を夢見るウマ娘たちの中でも、トップクラスの実力者がひしめくのが中央競馬です。
カサマツ篇に続く中央編入篇においても次々と強力なライバルたちが登場してきます。
サクラチヨノオー、ヤエノムテキ、メジロアルダン……
いずれ劣らぬGI級の相手ばかり。
そしてこれはあくまで一例を挙げただけに過ぎません。
まだアニメやゲームにも出ていない名バたちが、怒涛の勢いで現れるのです。
そして、オグリキャップを含め「平成三強」と呼ばれることになる二大巨頭――
スーパークリークとイナリワンの活躍にも期待が高まります。
まだまだ楽しみな戦いが山のように残されていることを、僕らは知っています。
まとめ・その馬の戦績を知っていても面白い
そう、知っているのです。
調べようとも思えば、Wikiなどで簡単にオグリキャップの戦績を調べることはできるのです。
いわば、全てネタバレされている状態だと言えます。
しかし、だからと言って面白くないのでしょうか?
そんなことはありません。
知っているから面白いのです。
知らなかったドラマが描かれるから面白いのです。
僕たちは最後のレースも知っています。
日本競馬史に残る、誇張でもなんでもなく伝説のレースを。
それはやがて描かれるでしょう。
有馬記念が来る。