意表つかれまくりの一巻完結漫画『不死身のパイセン』は、ホラーの新しい楽しみ方を教えてくれる
今回は大好きなホラー漫画を紹介します。
私がホラーを好きなのは、もちろんドキドキさせられるスリル感とかもあるのですが、たまに物語の「定石」をぶち壊しにするような、破天荒な設定や展開に出会えるからです。
根底にあるのは、お化け屋敷で道の横からわっと飛び出すような「とにかく驚かしてやろう」という、他愛のない想いかもしれませんが、それが作者の発想力や個性と結びついてもはやSFというレベルに昇華されてしまうこともあります。(伊藤潤二先生とか)
今回紹介する『不死身のパイセン』もそんな漫画です。
突然の台風に見舞われて以来「何か」がおかしくなった街
そこに住む、女子高生の主人公は、学校からの帰り道で怪異に襲われるようになり、同じ部活の後輩と帰宅するようになります。
※『不死身のパイセン』(田口翔太郎/小学館)一巻より引用
この先輩の強がりっぷりがカワイイ!
後輩の鬼龍院は、見るからにただ者ではありませんが、のちに本当にとんでもない奴であることが判明します。
そういう意味で先輩の人選は正しかったわけですが、遭遇する怪異のことごとくはなぜか狙いすましたように先輩をターゲットにしてきます。
それを、毎回の機転と強運でくぐりぬけ……いや、逃れられず犠牲になります!!!!
え、先輩、死んだよね…?もうリタイアだよね…!?
という結末を迎える事もありますが、次の回には復活(笑)しています。
つまり「不死身」のパイセンなわけです。
ここまでだと、ただのシュールなホラーギャグ漫画ですが、もちろんそれで終わるわけではありません。
後半になって、いきなり「ある真実」が明かされ、急転直下の結末を迎えます。シュールな展開や設定も含め、すべてが計算されていたことが分かります。
そこには感動があり、驚きがあり、そしてやっぱり恐怖があります。
本作はわずか1巻で完結しますが、その短いストーリーの中で何度も「定石」を踏み外していて意表をつかれます。
何というか、こうだと思って心の準備をしたところで足払いをかけられコロンとひっくり返されるような展開で、このボリュームだからこそ成立する構成なんだと思います。
そして最後には何とも言えない読後感が残ります。
……ん、これホラーだったのか??
もちろん、そんな問いはナンセンスです。
しばらく経つともう一度最初から読み返したくなる、そんな奇妙な魅力を持った作品です。