【祝アニメ化】『からかい上手の高木さん』に見る「最小のユートピア」の描き方
※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)
【レビュアー/新里裕人】
連載当初はマニアックな漫画だと思ってひそかに応援していたら、だんだん有名になって
ついにアニメ化!……ということで私からも紹介させていただきます。
本作は中学校を舞台にしたラブコメ作品です。
主人公の「西片くん」は隣の席の女の子「高木さん」にいつもからかわれており、日々仕返しのチャンスを狙っているが、結局いつも見透かされてからかわれてしまう、というオチ。
ポイントはなんといっても「高木さん」の描き方。
「高木さん」はさらさらのロングヘアに大きな瞳が印象的な美少女ですが、
イタズラに引っかかって慌てる「西片くん」を見る時のいじわるな表情や笑い顔、その後にふっと見せる、女の子っぽい笑顔など、ころころと切り替わる表情が魅力的。
「西片くん」が翻弄されてしまう気持ちがよくわかります。
一方の「西片くん」はもちろん「高木さん」に対する恋愛感情があるわけですが、子供過ぎてまだその感情を自覚できていません。
今は日々繰り返される「高木さん」からのイタズラを「屈辱」と感じて、彼女に一矢報いることで頭がいっぱいなわけです。
けれどこれ、すでに「高木さん」の思惑通りなんです!
だって「西片くん」が好きな「高木さん」にとっては、いつも自分のことを考えていて欲しいから。
そう、この作品において二人の恋愛は最初から完成しているのです!
そもそも「西片くん」がこれだけイタズラにはまってしまうのも、「高木さん」か彼のことをそれだけわかっている事の証に他ならないわけで、読者側からは見ると、空回りして悔しがる「西片くん」に「おまえはすでに”勝ってる”んだよ」と教えたくなってしまいます。
教室の一番後ろの、隣り合った2人の席は余人の入る余地がない完全無欠の空間。
幸せが約束されたこの場所は、地上最小のユートピアと言えるのではないでしょうか。
そこで繰り広げられる『からかい』の日々をムズキュンしながらまったりと見守るのが本作の楽しみ方ではないかと思います。
成人後も「高木さん」の聡明さは相変わらずのようです。