漁師飯だけじゃない!?マグロ漁船のコック長から見た昭和時代のマグロ漁の全て『まぐろ土佐船』全3巻完結
※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)
【レビュアー/堀江貴文】
令和の時代に昭和感満載の漁師漫画だ。
遠洋漁業のまぐろ船は、一度出港すると金主がある程度の利益を確保できるまで日本に帰ってこれない。
獲ったまぐろは即固められ(冷凍され)、冷凍庫に入れられるが、時にアフリカのケープタウンなどの水揚げ港で日本へ向かう船に積み替えられたりする。
船の修理や荷物の積み込みなどのために寄港する時以外はずっと海の上だ。
それでも波が比較的緩やかな時はいいが、主要な魚場のひとつである南太平洋では、激しい時は船が転覆しそうになるくらいに揺れる。
気になる主人公は漁師ですらない。料理長なのである。
娯楽のない遠洋漁業の漁船の中で数少ない娯楽が毎日のご飯である。
不味かったりすると不評を買い喧嘩の原因にすらなりうる。男だけの社会であり情け容赦ない世界なのである。
もともと東京で居場所を無くし、高知にやってきてまぐろ船に乗りたくなったという変わった経歴をもつ主人公を、時には優しく、そして厳しく海の男たちが関わってくれるのである。
今でも南太平洋、大西洋にはこんな海の男たちの激しい世界が展開されているのであろう。
もちろん当時とは違って衛星インターネットなど通信手段は良くはなっているだろうが、激しい海の環境は変わるはずもない。
そんな海の男たちを陰ながら支える料理人の奮闘記を読んでもらいたい。