武井壮の理論をひたすら思い出した『ひゃくえむ。』読後の10分間。
※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)
【レビュアー/堀江貴文】
100m走というエクストリームな世界。
そんな世界に挑むのには、早ければ早いほうがいいのかもしれない。
この作品は、小学生でその世界に目覚めた者たちの物語だ。
もちろん小学生が走りの理論など知ることなどないだろう。経験的に速い走り方を編み出したものだけが、若い時にはトップに立てる。
しかし、成長してからはそうはいかない。
タレントの武井壮が言うには、「健康な男子ならみんな11秒台で走らせるようにできる」らしい。
11秒台で走るには100mの中に置く一歩一歩の形がそれぞれ決まっており、それを体に記憶させるためのトレーニングをひたすら繰り返すのだそうだ。
武井理論は、こうだ。
まず、走る時に上に向かう力は無駄でしかく、前に進む力だけが役にたつのだそうだ。
とはいえ、上側へもエネルギーは使わざるを得ないので、それを出来るだけ押さえて走る。彼に言わせれば誰にでも出来るのだというのだから、示唆に富んでいる話だ。
『ひゃくえむ。』の世界はまずは、その武井壮理論を完全に理解して身体を動かせるようになることは単なるファーストステップでしかなく、その後の話は精神論だ。
だからプロスポーツの世界ではよく機能がわからないネックレスみたいなものが流行るのである。いわばプラセボ効果だ。メンタルの強さが競技での強さに直結するため、メンタル面でも他者より優れないと勝者になれないのである。
メンタルの危機を乗り越えたものだけが、トップアスリートとして君臨できるのである。