「奴らはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ!」最強のラーメンコンサルの名言続出の『ラーメン発見伝』
※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)
【レビュアー/堀江貴文】
日本の飲食業界は世界でも最先端の進化を遂げている。四季がはっきりしており、国中を海で囲まれ野菜から肉、魚まで豊富にとれることから、この国の支配層は昔からグルメであった。
また首都が京都という内陸部だったために保存食の技術も進化したこともあり、料理技術から器や箸といった食器にまでアートが古くから進出していた。トップ層がグルメであると庶民まで経済発展の過程でグルメになるのである。
その最右翼とも言える日本の国民食がラーメンであることは、万人の認めるところだろう。
もともとは中華蕎麦と言われるように中国から伝わったものであるが、日本独自の調味料や出汁の取り方とフュージョンしてしまい、本家とは似ても似つかぬ存在となってしまっているのもご存知の通り。また、つけ麺やら二郎系といったガラパゴス的な進化を遂げていてまさに百花繚乱。
そんなラーメン業界に対し、ビジネスコンサルという切り口で鋭く切り込んでいった漫画がこの『ラーメン発見伝』だ。
昔私が「寿司屋に長い修行は必要ない。独学ですら人気の美味しい寿司屋は作れる」と言って炎上していたが、ラーメンビジネスも同様だ。例えば人気の博多ラーメンチェーンである「一蘭」は創業者がラーメン店で修行せずに日本全国の和食店を食べ歩いて味を作ったというのは有名な話である(あの暖簾に書いてあるので常連は暗記している)。
本作には数々の名台詞があるが、その中でもピカイチなのがタイトルにもある「奴らはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ!」である。これを地でいくのが「一蘭」のやり方だ。
有名な一蘭の一人一人の個食システムは、友人といっても殆ど会話ができないがゆえに、あの暖簾に書いてある一蘭の創業ストーリーを読まざるを得ない。それで美味しさが倍増するわけだ。まさに情報を食らっているのである。
一蘭はそれ以外にもラーメン店にイノベーションをもたらした。
暖簾のお陰でモラルの低い従業員が多い傾向のある飲食店の従業員を、客に晒さなくても済む。自動で流れるいらっしゃいませも同様だ。毎回同じテンションでいらっしゃいませを言ってくれる。替え玉や食券システムも従業員との会話を最低限にしてくれる。厨房も覗かれないので、実はセントラルキッチンから運ばれてくるラーメンスープが、その店で作られてるかもしれないと思わせることができる。でも味は安定するわけだ。
それ以外にもいろいろあるが、正にラーメンとは情報ビジネスの世界なのである。
本作は既に連載終了しているが、続編に『らーめん才遊記』がある。
本作の内容が更にパワーアップされているのでぜひ読んでほしい。特に飲食店ビジネスを手がけるものには必読書であるとさえ言える。