バッシングは嫉妬と羨望の裏返し?不倫が無くならない理由を2つの漫画から考えてみる(後編)『ぬけぬけと男でいよう』
前後編にわたってお付き合いいただき、ありがとうございます!もし先にこちらを見に来たよって方がいらっしゃいましたら、是非前編も読んでいただけると嬉しいです。
というか、今回のこの後編だけ読まれると僕の人格がかなり偏って見える可能性があるので、お願いですから前編も読んでください(笑)。
前編では、ダメなことと分かっていても人が不倫をしてしまうのは、恋愛関係の中で生まれる不安や心の隙間を埋めるために、他の人に惹かれてしまったりドキドキを求めてしまう。そんな心の声を止められないからだという話をしました。
だからこそ、満たされはするけれども、同時にとても苦しいものでもあるんだと。
こうした恋愛や夫婦間の愛情の中に様々な葛藤を持ち、幸福や不安を織り交ぜながら生きているのはいかにも人間らしい、いや人間らしさの最たるものじゃないかなと思います。
『ぬけぬけと男でいよう』に見る不倫する男の本音と建前
後編では、なぜ不倫がなくならないかについて、前編とは真逆の答えを示してくれる作品を紹介いたします。
今回ご紹介するのは、内田春菊先生原作・イワシタシゲユキ先生作画の『ぬけぬけと男でいよう』です。
この漫画の主人公は、奥さんと子供がいながら不倫をしていて、次々と新しい女に手を出して結果的にはそれによって苦しめられるという、目も当てられない男です。
まぁこの男があまりにも自分に都合のいい思考や自己中な考え方をするんで、ひどい目にあっている姿を見ても全然同情できなくて、むしろコミカルにすら見える、とっても笑える作品です。
はっきり言って、前編で紹介した『あなたがしてくれなくても』にがっつり共感できる人たちからは大ブーイングが起きるような男なワケですよ。
でも、僕自身が彼と同じ男で、友だちやお客様などを含め数多くの男性の生態を眺め続けてきた上であえて言いますが、彼の考え方って、実はほとんどの男に当てはまるんじゃないかなと。
草食系という言葉が使われるようになって久しいですが、少なくとも僕が今まで知り合った男性たちは、大半がAVやエロ本について一晩中でも熱く語れる性欲ばっちりな野郎どもばかり。
実際に口にしたらセクハラや差別になってしまうので言わないまでも、つい女性を見る時に反射的に体にも目が行ってしまったり、日常の色々な場面でエッチなことを考えてしまうのは、事実としてあると思うんですよね。
みんな本当はワガママなんだ
主人公は、浮気に走ってるくせに奥さんを責めたり、浮気相手を捨てて違う相手に乗り換える時の理由も、精いっぱい理屈で固めて自分は正しい、こうなるのは仕方ないと正当化します。
ただ、誰がどう見てもただ自分の欲に負け、嫌なことから逃げて楽な方に走っているだけなんです。そんな自分のことは棚に上げて、奥さんが浮気してるかもと思ったら急に独占欲を丸出しにしたり、娘が世界一大切だと言いながら結局娘との時間を第一にするようなこともしない、見事なまでの自己中です。
さすがにここまで酷いと笑えるレベルです。だからこそ彼が自業自得で追い詰められていく姿はとても面白くて、コメディとして素晴らしい作品なんですが、一方で、きっとこれを読んでる男性連中は心のどこかで「あーわかるわー」なんて共感してしまうところがあるんじゃないでしょうか?
まだ読んでいないようでしたら、本作を読んで彼のクズっぷりに笑えたか、自分のことのように感じて恐怖したか、感想などいただけたら嬉しいです。
人はしょせん動物である。ただし格好はつける
よくよく考えてみると、人間って動物である以上、生存本能や種の保存本能もあるし快楽主義こそが正しい姿だと思うんです。あくまで動物として、という意味ですが。
人間以外の動物は、外的要因以外でわざと自分自身に我慢や試練を強いたりしないし、むしろ欲望に忠実で、そのためなら形を変えることすら厭いません。
おそらく唯一人間だけが、そこにルールだの倫理だのといった概念を作って、わざわざ自ら縛っているワケです。
はっきり言って浮気する男性がよく言う「彼女(妻)といると疲れるから癒やしが欲しくて」という「癒やし」の正体って、ぶっちゃけセックスのことだと思うんですよね。
動物的に性的快楽が欲しいのを、ただ「やりたいです」とは言えないから、人間的な建前で言い換えているというのがほとんどじゃないでしょうか。
まぁ例えば美味しいごはんを食べるといった食欲こそが最高の快楽で、それをより高めるために同席する相手を求めてるだけで、セックスなんていらないよなんて人とかもいるかもですが、僕は多分たいていはそこまで実際に行動するかどうかは別として、そういう期待も大なり小なり持って誘ってたりするだろうなと思っています。
これはあくまでそういう対象で見る人を誘う場合であって、誰彼構わずというワケではありません。僕も、女性だけど一切そういう対象として見ないめちゃくちゃ仲のいい友達もいますし。
本当に性欲が一片もないような人はわかりませんが、たとえば恋愛は面倒だから彼女はいらない、結婚もしたくない、でもセックスはしたいなんて人は多いんじゃないでしょうか。
AVとかエロ漫画なんかがものすごい数出ていて、人気の女優さんや作家さんの作品の売上なんかは多分皆さんがぱっと想像する金額よりもはるかに高いんですよね。
そう考えると、出会いを探したり頑張ってアプローチしたり仲良くなるステップを歩み進めずに、よりダイレクトに自分の理想だけを追い求めてる人もたくさんいるのかなぁと感じます。
自分の欲望に忠実なのは悪いことなのだろうか?
今回『あなたがしてくれなくても』『ぬけぬけと男でいよう』の2作を紹介させていただきました。改めて思うのは、心の隙間を埋めたいという人間らしい気持ちも、性欲も含めた快楽を求めたいという動物的な気持ちも、真逆なようで同じことだなと。どちらも自分がより幸せになりたい、辛いことから抜け出したいという欲や願望を表しています。
それはたとえ結婚という人間が形式的に作ったルールの中にあったとしても、決して変わるものではありません。だからこそ、不倫もいつまでもなくならないんだろうなと思います。
何度も言いますが、別に僕は不倫を正当化したり、している人を擁護するつもりはないです。
でも、少なくとも僕はこの2作品を通して、どちらの作品にも共感してしまった自分を見直して、人様の色恋沙汰や不倫のニュースなんかをエンタメのようにもてはやしたりわざわざブーイングするようなことはしないでおこうと改めて思いました。
少なくとも人様に迷惑をかけるようなことでない限り、人が自分の欲のためにワガママでいることは決して間違っていません。どんな関係であっても、当事者同士が納得して幸せであれば他人がとやかく言うこともない、それが破綻したところで結局当事者だけの問題ですから。
芸能人の不倫ニュースなんて、僕にはYahooニュースでこのネタが多すぎて他の記事が探しにくくなった程度の迷惑くらいしかかかってませんしね。
それでも、そんなに皆さん不倫の話がお好きでしたら、面白い漫画がいっぱいありますよ!
ご希望があれば色々なパターンのオススメをご紹介しますので、お気軽にご相談くださいませ。
WRITTEN by 南川 祐一郎
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