猫と竜の暮らしに人が入れてもらうやさしい世界『猫と竜』
【レビュアー/菊池健】
猫はかわいい。
もうやばい。
だいたい、うちの猫の可愛さといったら、出会ったその日から世にこれほど愛しいものがあって良いのかと、常に疑問を持ち続けてきているにも関わらず、その感情はもう数年維持され続けてきている。彼らがかわいいことには、なんの疑いもない。
※ウン年前のうちのぬことの出会い
ドラゴンはかっこいい。
ファンタジーと言えば竜だ。
ドラゴンボール、ドラゴンヘッド、ドラゴンクエストにドラゴンスピリッツ、はてはタイガー&ドラゴンと、ファンタジーと言えばドラゴンは象徴的な存在であり、だいたいにおいて圧倒的に強く、美しい。
※ここ数年で一番美しくて怖いドラゴン描写、圧倒的過ぎる。「Game Of Thrones」より
アイディアというものは、2つを掛け合わせて生まれるというが、猫と竜があいまった漫画というと、あまり見たことは無かったかもしれない。今日紹介する作品は『猫と竜』である。
猫と竜の暮らしに、人が入れてもらう
その森では、これまでも繰り返されてきたように、猫のお母さんが子猫たちを育てていた。今回の子育てには、一匹ちょっと様子の違う赤ちゃんが混ざっていたようだ。後に「羽のおじちゃん」と呼ばれる、ドラゴンの子供である。
猫の母親に分け隔てなく育てられたドラゴンは、ただ通常の育てられ方と違う育ち方をした。本作において、猫とはケット・シーのこと。見た目は猫と変わらないが、召喚獣として有名なそれで、言葉も理解し、そして魔法を使う。
子猫たちと小さな羽の生えた個体もそろそろ狩りを覚え、つまり魔法も使えるようになったころ、お母さん猫に異変が起きた。人による召喚魔法によって、魔法使い見習の少女に召喚されたのである。
子育てに少し未練は残るが、自分を召喚した少女のほうが子猫たちよりよっぽど頼りなかったことを見かね、彼女はその子とともに街で過ごすことを決めた。
『猫と竜』(佐々木泉/アマラ/大熊まい/マンガボックス)1巻より引用
ある時は、森を巣立った若い猫が、小さな王国の王子と出会い、彼に魔法を教える約束をした。
母猫から子猫たちを育てる役割を引き継いだドラゴンは、街で猫が暮らすことに不安を覚え、王子の父、すなわち王国の王と直接話をした。自分は猫に育てられた猫竜であり、森と猫さえ害しなければ、猫と人が共に暮らすことを認めようと。
『猫と竜』(佐々木泉/アマラ/大熊まい/マンガボックス)1巻より引用
猫と竜と人、この3つの存在が交わり、暮らし、共に育つというただひとつのことだけで、沢山の物語が生まれている。
猫がかわいく、竜がかっこよく、人が魅力的に描かれる佐々木泉さんの作画は、ただもうページを進めるだけで、嬉しく、簡単に涙腺にも届いてしまう。
贔屓目無しに言って、たまらない。
良い漫画を見つけた。ずっと読み続けさせてほしい。